脱出(志真サイド)
信じたくない。私の幼馴染みが、私を庇って撃たれた。
あれから数日たったのに、目を覚ます気配は無い。
私は、事件の日を思い出してた。
二つの銃声がした途端に、ドサッと私に何かが乗っかってきた。
重いなぁと場違いな事を考えていたけど、すぐに消えた。
「・・・うそ」
今見た物を忘れさせて・・・。
「和馬!!」
真綾も私と同じくしてる。まさか、空陽も撃たれたの?
なんで、そんな酷い事出来るの?
「カズマ・・・」
「ハヅキ・・・泣かないでください」
泣いてないよ。これは、ほらっ心の汗だよ!!しょっぱいもん!!
「ばーか・・・目から・・・出るんですか?・・・」
喋るな・・・。傷が酷くなる。
「・・・あっちも・・・言ってますよね?」
なにを・・・?
真綾の方を見ると、空陽が真綾の頬を触ってる。
「・・・ハァ・・・ハァ・・・・聞け・・・」
いつもの敬語じゃない。余裕が無いんだ。
私は、頷くしか出来なかった。
「僕は・・・・葉月・・・が・・・・好きだ」
え?・・・嘘だ。あんなに苛めて。分った、またからかってるんでしょ?
「葉月・・・」
和馬が何か言おうとしたら、真綾が動いた。
銃を持ってんだよ!?危ないよ!!
真綾の目は、朦朧としていた。
まばたきをした途端に、真綾は消えた。
そして、気がついた時には、男は倒れていた。
真綾は倒れた。私は、心配で行こうとしたけど、先に電話しなくてはと思い、小屋を出た。
「あ・・・」
「君も捕まってたの?」
女の子がいた。私達と同じく捕まってたらしい。
「携帯ある?私の落としちゃって」
「う、うん」
私は、携帯を借りて警察と救急車を呼んだ。
数分後に来た。私は案内した。
空陽と和馬は、救急車に運ばれた。
その様子を見ていた真綾は呆然としてた。
「タクシーも呼んだから病院行こう?」
私の言葉に、返事すらしなかった。
たぶん、耳に入ってないんだろう。
真綾の肩を支えてタクシーに乗り込んだ。
真綾に、話を聞かれた。あの男を倒した出来事を・・・。
正直、あの時は私も焦ってたし、速過ぎて見えなかった。
あの屋敷にいたのは数名だったらしいって言ったら・・・。
「あの・・・嘘つきめ」
「うん・・・誰も怪我が無くて良かったね」
本当に怪我人が、二人だけで良かった。救急隊員に聞いたら、大丈夫って言ってくれたから良かった。
「あの男ね・・・精神異常者だったんだって・・・自分は神だ・・・この世界を救うのは自分だって・・・」
「そんな言葉で片付けられてもね」
うん。なにが神よ・・・。心に負った怪我は癒されない。
許せない。和馬に怪我を負わせた事に・・・。
いつの間にか病院に着いた。
私達は降りて、病室を聞いて行った。
空陽の病室は、隣らしい。
私は、ソッと部屋に入った。
左腕にある銃の後が、生々しくない、心が苦しい。
何を言ってやれば良いのかな・・・。
「っ・・・和馬・・・私ね・・・・・・・・・・小さい頃から守って貰ったよね・・・・高い木に登って降りれなくなった時も・・・犬に追いかけられた時も・・・・・・・・・・そして、今も・・・・」
涙が止まらない。ポタポタと和馬の手に落ちた。
「いつも・・・・この手で・・・・救ってくれた・・・・ドジな私も・・・」
和馬の手を私の頬に触れさせる。
ゾクッとするほど冷たい手に、涙が零れた。
「好きよ・・・和馬・・・・・意地っ張りな・・・貴方も・・・・頑固なところも・・・・いじわるなとこも・・・・大好きです」
私の言葉に和馬の手が、優しく耳に触れた気がした。