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プロローグ
状況説明....的な?
私はまたこの何もない部屋で起きる。いつもと同じ風景。質素な寝台、壁は少し古びていて、窓はない。申し訳程度にテーブルとイスのセットがあるが、使ったことはない。少し重めの金属製のドアを押して開くとこれまた質素なリノリウムの廊下に出る。部屋を出て右に曲がり、突き当りにある部屋に入る。
「おはよう」
白衣に丸い縁のメガネをかけた中背中肉の男がいつも通り話しかけてくる。歳は知らないがおそらく六十前後といったところだろう。それ以外の情報はない。知りたいとも思わない。それに、自分の情報も、ここがどこかも知らないし、そもそもここ以外の場所を見たこともない。出自など当然知らない。幼少期という概念も知らない。自分が経験したことのない概念の存在だけが淡々と流れていく日々。わかっている、幾度となく通ったこの思考の道。考えるだけ無駄だ。
「おはようございます」
今日も作業が始まる、いつもと同じ。
私的なことだけを。
続けるかは気分です。