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5:僕の妹

僕が家につく頃にはすっかり暗くなってしまっていた。


「ただいま―」


「あっ、お帰りなさい兄さん」


台所から優が顔をだす。


…あれ?何で自分の部屋にいないんだろ?


「すぐ食べますよね?今ごはん温めますから……」


「うん、ありがとう」


台所に入り、食卓を見ると、2人分の夕ご飯。


……こんな時間まで食べるのをまっていたのか。


「優、」


「はい?」


「僕が遅いときは先に食べてていいんだよ?」


まさか食べてないとは思ってなかったので、僕は連絡しなかったことを後悔していた。


「……いえ、一人で食べるのは寂しいので…」

優は小さな声でそう言ったのを聞き、僕は申し訳なさでいっぱいになった。



「そっか……ごめんね、これからおそくなることが多くなると思うんだけど…」


「それでも大丈夫です。兄さんは高校生だからしょうがないですよ。」


優は笑っているつもりなのだろうが、その表情から寂しさの色は消えていなかった。


「ホントにごめんね。できる限り早く帰ってくるようにするよ。」


「はい……」


今までずっと朝食も夕食も一緒に作り一緒に食べていたので、優は今日になっていきなり一人で食べることはできなかったのだろう。


うーん、僕が優でも待ってるよな。ホントになんとか早く帰ってきたいところだ。


『チーン♪』


電子レンジの音がひびく。


「さ、食べよっか」


「あ、はい」


温めたお皿を食卓に並べる。うん、いいにおいだ。


「……あ」


…すでに全て完成された料理の数々を見て、あることに気づいた。


「どうしました?兄さん」



優が不思議そうにたずねてくる。


「あのさ、これから僕がおそくなる時はいつも優に夕食全部作ってもらうことになっちゃうね……」



……僕がすまなそうにそう言うと、優は「何をいまさら」といったようにわらった。


「気にしないでください。私料理するの好きなので………兄さんは毎日楽しみして帰ってきてくださいね。」


…本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


「ありがとう、優。ごめんね、本当に……」


「そんな顔しないでください。……私が料理が好きなのは、食べる人が『おいしい』って笑ってくれるのが嬉しいからですよ?」


……僕そんなに暗い顔してたかな。


「そうだよね、こんなにおいしそうな料理を目の前にしてこんな顔をしてるのは失礼だよね。」


僕の顔から暗さが消えたのが分かったのか、優はにこっと笑った。


「はい、じゃあいっぱい食べてくださいね。」


「うん、…いただきます」


「いただきます」



















「「ごちそうさまでした―」」


「あー、おいしかった」

「ホントですか?はじめて一人で全部作った夕食だけど、満足してくれたみたいで嬉しいです。」


優は自分も満足げに言った。


「炒めものもコロッケも、油っぽくなくてそれでいて旨みがあって、ホントにおいしかったよ」


「良かったです〜」


優はごきげんな様子で片付けをはじめた。




……あ、全部作ってもらったんだから片付けは僕がやらなきゃ。


「優、」


皿を流しに運ぼうとしているところを引き止める。


「その……夕飯全部つくってもらっちゃったからさ、洗い物は全部僕がやるよ。」


「えっ!そんなのわるいです!」優はとたんにあわてる。


作る方が大変だし時間かかるから、そんなの当たり前だと思うんだけどな……


「遠慮しないで、ほら。先にお風呂入ってきなよ」



優から皿を受け取り、その小さな肩をもって体を風呂場の方に向ける。


「あっ……」


ちょっと困ったような顔になったけど、すぐに観念した。


「……じゃあお言葉に甘えます。」


「ゆっくり入ってていいからね―」


優は「はーい」と言って風呂場に向かった。




……そういってても優はいつも先に入るとき僕を待たせるのを気にするのか、すぐにあがってきてくれる。(てしまう。)


もっとゆっくりしてていいのになぁ。…



















「お先でした―」



居間のドアから優が顔を出していった。


「や、もうあがってきたか」



まだ洗い物が終わってから五分とたってない。


実に10分程度の入浴だ。



…女の子でそれって、かなり短いんじゃないかな……。

よくわからないけど。


「僕も今入るよ………って優!まだバスタオルじゃないか。早く着ないと風邪ひくよ?」


「すみません……まず、あがったことを伝えようと思って…」


「だからそんなに急ぐ必要ないって。……いいから早く着てきなよ」


「は―い」


優は居間のドアを閉めて小走りで出て行った。


「………」





……にしても、びっくりした。

まさかバスタオル1枚で来るなんて。


髪もまだ乾かしてないようだったし、風邪引く要素満載じゃないか。


うーん。今日で改めて思ったけど、優の周りに気を使いすぎるのも困りものだよな。


今度ちゃんと言わないと……



「よし、僕も入るか」


ソファーから立ち上がり、電気を消して居間からでた。



「―くしゅんっ!――」


その時、優の部屋からかすかにくしゃみの音が聞こえた気がした。


「………。」



……大丈夫かな、ホントに。

はるかの妹、優のはなしでした。


こんな仲のよい兄妹、ホントにいたら微笑ましいですね。

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