町一番のマザコンチンピラ
「ぷはー!アリーネちゃ~んおか~り」
空になったエールジョッキを片手に上機嫌の男。
テーブル横の武器立てには使い込まれた古びた槍。
身に付けている防具も使い込まれた古びた軽鎧。
年頃は成人したてで若いがかなりの酒好きのようだ。
何せまだ朝食を食べている冒険者達がいると言うのにこの若者はカリカリホクホクに上がったアサラ芋の油上げをツマミに既に上機嫌に出来上がっている。
「もう!フィルさんこの前の依頼報酬金また無くなっちゃいますよ!」
「い~の、い~の!報酬金は天からの贈り物ってねぇ。な~?冒険者は報酬金はパーッと呑まないとなー?」
「そーいってかっつかっつの文無しになり掛けたら俺達にたかるんだろう?フィルー!」
「オー!良く解ってんじゃねェか~。つうわけでいい話無い?」
「あー、フォレスト・ボアが結構な数が畑まで出てきているらしいな」
「へー、ボアが森の外にまで?」
「ああ、もうすぐ冬季だろう?冬ごもり準備じゃあねぇのか?薬草集めの新人達が追い立てられて何人か怪我したらしい。」
「マジか。あー、でももうそんな時期かー。早いなー!高値の付く毛皮と肉を目当てに依頼でも見に行ってみるか~ゴクゴク、ぷはー!」
「フィル~たまには、冒険者ギルドを見に言ってみろよ?ギルマスがたゆんたゆんさせて待ってるかも知れねえぞ?」
「「「ガハハハハハハ」」」
「「「ギルマスはたゆんたゆんっつうかボヨンボヨンだろういろんな所がよ?」」」
「「「ちげーねぇー!ガハハハハハハ」」」
「えーと、リールフとダリッシュとカルーナがボヨンボヨンって言ったのをギルマスに俺から言っとくな!因みに母ちゃんと中々会えない俺はギルマスは結構好みの女だから」
「チョッ!不味いぞ!」「チンピラフィルの口を塞げ!」「マザコンフィルに今日こそは勝つぞ!!」
三人の冒険者が腕まくりをし指の関節の音を鳴らして威嚇を始める。
若い男性の冒険者も立ち上がり肩を回し体をほぐしている。
「ゴクゴクぷはー!オーよ。かかって来い~!俺が勝ったら皆の飲むエールと芋の油上げ三人前づつ全部の席にお前らの奢りな!ゴクゴクあとマザコン呼びしてくれたカルーナには俺から特別にミルク割りエールを五杯奢ってヤル。遠慮は要らねぇからな?一滴残らず飲み干す迄何処にも行かせねェからな!ゴクゴクぷはー!」
「ヒッ!フィル!悪かった!ミルク割りエールは勘弁してくれ!」
「ならぬ。ゴクゴクぷはー!我れは今日も勘弁せぬ。ストローで飲み干すのだ。ゴクゴクこれは神の啓示」
「ストローはストローだけは許してくれ~!」
「許さぬ許されぬ。ゴクゴク我の神の鉄槌を甘んじて受けよゴクゴクぷはー!」
「「「オイ!!何処の誰が神様だ!」」」
「ゴクゴクぷはー!帝国の軍神と唱われた我れだ!」
「「「ヒッ!ヤバイぞ!フィルの目が本気だ!完全に出来上がってる~!」」」
「ガハハハハハハやれやれ!本気の軍神フィルに50000ギルだ!」
「あたしもフィルに50000ギル~!」
「俺も50000、フィルに!」
「俺は50000、フィルに!」
「アタイも50000、フィルに!」
「賭けにならねぇ!ガハハハハハハハ」
「ほらほら、胸上げてアリーネもっとアピールしないとフィルちゃんギルマスに取られちゃうよ!」
「そうだぞ?冒険者なんて危険な仕事やってる若い奴らはなちょっと好みの女だったらホイホイついていくからな?アリーネ頑張れ」
「もう!おじさん!おばさん!」