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『コンビニ無双』─コンビニの重課金者になって無双する─  作者: 時雲仁
第一章 色々あってコンビニを始めます
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43話 饅頭喰おう

◇◆ご連絡◇◆

・今話にて第一章が終わりです。あとがきにも書かせて頂きましたが、希望が少ない場合は他作品の執筆に時間を回したいと思います。続きのご希望が有りましたら感想欄をご利用くださいm(_ _)m

 来客対応をしていたファスだったが、それ程時間を置かずに戻って来た。


 少し表情の硬いファスに聞いた。


「どうした?」


 すると、ファスは手に持ったものを差し出しながら言った。


「はい、少々お客様が見えられていた様で、要件をお聞きして来ました」


 渡して来たモノを確認しながら、ファスの話を聞いた。


「いらっしゃったのは、以前正巳様と会われた事のある"林道重光(りんどうしげみつ)"様の代理と言う方でした。その手紙には、少々遠回しに書いてありますが、どうやら掛かっている病の"治療薬"が欲しいという事の様です」


 ……ファスの話を聞きながら手紙を読んでみたが、何故ファスがわざわざ説明をしたのかが、良く分かった。手紙には、こう書いてあった――


『久しいが、元気にしているか。どうやら、かなり評判な店をやっているみたいだが、皆が『何でもある店だ』と言っていた。前もって来てくれた饅頭は美味かった。また一緒に饅頭を喰おう。』


 ――と、まあかなり意味訳にはなるが、このような事が書かれてあった。


「……いや、"饅頭喰おう"で"薬が欲しい"が伝わるかよ」


 思わず突っ込んでいた。


 何にせよ、どうやら正巳が土地を買ったお爺さんは、誰かにコンビニの噂を聞いたらしい。『何でもある店』と言っている事からして、新聞やなんかから情報を得たのかも知れない。


「それで、その薬と言うのはどんな薬なんだ?」


 その薬が市販されているモノであれば、当然扱っている。風邪薬や咳止め、頭痛薬かと思っていた正巳だったが……ファスの話を聞いて言葉を失った。


「はい。その"治療薬"ですが、どうやら海外で研究開発されたばかりの"試験薬"らしいのです。当然認可は取れておらず出回ってもいない、言わば実験段階の試験薬に近いようです」


 想像の斜め上を来た。


 普通では手に入らない薬。それが欲しくてわざわざ手紙を書いて、代理人を立てて求めて来る。恐らくは『何でもある店』と聞いての行動だろうが、それにしても無茶を言う。


 しかし別の視点から見れば、そんな無茶にも縋りたくなるほどの状況だと言うことだ。


 少し胸が締め付けられるのを感じた正巳だったが、考えていてふと思った。(おじいさんが頼むような代理人とはどんな人なんだろうか)あの気難しいお爺さんだ、それと上手くやっていると言うことはかなりできた人なのだろう。


「その代理人はどんなひとだった?」


 それに短く息を吐くファス。この男がこんな風に感情を見せるのは珍しいが、どうやらそれだけの理由があったらしい。その正体を聞いて理解した。


「雑誌の記者でした(・・・)

「……そういう事か」


 断定するという事は、裏が取れているという事だ。


 そして、本題である代理人が記者だったという事についてだが、何故わざわざ記者が仕事外の"代理人"なんぞをしているのか……それは、ひとえに"ネタ探し"に他ならないだろう。


 もしここで正巳が適当な薬をお爺さんに送りでもすれば、炎上のネタとして。ここで断りでもすれば、同じ様に"見捨てた"として格好のネタになる。そうしてメシの種にするのだ。


 下らない野郎だなとため息を吐くも、続きがあるらしい。頷いた正巳にファスが話し始めるが、その内容は予想したのと斜め下――ため息すら出ない話だった。


「こちらは関連した内容でのご報告となりますが……裏では、ヒトミ様が以前働かれていたコンビニ店の店主による"入れ知恵"もあったみたいです。こちらは記事になる前に上からの圧力で止まりましたが、中には正巳様の事を『万引き未遂』等と報じようともしていた様です」


 ファスの言葉を聞いて瞬時に反応したのは、ヒトミだった。


「酷いです! あれは私が間違えただけなのに!」


 腕をぶんぶんと振っているヒトミに(いや、それがスキャンダルとしては美味いんだろ)と心の中で突っ込むも、あの"セクハラ店長"には少し頭に来た。


 そもそも、店長が今回の件で記者に入れ知恵したのは、こちらが治療薬を用意できるとは考えていないからに違いない。記者としてはネタになれば良いのだろうから、用意出来ても出来なくても何方でも良いのだろう。


 ……まったく、下らないことを考えるものだ。


「なぁ、その治療薬って入手するのにどれぐらい経費が掛かるんだ?」


 気づかない内に高ぶっていたのか、声が上ずりそうになるのを抑えながら聞く。すると、微笑んだファスが言った。


「現在算出させている処です。恐らく、直接交渉に出向く必要が出て来ると思いますが、正巳様の資産であれば全く心配は無いかと」


 それに頷こうとするも、何故かヒトミの方が早かった。


「私のお金を使って下さい!」


 その気持ちを嬉しく思いながらも言う。


「いやその必要は無い。これは事業の一環、事業拡大の一つだ。少しぐらい費用が掛かっても、それは必要経費に違いない。今回の事は全て俺が責任を持つ。とことんやるぞ!」


 そう言った正巳に対して、感情の昂ったヒトミが抱き着こうとして来たのだが……生憎寸前に、にゃん太が正巳の膝の上へと滑り込んで来た。


「まてまて」


 ヒトミの額を押さえて止める。


「むぅ、にゃン太のあほ……」

「まぁまぁそう言うなって」


 若干不満げなヒトミの頭を撫でていると、ファスが言った。


「宜しいのですか?」


 恐らく、ファスが言いたいのは経営面を考えての事だろう。


 それに頷くと答えた。


「品揃えが増えれば更に便利になるだろうからな。そもそもが、便利なコンビニを作りたいだけなんだから、金は掛かって当然だろう。必要経費だよ」


 そう言い切った正巳に、ファスは『失礼しました』と答え、一歩下がった。心なしか普段よりも機嫌がよさげなファスを横目に、にゃん太をヒトミと一緒に撫でた。


 ……にゃん太は少し成長したものの、手足が短いのは変わらなかった。どうやら、にゃん太は生まれつき手足が短く、それは成長しても変わらないらしい。


 にゃん太をしばらく撫でた後、ヒノキにコンビニの機械化を依頼した。


 するとヒノキは――


『了解しました。今の所、商品は全て強化ガラスに入った棚に入れて置き、商品の棚にタッチした上で商品を取ると、取った分だけ請求されるようなシステムにしようと考えています。クレジットカードを持っていない方用には、入り口でお金をカードに入れて貰い、そのカードで商品を購入。帰る際に残高の清算を行う様にすれば良いでしょうね……分かりました。導入の為の準備に入ります!』


 ――と言って、早速取り掛かってくれた。


 その後、少ししてからファスが『治療薬調達の為の"経費算出"が終わりました』と言って来た。確認すると、どうやら金額的にはこれ迄掛かった金額の中でも、土地購入に次ぐ高額出費となりそうだった。


 ヒノキに依頼している"コンビニ建設"に関して、将来的な費用を含めると、恐らく出費としては最高額になりそうではあったが、瞬間出費としては比較にならないだろう。


 ファスの『交渉は四日後、通訳は私が行います』と言う言葉を聞きながら、ヒトミに一緒に行くか聞いた。すると、暫く迷っていたが『すみません、シフトが入っているので……』と言っていた。


 真面目な様子に感心しながら、『そうか、それじゃあ俺はファスと行ってくるから、その間はよろしくな』と答えた。


 寂しそうな顔をしていたヒトミだったが、『今度一緒に何処かに行くか? それこそ、機械化が進めば余裕が出来るだろうしな』と言うと、元気を取り戻したみたいだった。


 その日は、夕方から当番だと言うヒトミと共に早い夕食を摂ると、ファスと共に今後の機械化の計画を練り始めた。


 課題は『ヒトミや店員目的の客が引いた後の顧客獲得』だった。


 確かに、趣味で始めたコンビニ経営だったが、客が増えたら増えた分だけ面白みがある。恐らく、これが経営の醍醐味なのだろう。


「今後、何処かのタイミングで客が引く事は避けられないだろうからな。新たな仕掛けとブランディングが必要になるよな……」


 爆発的に人気を得た場合、それが引けるのもあっという間だったりする。


「仰る通りかと思います。考えられる方法としては、"最先端の店舗"としての広告と、"広く顧客を取る"――つまりは、配達(・・)を始めるという事でしょうか」


「そうだな。広告はともかくとして、配達……機械による配達は考える必要があるだろうな。ファス、お前の知っている中で優秀な"エンジニア"はいないか?」


「優秀な"エンジニア"ですか……少々お待ちください」


 その後、ファスが『久し振りだな、以前は世話になった。……いや、今回は兵器の依頼(そういった話)じゃなくてだな、エンジニアとして雇われるつもりは無いかと言う話なのだが……』


 ――何やらスカウトを始めたのを横で聞きながら、如何にかなりそうだと少し安心していた。


 その後、そう言えば店員の子達から『ファス様と(・・・・・)夕食へ是非』と誘われていた事を思い出し、慌ててコンビニの最上階――彼女達の住み込んでいる部屋へとお邪魔した。


 ……その夜は、食べ過ぎたお腹を擦りながら帰宅する事になったが、正巳以上に沢山食べたにもかかわらず何でも無さそうな顔をしているファスに『運動を少々しておりますので』と聞いて、自分も運動をしようと心に誓ったのであった。

いつも読んで頂き有難うございます。

凡そ本一冊ほどの文量となりました。


タイミングとしても一つの区切りなので、この話までで第一章としたいと思います。次章は少し間を置いて書ければと考えていますが、こちらと「異世界で植物園を始めたら楽園が出来ました~転生して楽園を!~」の何方を優先して書こうかは決めておりません。


ブクマや評価、感想などでご意見頂ければ、参考にさせて頂きます。

要望が少ない場合、他の連載を優先させて頂きますのでご了承下さい。

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