わたしって手がかかると思われているの?
「……ウリエルが?」
ベリアルが真剣な顔で尋ねてきたね。
「だって、あの状況なら生かすより殺す方が簡単だったはずだよ? でも助けたの。ベリアルは天界でウリエルと知り合いだったの?」
「ん? いや、そういうわけでもないけど……お互い苦労していたからな」
「苦労?」
「……ウリエルは『あの』ゼウスの執務の補佐をしていただろ?」
「『あの』ゼウスって……」
確かにお父様の補佐は大変だろうけど……
「で、オレは『あの』ハデスの側付きだった……」
「二人ともかなり苦労していたんだね……」
簡単に想像できるよ。
「お互い同情していたっていうか……そんな感じかな。あの兄弟は、かなり手がかかるからな」
「……なんか……ごめんね」
「ぺるみが謝る事じゃないさ。それに、ハデスはオレを鍛えはしたけど他の天族と違って虐げはしなかったからな」
「……そう」
やっぱりベリアルは天界で虐げられていたんだね。
「オレは、この世界に追放されて悪い事をして……それであの空間に閉じ込められて……でもあの空間じゃ誰からも虐げられなくて……それなりには幸せだったんだ」
「……ベリアル」
「……あの空間から助けてくれたのはウリエルだったんだな」
「なんとかしてベリアルをとめたかったんだね」
「オレ……誰からも大切になんて思われていないと思っていたけど違ったんだな。今度会ったらちゃんと『ありがとう』って伝えるよ」
「うん。そうだね」
「ぺるみ……」
あれ?
お父さん?
いつの間にか魔王城から来ていたんだね。
真剣な顔をしているよ。
「お父さん? どうかしたの?」
「うん……ベリス王女の葬儀にもうすぐ出発するよ」
「え? 明日かと思っていたよ」
「……うん。深夜から始まるんだけど……少し早めに来て欲しいらしくてね」
「……そう。あの時、水晶で見ていた皆しかベリス王の娘さんが赤ちゃんになった事を知らないんだよね?」
「うん。ベリス王子以外の息子達にも知らされていないよ。かなり王女を嫌っていたみたいだからね」
「……そっか」
「じゃあ、着替えて出発しようか」
着替えか……
確かに人間のアカデミーの制服じゃダメだよね。
「オレも行ってもいいのか?」
あれ?
ベリアルも行きたいのかな?
「あぁ……今回招待されたのはボクとぺるみとハデスだけなんだ。ごめんね」
お父さんが申し訳なさそうにベリアルに話しているね。
「そっか……魔族達はぺるみに優しいから大丈夫だよな? でも心配だよ。ちゃんと守ってやってくれよ? ぺるみは時々変に突っ走るから」
「うん。種族王達もいるし大丈夫だよ。種族王は皆ぺるみに好意的だからね」
「そうだな。ぺるみ……変な事に巻き込まれないように気をつけるんだぞ?」
ベリアルがわたしを心配してくれている!?
くうぅ!
嬉しいよっ!
「うん。大丈夫だよ。さすがに葬儀で暴れたりなんてしないから」
「……それならいいけど。あぁ……心配だ」
「じゃあ、じいちゃんが水晶で見せてやろうなぁ」
吉田のおじいちゃんが水晶を持ちながら歩いてきたね。
第三地区の皆も広場に集まってきたよ。
「うわあぁ! ありがとう。これで安心だな。ぺるみは目を離すと何をするか分からないからな」
「あはは。そうだなぁ」
うぅ……
ベリアル……
さっきまでは信用してくれているみたいに話していたよね?
「ほれ、ぺるみは、着替えねぇとなぁ」
おばあちゃんが笑いながら手を繋いでくれたね。
「うぅ……わたしは、ちゃんとしているもん……変な事ばかりしていないもん……」
「あはは。そうか、そうか。ほれ、早く着替えるぞ?」
軽く流された気がするよ……
もしかして、わたしってかなり手がかかると思われているの?




