相棒との約束
25,000PV記念です。
今回は景介の父、景太郎の話です。
「景太郎、俺らにもし子供が生まれたら……」
「もちろんだ、瑛史。俺らみたいに……」
「たかと!待ってよ、貴斗!」
「景介おっそーい。」
茶戸家の庭で息子の景介と貴斗坊ちゃんが走り回っているのを、私は親父と並んで眺めていた。
初めて2人を引き合わせてから1年余り。馬が合ったようで、毎日のように遊んでいる2人に、私も胸を撫で下ろしている。相性もあるから無理にはできないが、仲良くしてほしかったから。
「景介が貴斗を気に入ってくれてよかったぜ。我が息子ながらややこしい性格で生まれやがったもんだからな。いけ好かない態度に、ダチの1人も作れんのか心配だったんだ。」
「景介にとっても、初めての友人ですから。私も心配してましたが、気が合うようでよかったですね。」
「あぁ。まぁ、後は貴斗が景介を変な道に誘い込まなきゃ万々歳だ。」
そう言いながら、親父は貴斗坊っちゃんを優しい目で見つめている。
こういう表情を見ると、親父も人の親だと感じられる。ほんの7、8年前には喧嘩っ早くて手のつけられない悪ガキだった親父が、もう人の親だ。時の流れとは早いものだ。
「……私としては、坊っちゃんと景介がどんな関係になっても構わないと思っていますよ。親父と私のように悪友としてつるむのでも、幼馴染として成長していくのでも、ただの数多くいる友人の1人としてほど良い距離感で付き合うのでも。もちろん、今の我々のように、親父と側近として一生を共にするのでも。2人が仲良くやってくれるのであれば。」
「ははっ。ちげぇねぇ。……あ、おい貴斗!あの野郎、あぶねぇことはすんなって言ってんのに……。おら貴斗!何やってんだバカ!」
「げ……。父さん見てたの?」
池の中に置かれた岩に飛び移っていく坊っちゃんに親父が怒声をあげると、坊っちゃんが悪びれもせずこちらを振り返ってふてぶてしい言葉を親父に言い放った。それに親父は当たり前だ、と返し連れ戻しに向かう。私もそれに続いて、景介に声をかけた。
「景介、お前も、坊っちゃんが危ないことしてたら止めないとだめだろう。」
「お父さん……。うん、ごめんなさい。どんどん行っちゃって、止めれなかったの。」
「そういうときは父さんとか親父とか、大人を呼べばいい。お前も、坊っちゃんが怪我するのはイヤだろう?そうなる前に呼んでくれれば、危なくないようにしてやるから。いいな?」
「うん。」
景介に言い聞かせ、親父の方へ一緒に向かう。親父は坊っちゃんに一発げんこつを入れると、引きずるように連れ戻してきた。坊っちゃんはぶすくれた顔をしているが、親父が手を離すとすぐに景介の手を取って走り去っていく。親父はそれを見て大きなため息をつくと、縁側へ座り頭を抱えた。
「あいつの悪ガキぶりには困ったもんだ。4歳にして早くも育て方間違った気がするな。誰だ、あいつをあんなふうにしたのは。」
「間違いなく、親父の血でしょうね。そっくりでしたよ、少し前の親父に。」
「ぐ……。はぁ……、こうなったら景介だけが頼りだな。あいつのいいストッパーになってくれると助かる。」
「親父にとっての私のように、ですか?」
私がからかうようにそう言うと、親父はムッとした表情でこちらを睨んでくる。
仕方がない。事実なんだから。いつも問題を起こしては丸投げしてきたお前の尻拭いをしてやっていたのは誰だと思ってるんだ。
その視線を無視していると、親父はため息をついて笑みを浮かべた。
「ま、それでもこうしてお前は俺に着いてきてくれてんだもんな。文句はねぇよ。あいつらも、そうなってくれるといいな。」
「……そうだな。」
親父の一言に、俺も素に戻って頷いた。
昔にした約束だが、こうして叶ってくれて俺も嬉しく思ってるんだ。できれば、一生の友人になってくれると嬉しいし、共に背を預け合える仲になってくれたら、それ以上のことはない。
「景太郎、俺らにもし子供が生まれたら、絶対一緒に育てような。きっと俺らみたいに一生の付き合いになるぜ。」
「もちろんだ、瑛史。俺らみたいに背を預けられる相棒になるに決まってる!」
25,000PVありがとうございます。
今回は景介の父、景太郎視点、父親としてのお話でした。
次回は30,000PVを予定しています。
貴斗と初音のお話を書こうと思っています。
リクエスト等あればいつでもどうぞ。