真の力に覚醒しただあ!?今さら目覚めても、もう遅え!!!!
僕は冒険者だ。
僕と幼馴染の四人で、小さな町から出てパーティーを組んだ。誰一人怪我で欠けることなくやってこれたし、ランクも上がった。それは嬉しかった。
でも一つ不満があった。
駆け出しの頃はよかったんだ。
世間を知らなくて騙されたり、危険かどうかの判断が上手くできずに死にかけたりもしたけれど、メンバーの実力はコロンの実の背比べで、お互い助け合って頑張っていた。
冒険者になって一年ほど経った頃、リヒトが剣の才能に目覚めた。そうすると奴は調子付いて、リーダー気取りで無茶な決断を押し通そうとしたりしたけど、少しして盾役のドニに危ないところを助けられて元に戻った。役割上派手ではないけれど、ドニも自分と同じように成長してたって気づいて。
リヒトはお調子者だけど根が素直なんだ。
魔術師のサンガも、それより遅れて強力な魔術を使えるようになった。大きな町に泊まった時に、他の魔術師に頼み込んでコツを教えてもらって、それで魔力の扱いが上達したんだそうだ。
僕も同じ頃にエルフの弓士の技を見る機会があって、その人の動きを何度も思い出しては真似しているうちに、飛距離も命中率も格段に上がった。
でも、白魔術師のマオだけは、ほとんど成長しなかった。
僕らは冒険者だ。
魔物を狩り、盗賊を倒すのが仕事。
危険で身体が資本の冒険者は、一生続けられるような仕事じゃないから、引退するまでに、お金をたくさん貯めなければいけない。
でも報酬がいい依頼は、ランクが上がらないと受けられないし危険も大きい。…だから引退前に死ぬ冒険者なんてザラにいる。
僕らのパーティーは、少し前にBランクになった。これはかなり凄いことだ。大抵の冒険者はCランク止まりだから。
でも、マオさえいなければ、僕らはもっと強くなれるのに。
そんな思いがあった。
けど成長には個人差がある。
だから僕らは、ずっと待っていた。マオが成長するのを。僕らに追いつくのを。
でも、リヒトが才能に目覚めてから数年経っても、マオは強くならない。僕ら個人はもうAランク寄りのBなのに、マオだけはどう見てもDランクだった。
そうなると、僕らはBランクとして活動しているから、大きな問題が出てくる。
マオは足手まといになるのだ。
自分では身を守れないマオを、僕らが守りながら戦うハメになる。
確かに、白魔術師はあまり攻撃向きの職ではない。でも他のBランクパーティーの白魔術師なら、結界で攻撃を防いだり体術で捌いたりと、Bランクの敵相手でも自分の身を守るくらいはできるのに。
流石に、全くの役立たずとまでは言わない。怪我をした時には治してもらうし、アンデッド系の敵が出れば武器にエンチャントをかけてもらったりもする。でも、他のBランクの白魔術師と比べて、その技は明らかに劣る。
正直、ポーションと聖水を買って代用した方が、効果は高いし動きの鈍いマオを守らなくていい分、危険も減るくらいだ。
そう思っていても、僕らは我慢した。
幼馴染だったから。
ずっと一緒にやってきた仲間だったから。
でもある日、つい「もうちょっと頑張れない?」と言ってしまった。マオを庇って肩に深い傷を受けた日に。
そしたらあいつ、なんて言ったと思う?
「無理だよ。俺は君らとは違うんだ」
一瞬、自分の耳を疑った。
そして次の瞬間、僕はキレた。
同じだと、仲間だと思っていたからこそ、ここまで一緒にやってきたのに。
こいつは強くなることを諦めていた。もう成長する気なんてなかった。自分と僕らは違うと思っていたのに、何も言わずにBランクパーティーに居続けた。のうのうと実力に合わない報酬を受け取って。僕らが自分を庇って、何度も怪我をするのを目にしながら!
許せなかった。
「マオ、おまえ出てけ」
凄く低い声が出た。
許せない。
こいつ、僕らに寄生してた。
険悪な雰囲気を感じ取ったのだろう。他のメンバーが集まってきた。
「おい、ライト。どうした?」
リヒトの一件以来、自然とリーダーになったドニが僕を宥めようとした。
僕はみんなに、今あった事を話した。
険しい顔になり、マオを見る他のメンバーたち。それでもマオは、ヘラヘラと笑った。
「……決を採る」
ドニが静かな怒りに満ちた声で言った。
「マオがパーティーから抜けるのに賛成な奴は挙手」
マオ以外の全員が手を上げた。
ドニは頷いてマオに宣告した。
「決まりだ、マオ。パーティーを抜けてもらう」
途端に慌て出すマオ。
「ちょっ…ちょっと待ってよ!いきなりそんなの酷いよ!」
こいつは…本気で言っているのか。この決断がいきなりで酷いと。
こいつは、ずっとこのパーティーに寄生するつもりだったのか。もう強くなる気なんてないくせに。
ドニには夢がある。Aランクになって、国外を自由に旅することだ。
他の奴らにだって、もちろん僕にだって夢がある。メンバー同士で、何度も語り合った夢。どれもAランクパーティーにならないと実現できなかったり、なれば実現が近づいたりするような。
でもマオがこのまま強くならなければ、僕らのパーティーはAランクにはなれない。それをわかっていて!!!
怒りをこめて睨むと、マオは後ずさりしてヘラリと笑った。
「やだな、そんなに怒らないでよ」
この場面でも笑って誤魔化そうとする態度に、逆に頭が冷えた。
こんな奴、相手にする価値もない。
「行こう」
他の奴らの背中を押して歩き出した。
前回の依頼の報酬分配はもう済んでいる。
「えっ…ちょっと待ってよ、本当に?」
マオはまだ背後で何か言っている。
僕らがどうして怒っているのか、それさえ理解できていない様子だった。
振り返って殴り飛ばしたいのを、歯を食いしばって堪える。
横を見ると、他のメンバーも似たような表情をしていた。
僕らはマオを信じていたんだ。
直に追いついてくれるって。
その為の努力を惜しまないでいてくれるって。
もし万が一……強くなることを諦めたなら、邪魔にならないように自分からパーティーを抜けてくれるって。
…僕らは…友達だと思っていたから……。
その夜、僕らは酒場に行って、酒を浴びるように飲んだ。
飲まなければ、やっていられなかった。
その後しばらくして、パーティーが解散して次の所属先を探していた白魔術師をメンバーに加えた。最初の依頼で、マオとはあまりに違う彼の立ち回りに思わずため息が出た。
そして危なげなく依頼をこなす僕らのパーティーは、Aランクに昇格した。
それから一年ほど経った頃、マオがハーレムパーティーを作ったとの噂を聞いた。
何でも突然、テイマーの才能に目覚めたそうだ。
何だよテイマーって。おまえ白魔術師じゃなかったのかよ。
その上、僕らに一方的にパーティーを追い出されたと言いふらしているらしい。そんな話で同情を引いて、女子をハーレムパーティーに引き込んでいるとかいないとか。
途中までは腹が立っていたけれど、そこまで聞いてむしろ笑ってしまった。
やっぱりクズだった。パーティーから抜けさせて正解だ。
噂では、「前のパーティーが今さら戻ってきてくれと言っても、もう遅い!」とかイキっているらしいが、こっちのセリフだ。
誰が言うか。
目覚めんの遅すぎんだよ。
でも遅くてよかった。
たとえAランクの実力があろうと、おまえみたいな奴、要るか。ハーレムの女子どもにも、その本性見抜かれて捨てられちまえ。
そんな風に思ってたら、三年後その通りになって呆れてしまった。