初めての出会い
―病院の屋上に佇む少女―
オレは、その少女に見惚れていた…
黒くて長い髪
今まで見たことがないくらい、きれいだった。
夕日にあたると、こんなに髪の毛ってキラキラしてるのか…
腰のあたりまで伸びた黒髪に、患者服からのぞかせる白い肌。
その少女は、どこか遠くを見ていた。
その姿を見ていると
時を過ぎるのを忘れてしまう感覚に
とらわれた。
「キミ。」
振り返らずに話す少女に、正直驚いた。
「え?オレ?」
思わず自分を指さした。
少女はゆっくりと振り返った。
美人だった。
小顔のわりに大きな瞳。外で遊んだことがないみたいな白い肌。
それから、ゆっくりと口を開いた。
「キミ以外に誰がいるの?」
少女は、不思議そうに、そしておもしろそうにクスクス笑った。
「え…」
周りを見回しても、誰もいなかった。
「ねぇ、キミ。」
「な…なんですか?」
少女の独特の雰囲気にのみこまれて、緊張の糸が張り巡らされている気分だった。
「緊張してるの?」
「いや…その…」
また、少女がクスクスと笑いだした。
「キミ、おもしろい。友達になろっか。」
オレの方に、ゆっくり、一歩一歩近づく少女。
オレの前にたどりつくと、スッと手を差し出してきた。
「じゃあ、キミ、私とお友達になって下さい。」
オレはその手をとった。
「よ、喜んで(?)。」
なんていいか分からずに、そう答えると
少女はニコっとほほ笑んだ。
オレはそんな少女に心を奪われた気がした。
でも、しばらくその状態でいると、
少女がおなかを抱えて笑いだした。
「///っぷ。アハハハハ、もー、無理っ!」
「な、何?」
意味が分からず、呆然とその姿を見ていると
少女がこっちを見て
「だって、喜んで、だって。おっかしー。」
喜んでの表情と仕草までマネしてから、自分に大爆笑してるみたいだった。
さっきとあまりに人が違う少女。
あまりに大爆笑している少女を見ていたら、緊張なんてものはどこかへいって、かわりに、ムカついてきた…
「なんなんだよ。」
ぼそっと呟いたつもりが、少女はしっかりと聞き取っていたようだった。
「なんだって〜?聞こえないよ〜。キミ、騙されやすいでしょ?」
そう言ってから、また思い出したように笑いだした。
だんだん、だんだんと怒りのメーターが上がってきて
プチッとなにかの音がした。
「はぁ!?あんた見た目と性格違いすぎだろ!」
そういうと、ピタ、と動きを止めて、静かにこっちを見た。
「そう、かな?」
少しさびしげな、そんな瞳をしている気がした。
急に大人しくなるから、つい、焦って
「え…と…」
怒りが消えて思わず大人しくなってしまった。
それから
「なーんちゃってね。ホント、騙されやすいね、キミ。」
と言って、少女は舌をちょろっと出した。
「はぃ?」
怒る気持ちよりも、呆れた気持ちがまさった…
近くにあるベンチに座ると
「えへへ。」
と言ってオレの隣に座って、にこにこしてこっちを見てる少女。
「じゃあ、友達ってことでよろしく!」
少女は、バシッとオレの背中を叩いて、中に入って行った。
と思ったら、ひょっこり戻ってきた。
「そういえば、キミ、名前は?」
普通は名前を知ってから友達になるもんだ…
「オレは神崎 慎也あんたは?」
「わたしは咲 日澄かすみは、日曜日の日に、透きとおるって漢字。」
お互いに自己紹介をしてから
「「似合わない」」
ハモッた…
「しんって慎むって漢字?絶対慎まない性格してるよ。慎くん。」
ニコニコしてるわりにはけっこうひどいこと言ってる気がする…
「オレ慎くんじゃないし。」
正直、恥ずかしいだろ。
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
自分のネーミングセンスを否定されて怒っているようだ。
「さぁ?」
「じゃあ、やっくん。」
思いついたように、笑顔でこっちを見る。
「オレ、不良?」
一回ションボリしたと思ったら
「じゃあ、慎ちゃん。」
また、笑顔でこっちを見る。
「ぐぇ。」
正直、日澄の反応おもしー★☆
「ぐぇってなによ〜。じゃあ、慎也さま☆」
一瞬ドキッとしたけど、危ない危ない
「お前には似合わないな。」
「お前じゃないし!名前で呼んでよ。」
ブスッとしてるなぁ。
「まぁまぁ。とりあえず、そういうかわいい感じで呼ぶのは、日澄には似合わないって。」
「あなた少々失礼ですわね。さりげなく呼び捨てしないでもらえるかしら?」
また急に豹変してるし。
「何様になったつもりだよ。」
「お姫様?」
自分でお姫様とかいうか?
「そこまでおしとやかじゃないだろ。」
「失礼〜。」
むす〜っとこっちを睨んでくる日澄。ックク、おもし。
「も〜、慎也くんのバカ!」
「それでいんじゃね?」
やっとピンと来た気がした
「う〜ん、完っ全に普通の呼び方〜。かわいらしく、慎くん♪とかがよかったなぁ。」
ちょうど慎くん♪のところで首をかしげて両手を胸の前で組んだ日澄をみて、ちょっとだけ惹かれたけど、危ない危ない。
「普通で何が悪いんだよ。てか、それって、完全に外キャラだよな。」
うっしゃ、言った
「ううん、全然。本当の私だよ。私は知らないけどね。」
少しだけさびしそうな顔にドキッとした。
「知らない?なんで?」
自分のことを知らないなんて妙だ。
「知らないものは知らないもーん。」
絶対に知らない、と言い張りそうだな。日澄って絶対頑固だ!!絶対!!
「そですか。そういえば、日澄はなんでこの病院にいるんだ?」
さっきから何気に親しくしてる気がするけど、お互いのこと何にも知らない気がする…
「んとねぇ、記憶喪失??みたいな?」
あごに人差し指をあてて首をかしげる日澄。
「記憶喪失??みたいな?じゃわかんねっての。」
「よくわかんないよ。なんか、重いらしくてねぇ。歩き方も知らなかったよ。」
歩き方も知らなかった?それは、ホントに重いな。
「じゃ、なんで名前覚えてんだよ。」
「自分でつけたんだよ〜?」
自分でつけないだろ普通。
「…似合わない理由が分かった気がする。」
「失礼〜。慎也くん失礼が多いよ!」
多いよ!って言って指をさす日澄。犯人は、お前だ!みたいな感じで言われてもな。探偵のつもりかよ…
「まだ三回目だろ。」
「もう三回目だってば!」
一生懸命に否定する日澄。
「元気だけはあんのな。記憶なくして怖くないのか?」
オレだったら、んな、記憶なくして病院内ふらふら動けねーだろうな。
「別に〜。知らないことが多いだけだし。」
足元にいるアリの方に興味がいったみたいで、じーっとそっちを見てる。
「へぇ。ところで、ホントの名前はなんていうんだ?」
「さぁ?」
キョトン、とした顔でこっち見てるし。
「覚えてないのかよっ。」
「いやね、記憶力はいいんだよ?たいてい、一回くらい見れば覚えるしさ。でもね、名前だけは、だめなんだよね〜。」
だめなんだよね〜って渋い顔する所じゃないだろっ
「そーゆーものか?」
「そーゆーものなのっっ。」
真剣な顔して言うなっての。
「なぁ、俺達ってさっきあったばっかじゃねぇの?まだ、そんな時間たってなくね?」
「そーだねぇ。」
そんなこと気にしないよ、とでもいうかのような日澄。考える人のポーズをとってる。
「そのわりにはちょっと失礼じゃね?」
「じゃあ、今更他人行儀にする?」
笑顔で、それくらい余裕って顔してる日澄。
オレにはちょっときついかな。
「いやいいけど…」
「なーんだっ。残念。慎也くんの他人行儀な敬語見たかったなぁ。」
にんまりと全然悔しそうじゃない顔でこっちを見る日澄。
ちょっと顔の温度上がってきたかも。
「はあ?ざけんなって。」
「照れるな照れるな。」
「照れてねーし。」
オレが顔をそらすと、
「かーわいい。」
ッて言ってオレの頭をなでる日澄。
「かわいくねーしっ!ってか、日澄の方がなでられるべきだろ!」
オレが振り返ると、思ったより小さい日澄がいた。
「なでないの?」
照れも何もなさそうにこっちをみる日澄。
「ざーんねん。」
ニコニコと楽しそうに笑ってる。
オレがその時思ったのは、絶対日澄は変わってる。
「ところで、慎也くんはなんでこの病院にいるの?」
「大したことはないんだけどな。ただの角膜炎。ちょっと右目だけあんまり見えないんだ。」
オレがそういうと日澄は、右目を眺めながら言った。
「目の色違うね〜。不思議〜。」
「いや、違わないと思うんだけど。」
オレがちょっとそういうと。わかっていたかのように
「じゃ、変えようよ。」
にっこりと笑顔になる日澄。
「はぃ?」
「いやー、もうさ!学校行かない学生だから、つまりは不良なわけでしょ!」
いや、学校行かないと不良なのか??
「いや、べつに不良でもなくね?」
「いいの!とにかく、カラコンいれてみたかったの!!」
そっちが完全に本音だよな…
「慎也くんは、けっこう茶髪っぽいから、赤にしよう!」
日澄は楽しそうだな。ってか、勝手にオレの色決められてるし。
「なんで赤?」
「夕日の色?」
疑問形で答えてるし… ってか夕日はオレンジだろ。
「それはオレンジ。」
「いいじゃん!赤だもん!」
夕日を指さして言う日澄。
「じゃ、日澄は青な。」
「なんで?」
「赤と来たら青だろ。」
「単純〜。」
ブーイングするかのように口をとがらせる日澄。
「うるせー。」
ホントは、日澄に似合いそうだからだけどな。
日澄の黒髪には、青が似合うと思う
「ね、じゃ、いつ買いにいこっか。」
結局、色よりもカラコン買うっていう事実の方が大切みたいだな。
「なぁ、日澄って何歳?」
「ん〜とあたしは、15歳?」
うおっ。以外に年上?
「あ、んじゃオレ年下だな。14。」
「あれぇ?中2?」
まさかぁ。って感じの顔してる日澄。
「いや、中3。」
「どぅいぅこと?」
首を傾げてる。
「いや、だって今、秋じゃん?オレ誕生日12月。」
「何日?何日?」
わくわくって感じだな。こいつ好奇心旺盛だぜ、絶対。
「繰り返さなくても教えるって。26。」
「へぇ、じゃあじゃあ、その日にしよっ。」
餌ねだってる犬みてぇ。ヤバい、うけるわ。
「そだな。日澄は?」
そう言った途端、マジ顔になって考え出した…
そうか、コイツのことは禁句か?
「さぁ?いつでしょ?」
のんきに両手のひらを上に向けて、わかりませーんのポーズをとる日澄。
「あ、じゃ日澄誕生日わかんねーのに15歳なのか?」
「いやいや、中学3年ってことは聞いたよ。大事な受験生だからねぇ。」
のほほんとしてるけど、オレらって中3なわけだから、勉強しなくちゃやばくね?
「じゃ、やっぱ誕生日わかんねーじゃん。」
「いやいや、誕生日は決めまして。」
なんでも自分で決めんな、コイツ。
「5月。」
5月って早くね?
「えー、やっぱオレと誕生日一緒にしねぇ?」
オレ意外と大胆なこと言ってる??
「んー、じゃあいいよ。」
ちょっと迷ってからうなずいた。
「じゃ、そんときな、カラコン。」
「うん、じゃあ、そろそろ病室戻るね。」
そう言って、日澄は笑顔で退散していった。
「オレももどるかな。」
オレも、病室に戻ることにした。
そのころには、夕日はすっかり落ちて、屋上は肌寒くなっていた。
えぇと、なぜにカラコン??ってな感じですねw
とりあえず、買いに行くなら何でもよかったんですけど。
一応、主人公は角膜炎なんで日澄のキャラ的に。
感想とか、聞かせてもらえると嬉しいです。
できれば、読みにくかった所とか、想像しにくいところとか
バシバシ教えてホシイデス。
どうぞ、サボり癖ありますけど良かったら読んでってください。