転入先は
20000PVありがとうございます。
駿弥視点です。
駿弥の転校が決まったころの話です。
「駿弥、父さん転勤になったんだ。」
いつも通り本を片手に自室に籠ろうとしたら、珍しく早くに帰ってきていた父さんに呼び止められた。そして、寝耳に水なことを告げられた。
「転勤て……。父さんはそういう役どころじゃないでしょ。何して飛ばされるの。」
「した前提で話すな。今度関東に新しく支社ができるんだ。それの運営責任者になった。つまり昇進だな。」
「ふーん。いつ行くの。」
いつ、どこに、どれだけ居るかによって、今後の動きも変わってくる。この俺も同行するとなると、転入する高校だって厳選せねばならないし、大学、就職だって今まで考えてたものは変更するところだってあるだろう。情報を早めに得て、早めに動きたい。
「夏頃だな。お前が夏休みに入ったタイミングで、引っ越し作業をしていく。」
「じゃあ、あと2週間くらいか……。とりあえず、転入する高校決めないと。あとで向こうの住所教えて。大体どこらへんか、目星は着いてるんでしょ。」
「あぁ、これだ。お前に関することは、お前が自分で全部調べるか?」
「うん。高校も、下手なレベルのところは選べないから。俺のレベルに合ったところがあればいいけど。」
今通ってる高校も、県内一の進学校だと銘打っていたが、俺からすればまだ足りないくらいだった。都内の方が、俺に合ったところがあるかもしれない。そこがうまく欠員補充を行っていればいいが、そこは運に任せるしかない。
「……駿弥。すまんな、せっかく高校入ったばっかだってのに。夏休み中に動くから、忙しくて休みもあんまないかもしれん。」
「いいよ。どうせ家にいても勉強しかしないし。」
「お前なあ。まぁいい。次の学校は、お前が楽しめるところが見つかるといいな。」
父さんの笑みに、俺はあまり期待せずにそうだね、と返した。
小学校でも、中学校でも、今の高校でも、俺の満足するレベルの内容を勉強できたことは少ない。もちろん、俺が何歩も先の内容を個人的に勉強しているからだけど、誰か1人でも俺と同じくらいのレベルでやれる人がいれば、もしかしたら……とも思うけど、いたとしてもだからなんだ、とも思う気がする。俺が1番であるなら、それで何も問題ないんだから。
部屋に戻った俺は、さっそく自分のパソコンを立ち上げ、渡された住所周辺の高校を調べ始めた。
「……やっぱり、ぱっとしたところがないな。公立は募集自体をしてるところが少ない。私立……。……旗下高校?」
都の教育委員会の発表している高校の転入生募集の一覧を眺めていると、1つの高校の名前が目に止まった。
ここは去年、塾で講師たちが噂をしていたところだ。なんでも、俺の1コ上に、とんでもない点数を模試で出した生徒が2人もいるとか。ちょうど募集も出ている。少しこの高校を調べてみよう。
俺はちょっとした好奇心で旗下高校を調べ始めた。そして、1週間後には、転入先はこの高校にしようと決めた。たとえ俺の望むレベルでなくとも、塾講師が噂するほどの先パイがいるのだ。少しは俺も退屈せずに過ごせるかも知れない。
まさかこれが、俺の人生を大きく変える決断とは露ほども知らず、俺は引っ越し作業を進めていった。
次回は22222PV、貴斗の父・母である瑛史と凛華の話をあげる予定です。