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お父様、頑張る(5)

 ナイフで指先を少し切ると広場に一滴血がこぼれ落ちる。


 お願い!

 上手くいって!


 お父様の浄化の力がわたしの身体を包み込む。

 

 すごい……

 普段はダメダメだけどさすが神様だね。

 今まで感じた事が無いくらいの神力だ。

 危なかった……

 こんな神力だと魔族の皆がやられちゃうところだったよ。


 それにしても……

 気持ちいいよ。

 お父様の優しい心がいっぱいこもっている。

 そうだよ。

 お父様は、群馬でも天界でも幸せの島でもずっとわたしを愛してくれていたよね。

 かなり不器用だし甘えん坊だから、大変だけど。

 でも……そんなお父様の事が大好きなんだ。

 

 お父様の浄化が終わると隠していたわたしの翼が出てきている……?

 ん?

 これって……

 まさか!?

 吉田のおじいちゃん!

 騙したの!?

 わたしのうしろにあった闇みたいなモヤッとしたものって、ハデスがわたしの翼を隠していたモヤだよね!?

 わたしには見えなかったけど、ハデスには自分の闇の力だから見えていたんじゃないかな?

 でもまさか翼を消している闇の力をお化けだなんて思わないだろうし、この世界のハデスはお化けなんて知らないから……

 やっぱりファルズフの呪いは解けていてわたしはもう呪われていなかったんだ。

 吉田のおじいちゃん! 

 わたしの心の声が聞こえているよね?


「てへっ」


 はあ!?

 何が『てへっ』なの!?

 もう少しで魔族の皆が……

 

「ペルセポネ……お父様……頑張ったよ? はぁはぁ。もう苦しくない?」


 え?

 お父様?

 あぁ……

 本当の事なんて言えないよね?


「……うん。お父様、ありがとう。わたし……嬉しいよ」


 お父様がわたしを強く抱きしめる。


「うわあぁん! 怖かったよぉ」


 泣くほど怖かったんだね。

 この真実は墓まで持って行こう。

 うん。

 それがいい。


「ぷはっ」


 吉田のおじいちゃん!

 笑わないの!


「ペルセポネ……まさか……」


 ハデスもモヤの正体に気づいたみたいだね。

 首を横に振ると察してくれたみたい。

 良かった。


「天ちゃん頑張ったなぁ。立派なお父様だなぁ。かっこ良かったぞ?」


 吉田のおじいちゃんは、いつもこうだったね。

 田中のおじいちゃんだったお父様はいつもわたしをどこまでも甘やかして、吉田のおじいちゃんは手を貸さずに見守ってくれたんだ。

 間違った道に進んで、本当に危なくなった時になると助けてくれて……

 さっき話していたのは、吉田のおじいちゃんが神様だった時の事なのかな?

 お父様に同じ道を進ませない為にこんな事を?


「えへへ。お父様だってやればできるんだから! だから……これからも皆一緒にいてくれる? ひとりぼっちにしないでくれる?」


 お父様……

 絶対にそんな事はしないよ?

 お父様が寂しがりやだって分かっているんだから。


「天ちゃんは仕方ねぇなぁ。ずっと一緒にいてやるよ」

「ゼウスは一人じゃ、すぐ泣いちゃうでしょ?」


 おばあちゃんもお母様も笑っているね。

 安心したよ。

 お父様は手がかかるから見捨てられちゃうかと思ったよ。


晴太郎はれたろうは?」


「ん?」


「晴太郎はずっと側にいてくれる?」


 お父様が吉田のおじいちゃんに尋ねているね。


「……天ちゃんは、本当に……仕方ねぇなぁ。あはは!」


 おじいちゃん……

 嬉しそうだ……

 もしかして、昔神様だった時にひとりぼっちになったのかな?

 だとしたら寂しかっただろうな。

 吉田のおじいちゃんもすごく寂しがりやだから。

 

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