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瞬くんと生きた夏  作者: マーク・ランシット
8/21

 病室に戻ると、瞬くんはどうするって表情をした。僕は、続けるって表情をした。


 次に瞬くんが読み始めたのは、ミッシングリンクの話だった。人間は、3万年前に類人猿から進化したとされている。でも、人類の祖先となった以外にも、別のタイプの前人類がいたらしい。


「アフリカのスケルトンコースト(骸骨海岸)というところで、ビーチウォーカーと呼ばれる前人類の化石が見つかったんだ」

「ビーチウォーカーって、浜辺を歩くって意味だよね」

「その通り。アフリカではストランドローバー(浜辺の散策者)と呼ばれていたんだ。脳の大きさが、僕たちの祖先より30%も大きかったんだ。つまり頭が良かったってこと。手足が細くて、あばら骨が紙の様に薄かったんだって」

「何か宇宙人みたいだね」

 僕の言葉に、瞬くんが凄いと言った。

 

「ワトソン博士も、彼らの姿を宇宙人みたいだったんじゃないかと想像している。武器とか装飾品が見つからなかったから、とても純粋で、戦いを好まない人類だったんじゃないかって」

「武器を持ってないんじゃ、他の凶暴な奴らにやられちゃうじゃん」


 頭が良いはずなのにどうして武器を作らなかったんだろう。体が弱いなら武器は絶対に必要な筈だ。何万年も前に、もう滅んでしまっている人類のことなのに、なぜか僕は腹が立って仕方がなかった。


「大河、何を怒ってるの?」

「だって、バカで体が弱かったら滅ぶのは仕方ないけど、なんで頭が良いのに、頭をそっちの方に使わなかったの。それってバカな奴よりムカつくじゃん」

「じゃあ、大河がビーチウォーカーだったら、どうしてたの?」

「光線銃作って、襲って来た奴らをやっつけてやるんだ」

「それって、結構受けるね」


 瞬くんがお腹を抱えて笑った。




 既に8月も半ばに掛かろうとしていた。夕食が終わって、部屋で漢字の練習をしていると、おばあちゃんに呼ばれた。居間には曾おばあちゃんとおじいちゃんもそろって待っていた。


「さっき、瞬くんのお母さんから電話があったっちゃけど、明日の朝、高千穂に行くことになったらしいと」


 曾おばあちゃんが、思いつめたような顔で言った。高千穂と聞いて直ぐに愛子おばあちゃんの事が頭に浮かんだ。嫌な予感がした。


「瞬くんを可愛がってた、曾おばあちゃんが亡くなったらしいとよ」


 瞬くんの悲しんでいる顔が浮かんだ。そしてあの美しい文字も。


「瞬くんから、出来れば大河も一緒に行ってくれないかって頼まれたらしいっちゃけど・・」

「行きたいです」


 僕は直ぐに答えた。曾おばあちゃんが退院した後も、病院での瞬くんとの事は、夕食の時にみんなに話していた。だから、曾おばあちゃんたちにとっても、瞬くんの家族の事はとても身近な存在になっていた。


「じゃあ、明日の朝10時ころですね。分かりました」


 おじいちゃんが、瞬くんのお母さんに返事の電話をした。


 愛子おばあちゃんの家に、2泊することになった。

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