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『コンビニ無双』─コンビニの重課金者になって無双する─  作者: 時雲仁
第三章 暗躍しているつもりは無いのですが
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89話 大きな靴下作戦【前編】

 数日後の夕暮れ、夕食を終えた一同は二階の部屋に集まっていた。


 ここは元正巳の部屋で、今でも時々帰って来てはリフレッシュに使う事のある部屋だ。物置としても使っているので物は多いが、特徴としてはそのくらいだろう。


 学習机の上に乗った段ボール箱を開くと、中に入った靴下(・・)を確認する。


「一、ニ、三……よし、数は問題なさそうだな」


 全部で十四あるのを確認する。


 その一つ一つは全て手作りであって、日中から夜中まで空いた時間に子供達の目を盗んで作った靴下だった。そして手作りなので、当然その出来にも差が出て来る。


「わっ、これ凄い上手です!」

「こっちは苦労したんだろうな」


「ふふ、さては不器用さんですね~」

「そうだな。きっとインシュンのだ」


「となると、こっちはリーナさんでしょうか」

「そうかもな。あいつ無駄に器用だからな」


「こっちも綺麗な出来ですけど……指が六つ?」

「ははは、それはユンファちゃんだろう」


「ふふ、このサイズで六本指だと巨人ですね」

「かもな。そう言えば、古い本に六本指の巨人の伝承が――」


 話しているのは、正巳と共に"実行班"となった二人だ。


 盛り上がるのも良いが、出来れば今は集中して欲しい。


「ほら、ヒトミもジョンも。配る際の分担をするぞ」


 正巳の言葉に頷いた二人だったが、今度はその中身が気になったらしい。


「わぁ、これ私も大好きなチョコレートです!」

「お、それって中々手に入らないヤツか?」


「ですです。人気過ぎて買えないんですよね~」

「はぁ、やっぱりファスの旦那は凄いんだな」


「どんなルートで手に入れてるんですかね」

「今度聞いてみるか」


 覗いているのは、生チョコで有名なお店の限定品だ。前もって許可を取りに来たファスに聞いていた為、その中身を知っていたが……どうやらヒトミでも知っているような人気店だったらしい。


 キャッキャし始めたヒトミに言う。


「これは子供達のだからな、食べちゃ駄目だぞ。それに、こういった仕入れはミヤがしてるんじゃないか? ファスもあまり詳しくなさそうだったし」


 正巳の言葉にハッとした様子で箱を戻したヒトミが、誤魔化すように言う。


「べ、別に一つくらい良いかななんて思ってないですから!」

「ははは、それじゃ白状してるようなもんだぞヒトミちゃん」


「あ、ジョンさんまで意地悪する!」

「いや、俺もジョンも別に、意地悪してる訳じゃないと思うぞ」


 頬を膨らます瞳に苦笑して顔を見合わせると、息を吐いてリセットした。


「はいはい、まぁそんな事は良いんだ。分かってると思うが、これは俺達の重要任務。これまで皆で準備をして来たその大事なプレゼントを、無事に届ける義務があるんだからな」


 少し大げさに言ったものの、皆で準備した大切な物だと言う事は確かだ。


 何せここまでが大変だった。子供達一人一人の好みに合わせたお菓子を考え、それが入る靴下を手作りし、喜んでもらえるよう最良なお菓子を取り寄せて貰った。


 それぞれの好みについては、レフィーナとフォンファ、それにグラハムに協力して貰った。リストアップしたお菓子の大半を子供達は愚か、レフィーナも食べた事がないと言う事で大変だったのだ。


 そして、それが入る靴下。


 何も、初めから手作りしようと思った訳ではなかった。探しても丁度良いサイズの物が見つからなかった為、仕方なく手作りする事になったのだ。


 レフィーナの前でかっこつけようとしたインシュンが、俺に任せろと言い出したのだが……これが中々不器用で大変だった。本人は、電子工作ならあっと言う間とか何とか言っていたが。


 まぁ、そんなこんなで用意できた大きな靴下に、調達して来たお菓子を詰め込んだのが目の前にあるコレだ。……そう、軽い気持ちで決めたプレゼント計画だったが、これが中々意外にやる事が多くて大変だったのだ。


 思い出して苦笑するも、それにヒトミが反応した。


「責任重大ですね。でも絶対に成功させましょう!」


 気合の入るヒトミにジョンが笑う。


「ははは、そんなに力入ってるとフラグが立っちゃうぞ」

「おいおいやめてくれジョン。只でさえヒトミは不幸体質なのに、不幸を呼ぶような事は――」


「ちょっと、不幸体質って何ですー!!」


 ムキーっとなって怒るヒトミに頬を緩ませる。


「悪い悪い、悪かったよ。それより通信が入ったら作戦開始だからな、今の内きちんと情報共有しておくぞ。先ずは其々の受け持つ子供の確認と、置く時に間違えないようプレゼントの確認だ」


 話の途中でトーンを切り替えると、怒っていたはずのヒトミもハッとして耳を傾け頷いてくる。機嫌が直った訳でも許したわけでも無く、単に戸惑っているだけだろう。


 しかし、これで良いのだ。


 これは、会話にギャップをつくる事で、前の話題を煙に巻くと言う話術。何処かで聞いて覚えていたのだが、ヒトミでなければこう上手く行かなかったかも知れない。


 ヒトミの様子を横目にジョンが笑いをこらえているが、知らない振りして言った。


「それじゃあ、俺とヒトミで五人づつ担当。ジョンには残った四人を頼むな」


 こういったサプライズは、仕掛ける側が楽しむ事が大切だ。少しばかり芝居がけて雰囲気を作ると、それに応えた二人が頷いた。


「はい!」

「了解です」


 頷く二人に靴下の入った箱を渡すと、言った。


「これより"大きな靴下作戦"を開始する!」


あれ?と思った方もいらっしゃるかも知れませんが……内容の関係上、前話のタイトルを変更しました。内容には変更を加えていませんので、悪しからず(>_<)

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