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第五話 かつての仲間

裏でボレロ聞きながら編集した回です(笑)

(諸事情あり)


上階から激しい物音がし始めた。


「上でドタドタいい始めたな....バレたか」


「当たり前ですよ善田さん。あんな派手に扉吹っ飛ばすんだから」


「仕方ないだろう。律儀に開けても奴らにとってのいい的になるだけだ。それより、どうするか考えよう」


枢院と善田は一階を制圧。しゃがんで作戦をねっている。


「上はどうやら退避の準備に入っているようだな....どう思う、枢院君」


「陽動作戦、といったところでしょうか」


「同意見だ。外へ逃げる素振りを見せ、我々が逃すまいと建物外へ追うのを誘おうというのだろう。」


「”だろう”って、飛車は使えないんですか?」


「上階に幻術が通らないんだ。橙結界らしきものがある。恐らく3階の敵、結界操術を会得している。厄介だな。」



結界操術(けっかいそうじゅつ)。幻術の一種であり、陽炎や碧水などとは違うジャンルのもの。


主に5種類。(あか)(あお)(くろ)(とう)(ばく)。一部の幻術士にしかその存在すら知られておらず、使える者もかなり稀有である。



「結界操術を扱えるということは、元幻術士であることは間違いないだろう。こりゃあまずい。こちらの得手不得手全部バレている。」


「これで迂闊に攻められなくなりましたね....どうしたものか」


その時、頭に直接響くような声が聞こえた。


『君たちにわざわざ来て貰う必要はないんだぞ。』



「何ッ」


「枢院君、緊急回避体制(第5マニュアル)!自衛だけに専念しろ!」



『さあ、どれだけ耐えられるかな?』



「善田さん!下だ!」


「分かっている!お前は自分に集中しろと言っただろうが!」



『余所見をする暇があるのか?少年よ』



「枢院君!左だ!!」


枢院の左からはもう真紅に染まった巨大な手が迫っている。完全に不意を突かれた枢院は動くことができない。


「くそっ!仕方がない、今使いたくなかったが」



「砂楼術奥義・梁山泊(りょうざんぱく)!」


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そこは湖畔だった。自然豊かな草原。遠くにそびえる山々。


「何が起こった....のだ」


元”幻術士”だった男は思わず呟いた。


「俺の自念結界(フィールド)だ。お前は今、俺の精神によって開かれた結界の中にいる。」


善田はどこからか”男”の前に姿を現した。


「貴様はいつも私の邪魔をするな、善田よ。」


”男”は、さも恨めしそうに言った。


「俺だって好きで邪魔をしていたんじゃない。お前の任務に当たる姿にせよ、昇格するための姿にせよ、お前のやり方一つ一つがあまりにも姑息なもんで、俺の幻術士としてのプライドに障ったんだよ。」


「理由なんかどうでもいい。お前は私にとって邪魔。その事実だけで十分だ。」


その時、ふと善田は違和感を感じた。


「おい....事務員はどうした。陽動をしていたやつらは、どうした」


”男”はニタリと笑った。


「陽動?ああ、確かにそうと思われてもおかしくないか。むしろそう思ってくれてありがたいかもなぁ」


嫌な予感がした。

「おい。質問に答えろ」


「死んだよ。」


”男”は軽く言ってのけた。

彼は続ける。


「最後だし教えてやろう。あれは陽動なんかじゃない。お前らが入ってきたのを知って、下に逃げようと暴れだしたんだよ。だから全員殺してやった。」


「.......何だって..」

今善田を襲っているのは驚きでも悲しみでもない。


「貴様は....何ということだ」


憎しみ。それは目の前の”男”だけに向けられたものではない。自責の念もあった。


「優秀な奴らだったんだがなぁ。残念な限りだ」


”男”は歯が浮くようなことを本当に軽々しく言う。


「薄々気付いていたよ。霊術師に攻撃を受けてからのこの支部の動きがあまりにも速すぎて不自然だったからだ。大方、本部から俺が直行していることを聞いて、他の術士が参加できないタイミングで俺らを消そうと、本部に偽の情報を送ったんだろう。しかし、まさかお前が自分の仲間を売るとは思わなかったよ。そこまでクズだったとはね」


善田の話に”男”は少し怯んだ。図星のようだ。


「今のうちに好きなだけ喋らせてやろう。数分後にはその声も聞けなくなるからな。」


”男”はさも愉快そうにニヤニヤとした目つきで善田を見た。


「ほう。お前が死ぬからか?」


善田も皮肉で返す。


呆れたように”男”は話を変えた。


「私は霊術師たちを誇りに思うよ。最新の機器が揃っている。幻術なんかよりも非常に科学的だ」


「フッ笑わせんなや。一体それのどの辺りが霊術なんだよ。あとお前、忘れてないか?ここは俺のフィールド。位置的優位は俺だ。」


「分かっているさ。逆にそれくらいのハンデをくれてやらないと、貴様があまりにも可哀想だ。」


「随分と舐めたこと言ってくれるじゃねえか。」


ひしひしとその怒りを表しながら、善田は言った。


「仲間の仇はとらせてもらう。”元”神奈川支部総監。いや、牧原敬二!」



人物簿


牧原(まきはら)敬二(けいじ)

無派幻術士。”元”神奈川支部総監

支部の者に慕われていたが、実はとんだ小心者で、総監の地位も裏で小細工や工作をして得られたもの。

善田にその心の弱さを見抜かれていて、表向きではフレンドリーに接しながらも、日々敵愾心を覚えていた。

霊術派に懐柔されて今に至る。


用語簿


術力

幻術を発現させるための力。万人が例外なく持ち、空間やものが保持していることもある。


結界操術(5元術)

陽炎や碧水などの陽陰術と対をなす物。

元となる5元術に5種類あり、それぞれに特性がある。

派生が多く存在する。

・朱

基本となるもの。身体に密着する形で纏う。身体能力向上の効果がある。身体につく形で纏うため、術力の供給が自動で行われ長持ちする。


・靑

朱と同様だが、効果が装甲強化。同様に長持ちする。


・黑

朱靑を足して二で割った効果。タイプの違う2つの効果を共存させるため供給が安定せず、上の2つと比べて長持ちしないのが欠点。


・橙

対象物が人ではなく、ものや空間。幻術の干渉を制限する。対外術なので術力を()()()()供給し続けなければならず、レベルとしては高度。


・莫

結界操術の5元術のなかで唯一攻撃性能を持つ。掛けられた部分から例外なく術力を奪う。



奥義

読んで字の如し。定義としては、「その幻術士の全術力の殆どを発動に要する切り札となる術」


自念結界(フィールド)

自分の精神を基として創る結界。その強さは術力よりも精神力に依存し、その特性は多種多様。

善田の場合は「重力以外のすべての物理法則を無視する世界」を創り出す。

また、法則を善田が作り出して追加することも可能。但し法則が不完全だと自壊(バグ)が起こり結界に亀裂が生じる。

次回いよいよ決戦です。

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