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夏霧
少しだけ肌寒い夏の夕暮れ
空から霧が降りてくる
薄ぼんやりと見える森のさざめき
街灯のヒカリを散らし
ゆらゆらと風に舞う白い雨粒が
怪しく僕らを誘っている
遠景は煙に融けて
すっぽりと街を霧が侵せば
亜麻色の髪の乙女が霧の底からやってくる
ひたりひたりと近づく気配
嗚呼 なんと妖しく美しいのか
ひらりひらりと蝶の影
嗚呼 微笑んでいる
誘い出されて近づけば
熔けてしまうだろう彼女の名さえ
ぼくはまだ知らないのだ
(文字数規定対策の空白)