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4:不思議な人

「おっ、一年生だな。」


僕は帰ろうと下駄箱でくつを履き替えていると、誰かに話しかけられた。


くつのラインを見ると緑。ということは三年生か。


「あ、はい」


見上げれば、ジャージにクウォーターのパンツ、そしてソックスをはいた小柄なひとが立っていた。


ラグビー部の人かな?


全身が土で汚れている。


「そうですが、何か…」


立ち上がって見ると、本当に小柄な人で、身長は僕よりも低いようだった。


「いや、こんな時間までいたから、ちょっと気になっただけなんだ。……一人のようだけど、今まで勉強でもしてたのか?」


「あ、いえ、いろんな部活の仮入部にいっていたので……」


今はラグビー部は一人でも多くの部員を欲しがっている状態だ。


僕がラグビーの練習を見ていたなんて言ったら、かなり誘われてしまうと思ったのでそう答えた。


「?……いやまてよ、仮入部は授業終了から一時間までと決まっていたはず……」



……そうだった。

なんとかごまかしたいところだったが、

ここまでくれば正直に答えるしかない。


「あの…それが終わってからは、その………ラグビー部の練習を……」


言ってる途中、とたんにラグビー部の先輩の顔が明るくなる。


「みてたのか!」


「……はい」


う、やばいかもしれない。


「そうか、窓から一人だけ、誰か見ていると思ったのはおまえだったのか――」

「はい、そうでした。……そ、それでは失礼し――」



……ガシッと。



そこで逃げようとしたのだが肩を捕まえられた。


た、助けて。


「それで、どうだ!?ラグビーに興味を持たなかったか!?」


肩をガクガクとゆらされる。


「は、はい〜〜、す、少しは……」


「ホントか!?………あ、ごめんな、」


僕がちょっとぐったりしてるのを見て先輩は解放してくれた。


……からと言ってもう逃げられるわけではないが。


「…あのさ、明日仮入部に来てくれないか?」



…う。いきなりその話できたか。


「そ、それはちょっと……」

仮入部に行って顔を覚えられたらまたつかまる可能性がある。


だから、ここはうまく断らないと……


「あの、まだ仮入部に行きたい部が残っているので、すみませんが……」


「いや、明日だけでいいんだ!まだ期間はあるだろう?」


「あ、はい」


「……君はあれだけ長い間練習を見ていられた。………てことは、少しでもラグビーの魅力を理解してると思うんだ」


「は、はぁ……」


「部紹介の時にやったタッチフット。あれをやってみたいと思わないか?」


確かにあれは楽しそうだった。

……入るかどうかは別として。


「まぁ、少しは……」


「じゃあたのむ!本当に明日だけでいいから!」

先輩は手を合わせて頼んできた。



……うーん、明日だけと言うならいってもいいかもしれない。


それにここまでたのまれれば断ることなんてできない。



「…分かりました。明日お伺いします。」


「本当か!?ありがとう!」


先輩は本当に嬉しそうな顔をした。


「いやー、仮入部に来る一年生がかなりすくなくて困ってたんだよ。」


「そうですか…」


「でも来てくれた人は楽しんでたみたいだったな。明日も来てくれればいいが…」



……僕は先輩が満足そうに言ったその言葉を聞いてほんの少し明日が楽しみになったのだった。



















「……まだ電車まで時間がありますね」


「あぁ、ちょっと早く駅につきすぎたかな。」


「そうですね。」


……あれから僕は先輩と駅に向かいながら、ラグビーの事についていろいろ教えてもらっていた。


簡単なルールや、練習内容、そして先輩がなぜそんなにラグビーが好きか。


……ん?先輩……?


「あ、あの…先輩のお名前は……」


「あっ!悪い、まだ言ってなかったな……おれは『新井(あらい) 竜太(りゅうた)』。明日はよろしくな。」


「はい、…僕は篠原悠です。」


「はるかか……女みたいだな」


「よ、よく言われます…」


「あ、わるいわるい。でもいい名前だとおもうぞ。おまえにピッタリだ」


「そうですか?」

「『はるか』という字は『悠々』の『悠』だろう?」


「あっ。どうしてわかったんですか?」


「いや、なんとなくだよ。…なんかおまえは世間のわずらわしさから離れて、一部の人間と心静かに暮らしてそうな感じがするからな。」


「えっ。……そうかな?」


「込み入っていて面倒な人間関係は特に嫌いだろう?」



「あ、……はい。」



「まさに『悠々自適』じゃないか。」



………。


……沈黙がながれる。



「ラグビーはな、さっきも言ったけど一番仲間を大切にするスポーツだ。……だからひとりが足がものすごく遅かったって、誰もそれを責めないし、そいつを見捨てない。」



「………」

「ラグビーにはプレーの種類が多い。きっと誰にだって輝けるところはあるんだ。だから周りはそいつのその部分を引き出してやる。」



……いじめや偏見は絶対にないということ…か。


「……話しててわかったんだよ。なんかお前は信頼関係が築けた相手にしか、人一倍本当の自分をだせない性格だということ…」


「………」



自分では自覚してなかったけど、よく考えればそうかもしれない。


付き合いが長いあの2人としかほとんど接していない。他とは話すことがあったとしても、ほんの少しだ。


彼らのことは確かに信頼している。今まで助けあってきた仲間だから…



「あ、わるいな。なんか分かったようなことばっかりいっちゃって」新井さんはすまなそうに頭をかいた。


「いえ、実際そうだと思います。今まで考えたことなかったですけど……」



……なんか見透かされているようで不思議な気分だった。



『プォーーー』


右側の遠くから光がみえはじめた。


「おっと、電車がきたな。」


「あ、はい。……でも反対の号線だから急いだ方が……」


「やべっ、この電車は二番線だった!じゃ、悠。また明日な。」


「あ、はい。さようなら」


新井さんは急いで階段をおりていった。










……初対面の人とあんなに話せたのは初めてだった。


いつもはすぐに僕のほうからさけるのに。何故か新井さんとは話していて安心できる暖かみがあった。


ホントになぜなんだろう。





…新井さんの乗った電車がどんどん遠ざかっていく。


僕はその方向を見ながら、ひとりただ首をかしげていた。

シリアスな感じになりました。


てゆうか、1話がこんなに長くなるとは思わなかった……(無計画)


いやまだ終わってないですけど…


タイトルこんなのにしなきゃよかったと後悔してます。

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