ヒヨコちゃんのクッキー屋さん(2)
今回はベリアルが主役です。
「ハガシってなんだよ……っていうかお手伝いって誰だ? ジャック達か?」
だから、一番に来てくれたのか?
「ん? 違うよ? 吉田のおじいちゃんとおばあちゃんだよ。喜んで協力してくれたの」
ぺるみは、いつの間にか二人に頼んでいたのか。
「そっか。二人なら計算も得意だからな。でも大丈夫か? じいちゃんが裸踊りを始めたら……」
「あはは。大丈夫だよ。市場では踊りの師匠として崇められているからね」
「そういえば、そうだったな。っていつの間にかもうじいちゃんとばあちゃんがクッキーを売り始めている!? しかも長蛇の列だ!」
「ぐふふ。皆ヒヨコちゃんと握手をしたいんだね」
「……この人数と握手するのか!?」
「ぐふふ。今朝から休み時間……講義中もコツコツと握手券を作った甲斐があったね。朝のうちに紙屋さんから紙を買ってジャックのお母さんに頼んでクッキーを百袋頼んでおいたんだっ! ずっと家にいるからいくらでもクッキーを作れるって言ってくれたの」
「百袋!? ちょっと待てよ! パンみたいな翼がすり減っちゃうよ!」
「大丈夫だよ。わたしが『はがし』になるから。はい、一番目のお客さんはリリーちゃんだね。ヒヨコちゃん握手会の始まりだよっ!」
「はあ!? うわあぁぁぁん! 百人と握手なんて無理だよぉぉぉお!」
ぺるみめ!
帰ったらクレープとカップケーキとアイスクリームを作らないと赦さないからなっ!
「うぅ……今、何人くらいだ?」
かなりの数、握手したぞ?
「はいっ! 流れながらの握手ですよ! はいはい! どんどん進んでくださいねっ! そうなんですよっ! ヒヨコちゃんは世界の宝なんですっ! パンみたいなかわいいおててを堪能してくださいっ!」
……ぺるみは、なんであんなに嬉しそうなんだ?
「ぐふふ。ヒヨコちゃん、かわいい。ヒヨコちゃん、かわいい」
……!?
ぺるみがどんどん変になっていく!?
いや、元々変か。
「推しが皆から求められるって最高っ!」
いつも以上に気持ち悪いな。
……でも。
なんか変だぞ?
ぺるみの周りが光っている?
見間違いか?
かわいいから光って見えるのかも……
ニコニコ笑うぺるみは最高にかわいいからな。
……?
いや……
違うぞ!?
神力だ!
神力が溢れ出しているぞ!?
あれは大丈夫なのか?
って……
いつの間にか市場中が神力でいっぱいになっているぞ!?
「ああ……疲れが取れていく……」
「肩こりが治ったぞ!?」
「なんだ!? お前……ツルツルだったのにフサフサになってるぞ!?」
「は!? お前だって……っていうより……なんでそんなに長髪になってるんだ!?」
「一体どうなってるんだ!?」
おいおい……
大変な事になっている……
ぺるみはハガシ? に夢中で全然気づいていないみたいだし。
じいちゃんとばあちゃんはクッキーを売るのに忙しくてこの状況が分かっていないのか?
どうしよう……
天界で問題になってぺるみが捕まったら……
「ぐふふ。てんてこまいになっているヒヨコちゃんもかわいい」
……!?
ぺるみ!?
ダメだ。
オレがぺるみを守るんだ!
とりあえずオレにできる事は……
この溢れ出してる神力をとめる事だ!
「ぺるみ!」
ダメだ。
『神力が溢れ出しているぞ』なんて人間の前で言ったら大変な事になっちゃうよ。




