【番外編】第七話 歴史教師
今回はコメディー回です。
◇
これはとある高校でのこと。
「央宮。じゃあ、奈良から平安にかけて遷都した京全部言ってみろ。」
歴史の講義中。男性教師は、唐突に央宮を指した。
「えっ....僕ですか」
「そうだ。わからないんなら良いんだぞ」
「蓮のやつ可哀想に...」「さて、今日は蓮くんか」
同情の目で見る者もいれば、これは見ものだと言わんばかりに楽しそうにしている者もいる。
この教師は央宮達の通う、啓稜大学附属高等学校の名物教師、長谷諒。国立名門大学で歴史を専攻していたとかで、それに関してはどこぞの大学教授にも引けを取らないとかなんとか。
偶に自己顕示欲もあらわに生徒を指して答えられないような問題を出すため、あまり評判は良くない。
「どうした央宮。分からないなら良いぞ」
「先生、確認なんですが」
「おう。ヒントは出さないからな」
「奈良からでいいんですね?飛鳥時代も遷都をしていたはずですけど」
「飛鳥だと...いやっなんでもない。言えるところから言ってみろ」
内心びっくりした長谷だったが、(答えられるはずはない)と自分を落ち着かせた。
一方、同じクラスの枢院と近衛は、ほぼ同時に溜息をついてしまった。
三人は奇しくも席が近いこともあって、
「あの教師、本当学ばないよね。」
「この間俺らに返り討ちにあったの忘れたのかね」
「ね」
なんて会話まで。
そんなことはつゆ知らず。
「先生やめましょうよ。また恥かきますよ。」
同じことを言ってしまう央宮クン。
「そうやって答えないのかい?」
学ばない男は、解答を急かす。
「........」
「やっぱり答えられないじゃないか。良いかみんな、正解は」
「飛鳥浄御原宮・藤原京・平城京・恭仁京・難波京・紫香楽宮・平安京、でいいですかね?」
「「「おおーーーーーーー!!」」」
クラスで歓声が起こる。
「......」
一方の長谷はタジタジ。
「よ、よし!座れ。」
「災難だったね、蓮」
「そうでもないさ。自分の先祖のことを語るだけでいいんだから、楽なもんよ」
そう。この3人は幻術の名門。幻術の発祥が鎌倉とはいえ、家としての歴史は古い。
央宮たちにとっては大学で学ぶようなことなど最早常識レベル。イメージ的には、昔話をするようなものなのである。
あれから、3日連続自慢の問題を看破されたのが相当効いたのか。
長谷が問題を出すことはなくなった。