皆、わたしが葬儀で暴れると思っているんだね
おばあちゃんに手伝ってもらって黒いドレスに着替える。
「こっちの世界でも葬儀は黒い服なんだね」
「そうみてぇだなぁ」
おばあちゃんが心配そうな顔をしているね。
「おばあちゃん? どうかしたの?」
「ぺるみ……ベリス王子の弟達が姉ちゃんの事を悪く言っても相手にするなよ?」
「……うん。大丈夫。おとなしくしているから」
「そうか? じゃあ、いいけどなぁ。弟達が、腹が立つような事を言うかもしれねぇ。それでもぺるみは我慢するんだぞ?」
「……おばあちゃんは弟さん達の心を聞いたんだね」
「ああ。ベリス族だから思った事を口に出すような事はねぇだろうけどなぁ。ずっと嫌っていた姉ちゃんの死に、嬉しくて口を滑らすかもしれねぇだろ?」
「……そんなに嫌っていたんだね」
「ああ。そうだなぁ。『親の愛を奪われた』と思う子の心は……歯止めがきかねぇくれぇドロドロするんだなぁ」
「……そうなんだね」
「よし。完成だ。綺麗だぞ」
「……おばあちゃん?」
「ん? なんだ?」
「お姉さんは赤ちゃんになって……弟さん達からかわいがられるかな?」
「弟達は赤ん坊の誕生を喜んでるぞ? 昨日卵から孵った事になってるからなぁ。もう会ってかわいがってもらってたみてぇだ。弟達も商売をしてるからそんなに長い間は会ってねぇけどなぁ。姉ちゃんの死については心の底から喜んでるぞ」
「複雑だよ。お姉さんには記憶はないけど、自分を嫌っていた弟さん達が、妹としは愛してくれるんだよね?」
「……モヤモヤするけどなぁ。でも、これはばあちゃん達が口を出したらダメな事だ」
「……うん。今はお姉さんが妹として幸せに暮らす事を喜ばないといけないんだよね」
「そうだなぁ。じゃあ、広場に行くか」
こうして広場に行くと……
ハデスが来ているね。
黒い服が、髪と瞳の黒色に合っている。
「ペルセポネ……留守にばかりしてすまない」
「わたしは大丈夫だよ? タルタロスのクロノスおじい様は?」
「あぁ……ずっとベットに潜り込んで出てこないのだ」
「そう……」
「これからの事はゆっくり決めればいい。独房の扉は常に開いたままにする事にしたのだ」
「……もう扉を閉めないの?」
「ああ。ヨシダさんも来てくれて皆で話したが三人ともタルタロスにいたいようだな。側付きの二人も今さら天界には戻りたくないようだ。もう数千年タルタロスでのんびり暮らしてきたからな。天界の煩わしい生活に戻りたくないのだろう」
「そっか……」
「では……ベリス王女の葬儀に行くか」
「うん。ハデス?」
「なんだ?」
「亡くなった事になっている娘さんの遺体はどうなっているの? 棺を開けられたら大変だよ」
「問題ないだろう。あのベリス王だからな」
「……確かに、その辺りは、ちゃんとしていそうだよね」
「ペルセポネ……」
「うん?」
「葬儀で……ベリス王の息子達が王女について何か言っても相手にしてはならない。我らはベリス王の家族ではない。分かるか?」
「……うん。分かるよ。さっきおばあちゃんにも言われたの。今までベリス王子が色々我慢してきたんだから、わたしがその事で弟さん達に何か言うのは違うよね」
「そうだ。王女はこれから妹として幸せに暮らすのだ。我らだけはそれを知っている。だから決して相手にするな?」
「うん。大丈夫。安心して」
って思っていたのに……
もうっ!
オケアノス!
どうしてこんな事を……




