貴斗との初対面
15000PVありがとうございます。
以前お知らせしていた通り、景介の話をアップします。
景介が貴斗と初めて会う日の前後を書きました。景介3才の頃のお話です。
「景介。あの子がいつも言ってた貴斗くんだよ。」
「……貴斗、くん……。お父さん、ぼく……。」
「いい、行ってきなさい。親父!」
湧洞景介、当時3才。
これは、俺が生涯側にいたいと願った相棒との、ファーストコンタクトだ。
「景介。今度の日曜日、一緒にお父さんの職場に行ってみようか。」
「お父さんの?行きたい!」
この日、ぼくはお父さんにそう言われて、すぐに嬉しくなった。
いつもお父さんはお仕事で、おうちにいない。その代わりお母さんはぼくといつも一緒にいてくれるけど、ほんとはお父さんとももっと遊びたいし、もっとお話ししたい。
だから、初めてお父さんとたくさんいられそうで、ぼくはお父さんの服を引っ張り、声をあげた。
「こら、やめなさい。」
「へへ、ごめんなさい。お父さん、何しに行くの?」
「お前の友だちになれそうな子が1人いるから、その子に会いに行くんだ。」
「お友だち?んー……あ、貴斗くんのこと?」
お父さんに言われて、ぼくの頭には1人、この子かなと思う子が出てきた。
貴斗くん。お父さんのお友だちの子どもだって言ってた。お父さんはいつもその貴斗くんのことを話していて、いつか会いに行こうと約束もしていた。その貴斗くんに、ついに会えるんだ。
お父さんは笑って頷くと、ぼくを抱き上げた。
「貴斗くんはな、お父さんの一番の友だちの子だ。だから、景介と貴斗くんにも仲良くなってほしい。お父さんの友だちの貴斗くんのお父さんもな、2人が仲良くなってくれたら嬉しいって言ってたぞ。」
「うん!ぼく、貴斗くんと仲良くなるよ。たくさん遊びたい!」
「あぁ。芽依、日曜は姐さんがお前を外出に誘いたいと言っていた。予定が空いているなら、姐さんに返事をしておいてくれ。」
お父さんがぼくを下ろし、お母さんと話し始めた。ぼくはソファーに座り、今度会うことになった貴斗くんのことを考えた。
貴斗くんは、すごく頭がいい子で、体を動かすのが好きらしい。ぼくと同じ3才だけど、貴斗くんのお父さんがいろんなことを習わせているから、なんでもできるってお父さんが言ってた。ぼくは習い事はしたことないから、すごいなと思う。
どんな子なんだろう、ぼくと仲良くなってくれるといいな。ぼくは日曜日のことを楽しみにしながら毎日を過ごした。
日曜日。ぼくは約束通りお父さんと一緒にお父さんのお仕事場に来た。とっても大きなおうちみたいなとこだ。お父さんは、いつもここでお仕事してるんだ。ぼくはつい周りをキョロキョロした。
「景介。あの子がいつも言ってた貴斗くんだよ。」
お父さんが向こうの方を指差してぼくに声をかけてきた。
お父さんの指差す方を見て、ぼくはなんでか目を離せなくなった。
ぼくと同じくらいの男の子が、棒を振り振り続けていた。真剣な顔で、ロボットみたいにぐらぐらすることなく、ずっとおんなじように。
「……貴斗、くん……。お父さん、ぼく……。」
「いい、行ってきなさい。親父!」
お父さんが誰かに声をかけ、ぼくはやっとその男の子の隣に誰かが立っていたのを見た。
あれが、お父さんのお友だち。貴斗くんの、お父さん。それで、あの男の子が貴斗くん。
「……あ、あの……、貴斗くん、だよね?」
「……あ、景介?」
勇気を出して話しかけると、貴斗くんはゆっくり振り返ってぼくを見て首を傾げた。そしてぼくの名前をなんでもないみたいに呼ぶと、ぼくの方へ手を伸ばしてきた。
「え?」
「ほら、手、出してよ。俺は貴斗。お前が景介でしょ。あくしゅ。」
「!う、うん!ぼくは景介。貴斗くん、よろしくね。」
「ん。父さん、今日の稽古はもうおしまいにしよ。景介来たし、行ってもいい?」
ぼくが手を伸ばし握手をすると、貴斗くんは握った手を引き貴斗くんのお父さんの方へ声をかけた。
「あぁ。景介、待ってたぞ。俺はお前のお父さんの友だちの瑛史、貴斗の父さんだ。貴斗と仲良くしてやってな。」
「う、うん。あの……ぼく、景介です。3才です。よろしくね、貴斗くんのお父さん。」
ぼくが昨日少しだけ練習した自己紹介をすると、貴斗くんのお父さんは嬉しそうに笑ってぼくの頭を撫でてくれた。
「お前は賢いなぁ、景介。おい、貴斗。お前も景介を見習って、少しはいい子になったらどうだ。」
「俺はいい子じゃなくていいもーん。ね、景介。あっち行こ。景介が来たらしたいことがあったの。」
「うん。いいよ。何するの?」
貴斗くんに連れられ、1日中一緒に遊び回った。ぼくたちはすぐに仲良くなって、また一緒に遊ぶ約束まで交わした。
今日はすごく楽しかった。またいっぱい貴斗くんと遊べるといいなぁ。
お父さんと家に帰りながら、ぼくはまた遊べる日が待ち遠しくなった。
次回は20000PV、駿弥視点の話をあげる予定です。