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『コンビニ無双』─コンビニの重課金者になって無双する─  作者: 時雲仁
第三章 暗躍しているつもりは無いのですが
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88話 ドローン宅配

 どうやら子供達は、フォンファとの間にある"約束"をしていたらしい。


「つまり"捕まえられたらご褒美を"って事か?」


「そうそう、いわゆる事例研究(ケーススタディ)の一種だね。もちろん防犯面では幾つも対策してるけど、子供なんかが興味を持った時の傷つけない(・・・・・)対処も必要だからさ!」


 事例研究(ケーススタディ)とは、現実的に起こる問題の解決に繋がる学習を行い、何か起こった際にその問題を解決するスキルを養う学習法だ。フォンファの説明からして、実践データを取っていたか、機械に学習させていたかの何方かだったのだろう。


 その説明を聞きながら言った。


「でもその辺りのセキュリティは、既に実装済みだったんじゃなかったか?」


 と言うのも、開発の殆どが既に終えていて問題ないと話があったからで、それに伴って先日サービスの開始日を発表していた為だった。


 そのサービスと言うのは、このドローンを使って行うサービスなのだが……。


「もちろんさ!」


 そう言って頷くと、実装済みだと言うセキュリティのアレコレについて説明してくれる。


「ええとね。例えば盗難については、ドローンに組み込まれた追跡機能と映像記録機能がその対策としてあって、もし何かあればそのデータが警察に提供される事になるんだ」


「なるほどな、それが抑止力となる訳か……。でもな、例えばあまりにも件数が多すぎて警察が対処できない。もう無理だってなったらどうするんだ?」


「うん、そういう事もあるかもだよね。でもね、このサービスにおいては警察云々は保険であって、もし警察機構が機能しなくてもそれはそれで構わないんだ。犯人とみられる人物に関しては、こちらの独自データベースに記録されてそれ以降、一切のサービスが利用できなくなるからね!」


 どうやら、中々えぐい事を考えているらしい。


 このドローンを使ったサービスと言うのは"宅配サービス"であって、これは都市開発計画の大きな目玉の内の二つ目でもある。話があれば、サービスの全国展開も考えている訳だが……


 仮にこのドローン宅配が一般化すれば、将来的にはこれがスタンダードとなるだろう。その上で、このサービスを使えなくなると言うのは、中々厳しいペナルティだと思う。


 嬉々として「悪意には制裁をもって反撃をだよ!」と言って、拳を突き上げるフォンファに苦笑するも、このままでは一向に話が進まなそうだった。


「寝たか……」


 ぐずっていたホアンは、泣き疲れたのか寝てしまっている。その様子を覗き込んだフォンファが、ホアンの鼻水を拭いながら頷いた。


「うん、寝てるね」

「起きたら泣くかな?」


「泣くだろうね」

「どうしようか」


 フォンファと二人でそんな事を話していると、それまで黙っていたシュアンが言った。


「おっきな靴下に、たくさんお菓子入ってると嬉しいと思う!」


 両手をめいっぱいに広げて見せ、そんな事を言う。


「しかしクリスマスの時期でもないしな」

「クリスマス? でも、きっと嬉しいし楽しい!」


 目をキラキラさせて言うシュアンだったが、それに同意するように言ったのはリュウアンだった。どうやら、心が折れた所から少しだけ回復したらしい。


「そうだな。確かに俺達はそういう経験が無いからな」

「ええ、そうですね。お恥ずかしながらそれだけの余裕が無くて」


 やって来たのはレフィーナ。ホアンやシュアン、リュウアンを初めとした子供達の育ての親で、元々孤児院を経営していたインシュンの恋人だ。


 ……確認していないが、恐らく恋人と言う事で良いのだろう。


「なるほど、そういう事なら是非やりましょうか」

「良いんですか?」


 膝を付いて顔を近づけるレフィーナに頷くと、ぱぁっとまるで花が咲いた様な笑顔を見せる。その様子を見て、その顔を見れただけでお題は貰ったような物だなと微笑む。しかし――


「ちょっと、見に来てみれば!!」

「レフィーナお前……」


 横を見れば、いつの間に来たのかヒトミとインシュンが居て、こちらを見ている。二人とも夕食の準備をしていた筈だが、準備が出来たのかも知れない。


「年上でちょっと綺麗でお姉さんだからってダメです!」

「そうだな、流石にそれは狙い過ぎなんじゃないか?」


 正巳の前に滑り込んで来るヒトミと、腰に手を当て呆れて見せるインシュン。その表情から、インシュンは悪ふざけしているらしいと分かったが、生憎ヒトミの方はマジだった。


 それをホアンが起きるから止めろと追い払った正巳だったが、一連の様子を見ていたシュアンがそっと膝を付いて覗き込んで来たのには、笑ってしまった。


「お菓子、靴下にたくさん本当?」


 それに「良い子にしてたらな」と返した正巳は、今にも飛び跳ねそうなシュアンに「まだ皆には秘密だぞ」と言っておいた。こういうモノは、サプライズしてこそだろう。


 はっと口を押えたシュアンが、耳元へと口を寄せ小さく言った。


「お兄ちゃんとの秘密?」

「そうだな、二人の秘密だな」


 きっと、この年代の子共にとって、事実がどうか何てどうでも良いのだろう。嬉しそうな様子で顔が緩み始めたシュアンは、その後しばらく上機嫌だった。


 戻って来たヒトミが「夕ご飯で迎えに来たんでした」と言ったのに頷くと、ちょうどホアンが目を(こす)り始めていたのもあって、夕食に向かう事にした。


 食卓に着くと、心なしか賑やかな様子に首を傾げた。


「うん? なんかみんな元気だな……」


 別に悪い事では無いだろう。しかし、普段であれば、少なくとも半分の子供は眠そうにしている筈だ。首を傾げた正巳だったが、それにいつの間に控えていたのかファスが言った。


「ここ最近お邪魔していたお家のご主人が、どうやら体調を崩されたようでして」


 それにそういう事かと頷く。


 ここ最近、子供達はある家にお邪魔して、そこで遊んで貰う事が増えていた。


 きっと、思いっきり遊ばせてもらっているのだろう。子供達は、帰って来るとぐっすりと眠る事が多かった。それが、使うはずの体力が残っている事でこうして元気なままなのだ。


 その家と言うのは、他でもない地主のお爺さんの家だったが……


 挨拶に出向いた際「連れて来い」と言われ、文句でも言われるのかと思っていたら「定期的に連れて来い。ここには子供にとって興味深いものも幾つかあるだろう」と言われた。これが切っ掛けだった。


 後から聞いた話で、お爺さん唯一の後悔が子供に関する事らしいと知り、それ以来お爺さん側に負担にならないよう気を付けつつもお世話になっていたのだ。


「疲れが出たのであれば申し訳ないな」


 そう言った正巳にファスが答える。


「いえ、そう言った事は無いかと。主治医の話では『改善傾向に向かっている』との話でしたし、きっと直ぐに良くなって『早く来い』と催促があるでしょう」


 それに、そうだなと頷いた正巳だったが、まさかその次回が最後になる等とは思いもしなかった。


 この日を境に、子供達がお爺さんの家へと遊びに行く事は無かった。


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