会長と他愛ないお話
40,000PV記念です。
今回は、初音と景介の帰り道の話です。
「貴斗さん遅いなぁ……。」
授業が終わり、私はいつもどおり自分のクラスで貴斗さんを待っていた。
いつもなら授業が終わったらすぐに来てくれるのに、今日はもう20分も待ってる。すれ違いになっても嫌だし、貴斗さんからも教室から出ないように言われてるから、探しにも行けない。
貴斗さんからの連絡もないし、どうしたんだろう。
ヤキモキしながら待っていると、会長が慌ただしく教室に入ってきた。
「初音ちゃん!ごめん、遅くなって。」
「会長。お一人ですか?貴斗さんは?」
「ちょっと急用で、後から帰るって。貴斗から、初音ちゃん連れて先に帰ってるように頼まれたんだ。」
貴斗さんが急用……。何か危ないことでもあったのかな。
会長の言葉に、少し心配になってくる。貴斗さんがこうして別々に帰るときは、大抵危ない理由だ。待ち伏せされてるとか、どこかで諍いが起きたとか。もちろん貴斗さんは何も問題なくすぐに解決して帰ってくるけど、心配なものは心配だ。
会長と一緒に校門をくぐり、ゆっくりと歩きながら貴斗さんのことを思う。
「お嬢、若のことが心配ですか?」
学校から離れたことで、家での態度になった会長が微笑みながら聞いてくる。
「あ……。その、なんか慣れなくて、不安なんだと思います。いつも貴斗さんと会長と駿弥くんと4人で帰ってるから。」
「あぁ。……そういえば駿弥は今日法事で早退でしたね。思えばこうしてお嬢と2人で帰宅というのも珍しいことでした。」
「確かにそうですね。……会長は、貴斗さんの方に行かなくて良かったんですか?」
会長なら、車を呼んで私1人を乗せて帰らせて、自分は貴斗さんの方に着いていきそうだけど。
私の言いたいことが伝わったのか、会長は苦笑しながら首を振った。
「いえ。もちろん、若のおそばにはいつでも侍りたいとは思っておりますが、それは他に優先すべきことがない場合です。今回は、若にも直々に申しつかりましたし、この不安定な情勢の中、お一人でお帰しするのも気がかりですから。」
「そうなんですね。よかった。」
会長の貴斗さんに対する愛はよく知ってるから、なんとなく安心する。
そのまま他愛のない話をしながら歩いていた私たちの間に、メッセージが届いたバイブ音が聞こえてきた。
「っと。失礼しました。……舞菜。一体なんの用で。……はぁ。」
「舞菜ちゃん、どうしたんですか?」
「次の休日にデートをしろとうるさくて。そんな時間などないと、何度も説明をしているんですけど。」
「わぁ。舞菜ちゃんてば、ほんと積極的。でも、意外です。今でも、会長ってあんまり恋愛とか興味なさそうな感じだと思うんですけど。なんで舞菜ちゃんと付き合ってるんですか?」
つい気になってしまい、不躾にもそんなことを聞いた。
貴斗さんが言うには、舞菜ちゃんと会長の仲はとても良好、らしい。舞菜ちゃんは見ての通りだし、会長も舞菜ちゃんのことを好きになってるんじゃないかって言ってた。
私は正直、舞菜ちゃんはともかく、会長は本当に好きなのかなって思ってるけど。
私の問に会長が少し考えながら答えてきた。
「うーん……。なぜ、と問われると返答に困るところですが。お嬢の言う通り、私は今でも恋愛ごとにさして興味はありません。私のすべきことは若の補助をすること。それに恋愛が必要ではありませんし、そこに割く時間もありませんし。」
「ならどうしてですか?」
「……お嬢がどの程度ご存知か分かりませんが、私はロクでもない人間です。そんな私に、しつこく好意を伝えてきた舞菜に、絆されたというか。舞菜を逃したら、次はないと思えたので、なら今のうちに確保しておこうかと思った次第です。」
「確保……。じゃあ、舞菜ちゃんのことは好きなんですか?」
会長の言い方だと、好きじゃないけどって感じ。それだと、舞菜ちゃんがかわいそう。
私が詰め寄るようにそう聞くと、会長は慌てて否定してきた。
「まさか!その、最初は青田買いという気もありましたが、今はちゃんと好意を持っているという自覚があります。」
「よかった!舞菜ちゃん、よく教室で会長のこと話してるんですよ。すごく大好きなの伝わってくるから、会長がそう言ってるのは嬉しいです。」
「……お恥ずかしい限りです。お嬢に案じていただいていたとは。」
本当に恥ずかしそうに頬を掻いた会長が、取り繕うように先を促してくる。
私は、思わず笑いながらその後を着いて行った。
40,000PVありがとうございます。
今回は、初音と景介の帰り道の話でした。
あんまり2人だけで絡むことがないので、なんでもない話をしている場面にしました。
次回は44,444PVを予定しています。
貴斗の弟妹、孝汰と美南の話を予定しています。




