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ベリス王女の葬儀とドラゴン王(2)

「同じ事よ?」


 ばあば?

 同じ事って?


「……え?」


 ベリス王も意味が分からないみたいだね。


「王女が好きだった赤と黒のバラを、その赤ん坊も好きなのかしら?」


「……! それは……」


「そういう事よ。わたしはもうイナンナじゃないの。わたしはわたしだから。ふふ。賢いベリス王ならその意味が分かるでしょう? この白いバラは、まだ何にも染まっていない赤ん坊がこれから幸せに暮らせるように、ドラゴン族からの贈り物よ? 王女と赤ん坊を重ねそうになったらこの白いバラを見て今の言葉を思い出すのよ?」


 ここには事情を知らないベリス族もいるから、こんな風に話しているんだね。


「……はい。その通りです……ありがとうございます。もう少しで愚かな父親になるところでした」


「ふふ。ベリス王は立派よ?」


「あの……では……なぜドラゴンの島には白いバラがたくさん咲いているのですか?」


「え? あぁ……ふふ。ほら、赤いバラに赤がついても目立たないでしょう?」


「……え?」


「白いバラなら赤がつくと目立つっていうか」


「……? よく分からないのですが……バラの交配をしているのですか?」


「え? 交配はしていないわよ? ほら、ブシューってなってビシャッってなると赤くなるでしょ? わたしを育てたドラゴンがそれが好きでね。だから、島中白い花でいっぱいなの。たまたま今の時期がバラなだけで他の季節には違う白い花が咲き乱れているわよ? うふふ」


「……ブシューでビシャ……」


 ベリス王が言葉を詰まらせたね。

 ヴォジャノーイ王とリヴァイアサン王とグリフォン王がガタガタ震えているよ。

 おお……

 グリフォン王のお母さんがその姿を見て呆れているね。

 ハデスもヴォジャノーイ王の震える姿にため息をついているよ。

 

「うふふ。ぺるみがいるから詳しくは話さないけど……獲物の血は……興奮するわよね……」


 いや、そこまで話せばわたしにもちゃんと伝わったよ……

 人化しているけど、さすがはドラゴン王だ。

 笑う姿は綺麗だけどゾクッとしたよ。 

 ヴォジャノーイ王とリヴァイアサン王はガタガタ震えているけど、グリフォン王は震えが止まったね。

 あぁ……

 気絶したのか。

 かわいそうに。

 種族王になったばかりでこんな風に笑うばあばを見れば気絶しても仕方ないよね。

 グリフォン王のお母さんが呆れながら介抱している……

 後で叱られるんだろうな。


 あ、ベリス王子の弟さん達が目を覚ましたね。

 

「……あ、夢……?」

「酷い歌だった……」

「あれは……何の夢だったんだ?」


 弟さん達には何の夢だか分かっていなかったんだ。


「弟達よ……その夢は……姉上が前魔王に傷つけられた時の出来事だ」


 ベリス王子が辛そうに話しかけたね。


「前魔王……?」


「そうだ。姉上は数千年も前魔王の幻に苦しめられてきたのだ」


「……幻に?」


「お前達は……ずっと姉上の事を恨んできたのだろう? 父上と母上の愛を奪われたと思ってきたのだろう」


「……それは」


「姉上の事を……わたしは……助けられなかった。前魔王が姉上を連れ去ろうとした時……わたしは恐ろしくて……動けなくて……でも……姉上は震える身体でわたしを前魔王から隠して……もしかしたら……斬り刻まれたのは……わたしだったかもしれない。あの時……連れ去られたのがわたしだったら……」


「兄上……」


「わたしは……ずっと姉上に……謝り続けてきた。伝わらなくても……ずっと……」


「……伝わらない?」


「わたしも、父上も母上も叔母上も……皆それぞれ……後悔して自分を責めて……そうやって生きてきた……その苦しみをお前達がさらに大きくした」


「……!」


「お前達が姉上を悪く言うたびに、わたし達は酷く傷ついた」


「兄上……」


「最期に……姉上に謝るのだ……」


「……え?」


「謝れ!!」


 ベリス王子がこんな大声を出す姿を初めて見たよ……


「……嫌です」

「もう死んだんです。今さら謝ったって……」

「ずっと父上と母上に愛されてきたんだから……それでいいじゃないですか」


 どこまでひねくれ曲がっているの?

 ベリス王子がここまで話したのに……


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