第二話 爺さん、町に出る
タタタタタタ・・・・・スタッ、ザザザザ、、、、
ここは仙人岳麓の森、4年前に引退してからこの森と共に生活をしてきた
そんな森を俺は今、疾走し、抜けようとしていた
4年間、川の場所、岩の位置、地形、
ありとあらゆる事を知り慣れ親しんできた
少し惜しい気もするが、しょうがない
森を抜けたら、麓の村だから、そこからは馬車だな
金は、、まあ全財産は、入ってはいるが、
こんな額じゃこんな小さな村の両替所に行って変えてもらうことは難しいだろうな
持ってる紙幣は、、百万ラム5枚、一千万ラム4枚、一億ラム10枚、
んー、この町じゃどれも両替が難しい金ばっかだな、どうしたもんか・・・
隠居生活じゃ、自給自足だったから金は現役の貯金がそのまま残ってるんだ、、、
街まで歩いてってもいいけど、腰に来るんだよ・・・・
スッ
おっと。そうこう言ってたらもう村の前まで来た
んーーー、、、そういや、俺がまだ騎士団に入りたての頃
「はぁ〜どうしようか・・・」
「君ねぇ、もらった給料その日のうちに酒代に注ぎ込むなんて、阿呆のする事だよ?」
「ああ、だからこうして悩んでんだろ?」
「ま、まあ、最悪、ギルドで仕事もらうしかないな」
「え!?、嘘だろ。。勘弁してくれよあんな薄汚い奴らと休日返上で
するなんて、、、」
「まぁ、昨夜の自分を呪うんだね、それじゃ」
「え、ちょ。仕事付き合ってくれよ〜」
「明日から僕は出張なんだ残念だけど」
とかなんとか言う話し合いを聞いたか
ギルド、、、、まあ藁にも縋りたいところだからな
試しに行ってみるか。
ガラン。。。
重厚な扉を開き、カウンターの受付嬢へとまっすぐ向かっていった
流石に4年も引退生活をしたんだ
髪型も短髪から長髪に変わったし元剣聖であることはバレないだろう
カウンターの前で受付嬢に話しかけようとするが・・・
え!?まって、可愛い!!
いま村の受付嬢でもこんなにレベル高いか!?
俺の故郷の町の受付嬢なんて
3丁目の八百屋の
マキさんが仕事の片手間にやってたくらいだぜ?
いや確かに、地方自治体には
学歴の高い女性は就職することは珍しくもねーが
それはあくまで王都郊外とか下町とかの話であって
ここ、ど田舎だぜ?
やばい、緊張してきたな、声ちゃんと出るだろうか、目、大丈夫?
不審者みたいになってない?息も心配だ、、
「あの、すみません」
恐る恐る声をかけてみた
「はい、今回はどのようなご用件でしょうか」
ダ、ダメだ緊張して息が苦しい・・・
ハァ、ハァ、ハァ
これではまるで変態ではないか
「あの、大丈夫です、、、か?真っ青ですけど・・・」
受付嬢は心配そうに俺を見つめていた
どうやら年老いた人間が息を荒げると変態ではなく
普通に体調の優れない人に映るらしい。
よかったと安堵すべき場面か否かはさておき
彼女の一言で動悸がおさまった事は紛れもない事実だ
「ああ、ありがとうな、実は、仕事を探していてね」
「え!?仕事ですか?今、だって、、、、
体調がよろしくないのでは?」
「いやぁ、大丈夫、大丈夫、
ちょっと動悸がしただけだから」
「は、はぁ、あまり無理なさらないでくださいね」
「ああ、もちろんですとも。
それで、ここは登録がなくとも仕事ができますかな?」
「ええ、できます。ただし、
登録の方は報酬の中から5%
未登録の方は25%をギルドの仲介料として
いただく仕組みになってますので
あらかじめご了承下さい」
「はいはい、それで?どんなのがある?」
「ああ、ここはボード制を採用してまして、
クエストボードに言っていただければ
好きなものを受けられます」
「はい、どうもね」
よし、、
この歳になるまでほとんど女性と話す機会なんてなかった
64歳童貞から考えればとてつもない進歩!!!
さて、クエスト、、、か、
剣聖の時も、ちょいちょい撃退の際、冒険者と仕事をしたが、
自分がまさかその立場になるとは
実際冒険者ってのは俺が出会った限り、金に忠実なので
下手なミスはやらかさないし、
なんなら手柄目当てに組織でお互い足を引っ張り合う
うちの騎士団の連中なんかより
よっぽど人当たりが良く、社交的だと思っている
ただ、依頼は多様さを極めるから討伐系以外何をしてんのかイマイチ
わからんと言うのが一般常識だろう
さて、一通りのクエストを見返すが、、、
大体俺が今必要なのって1万ラムくらいなんだが、
1日くらいは使いそうだな。。
え?、そもそも金なんて払わず
馬車の護衛にでもなっていけばいいじゃないかって?
おいおい、勘弁してくれよ護衛は到着に
2日かからなけれりゃ徹夜なんだ。
現役時代俺が通算何度徹夜をしてきたか、
歳食ってただでさえ不眠症だってのに
これ以上睡眠削ってたまるか。
(誰に喋ってるんだ俺、とうとう孤独の末期症状かもな)
『ゴブリン60匹の討伐』
まぁ、こんな感じの難易度がベストかな、、
「おぅいすいません、これー、お願いします」
「ええ?こ、これですか?
いやあの、あまりお勧めできませんが・・・」
「はい?」
「わかんねぇのかよジジイw、
てめえには無理って言ってんだよ!!」
バサッ
俺の致し方合点がいかない様子に
横槍を入れる形で若い男が依頼書を取った。
身長は180センチ程度だろうか、
身長172の俺からみるとそいつはなかなか大柄だろう
「ああ〜ご忠告ありがとうございますね、
いやまぁ
死んだら死んだで骨でも
埋めてくださればそれでいいんですがね、ガハハハハ!!」
ここぞとばかり豪快に笑って
冗談めかしてさっさと受付を済ませよう
「ああ?、いいか、ここはなぁ、俺の島なんだよ!!
俺がこのクエストの手本を見せてやる、ついてこい。選択権はねぇ
「いいよな?受付のねえちゃん?」
ギロリと睨みを効かせると
彼女は怯えた様子で答える
「は、はい、もっ、、、もちろんでございます」
最後に俺を睨みつけると彼はそのクエストを
自分名義で俺と9対1で報酬の折半の
条件で受けてしまった。もちろん報酬は俺1の彼9
まあ別に依頼の報酬自体、10万ラムなので、
運賃稼ぐにはなんら差し支えない
それに、現役の冒険者が未経験の俺に
わざわざ手本を見せてくれると言うのだ
業界の知識に疎い俺にとっちゃ、
情報をもらう手間が省けて一石二鳥と言えよう。
「オラ!、いくぞジジイ!!」
バタン!!
ギルドの門を勢いよく開けると彼はそのまま通りに出た
世話になったのだからと俺はペコりと受付に向かって頭を下げると
彼女たちはとても気の毒そうな顔をしていた。
私の年齢とクエスト内容によほどの不安があるのだろう
昨今のギルドは老人にも優しい。
「オイ!遅いぞジジイ!!!」
そんなことを考えていると彼の声がするので、
走って彼について行くことにした
ご購読ありがとございます
よければブックマークと評価の方していただければ、幸いです
作者のやる気に繋がります