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『コンビニ無双』─コンビニの重課金者になって無双する─  作者: 時雲仁
第一章 色々あってコンビニを始めます
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41話 和解の条件

 コンビニの基本コンセプトとその設計方向について決めた後、正巳はヒノキに土地についての情報を渡していた。一応ヒトミの手前もあって、後ほど詳しい情報は送る事にして"本店場所"のみ先に伝えておく事になった。


「場所は、近くにある"公民館"の跡地だ。つい七年位前までは使ってたんだけど、運営していく費用が無くて閉館。今では、もう少し小さい場所を公民館として使ってるんだ。そんな場所だよ」


 話していて若干寂しくなって来たが、取り敢えずの候補地は伝えておいた。後々『他の場所で……』となったら、それはその時考えれば良いだろう。


 正巳の言葉を聞いたヒノキが言った。


「途中に通過した建物でそれらしいモノを見ました。あの建物は随分と大きな敷地の上に建てられていましたが、何処まで所有権を持っていますか?」


 どうやら、"全て"が対象だとは思わなかったらしい。


 ……まあ、普通そうだろう。


 何となく、"お金持ち"になったんだなぁと実感しながら言った。


「一応、駐車場含め全ての所有権を買ったから、あそこ等辺一帯(・・)は好きに使ってくれて構わないよ。詳しくは書類をスキャンして送るから、確認して欲しいかな」


 正巳の言葉に『は……あ、はい! 了解です。えっと、それじゃあ取り扱う商品の"品目数"が決まったらご連絡ください。私は帰りに"公民館"を確認して帰りますので!』と言って立ち上がった。


 その後、直ぐに出て行ってしまったヒノキを見送りながら(変な事を言ったかな)と心配になった正巳だったが、そんな正巳の様子を見ていたファスが言った。


「アレは、やりがいのありそうな仕事に喜んでいるだけですので、ご心配ありません。それと、土地の資料の管理をお任せいただれば、私の方で連絡の方もしておきますが……」


 ファスが『如何致しましょうか?』と聞いて来たので、管理は任せる事にした。どうやら、ヒノキが急いで出て行ったのは、これから手を付ける事になる場所の下見を早くしたかったかららしい。


 少し待っているように言って、土地の権利書関連の書類を持って来るとファスに渡した。


「それじゃあ頼むな」

「はい。すべて把握の上で、厳重に"保管"致します」


 そう言うと何処から取り出したのか、片面が厚手になっているファイルを取り出すと、書類を仕舞った。そして、改めて正巳の方へと向くと言った。


「ヒトミ様の住宅の件ですが、どうやらヒトミ様が上京された直後に、不動産業者によって売却手続きがされた様です。その動機は『未回収分費用の補填の為』と言う事でしたが、実際は国への用地売却によって多額の利益を得るのが目的だった様です」


「なるほど、確実に自分がヒトミの土地を手に入れる為に、か……。そう言えば、協力していたであろう浩平と言う男はどうなったんだ?」


 "浩平"この男は、恐らく不動産屋の指示を受け、ヒトミの家を買う協力者だった筈だ。本人も多少の利益の分配を受ける約束だったのだろうが、何となくあの"浩平"という男はそれ以外の目的が強そうだった。


 ヒトミの家で、男が下着を頭からかぶっていた事を思い出しながら聞いた。すると、ファスが苦笑しながら言う。


「浩平と言う男は、執行猶予中だった様で直ぐに実刑になる事が決まりました。不動産屋の男も裁判に掛けられる事になりますが、この男は色々と余罪が多い様なので、判決が出るのは少し先になりそうです」


「そうか、それは良かったと言えばよいのか、どうなのか……」


 ファスに答えながらヒトミの表情を伺うと、ほっとした顔をしていた。


「……続きになりますが、関連して複数名の逮捕者が出る事になりそうです」


 言葉を止めたファスに確認する。


「ああ、俺達を襲って来た男達の事か?」


 不動産屋が俺とヒトミに"売却契約"を迫って来た時、一緒にガタイの良い男達複数名が居た。普通に考えれば、あの男達も軽い重いは有れど罪に定められるはずだ。


 そう思って聞き返したのだが――


「いえ、男達に関しては正巳様次第という状況です」


 ……どういう事か分からないが、恐らく何らかの理由があっての事だろう。説明をしてくれるらしかったので、取り敢えずは黙っている事にした。


「今回逮捕される事となったのは、内部情報を漏らした公的機関の職員二人です。他に、現在審問中の者、内部調査中の者が居りますので、そちらも結果が出次第ご報告いたします」


「なるほど、内部情報……ヒトミの実家周りの情報か」


 確かに、内部から情報を流す者が居なければ今回の"区画整理計画"なる情報を、不動産屋が得る事は出来なかっただろう。


 何らかの賄賂を渡して得た情報だろうが、心地よいモノではない。


 若干胸糞悪くなりながら、先程途中だった『男達の処遇は正巳次第』について、どういう事なのかを聞いた。


「それで、俺達を襲撃した男達はどうなるんだ?」


 ファスの表情を見ながら言った正巳だったが、そんな正巳の言葉を聞いたファスが『失礼します』と言って、正巳の耳元に口を近づけて言った。


「ヒトミ様の耳に入れる前に、正巳様にご確認をと思いまして」


 そう言ったファスに小さく『分かった』と頷くと、ファスが続けた。


「実は、今回の件で問題となるのは不動産屋の男でして、他の者達は只の数合わせでしかないのです。そこで、相手方と交渉をしまして、勝手ながら"和解"の条件を提示させて参りました」


 ……どうやら、この二日足らずの期間で手を、足を動かしていたらしい。


 ファスが最初に言ってしまわなかった理由は、ヒトミが"和解"という手段を冷静に判断できるか分からないから、先に正巳に報告して判断を仰いだのだろう。


 どうしようか考えようと思った処で、少し心配そうなヒトミの顔が見えた。恐らく、何か良くない事があったのでは無いかと心配をしているのだろう。


 そんなヒトミの顔を見た正巳だったが、これ迄のヒトミについて思い返して、特に考える必要が無いと思った。そう、こんな程度でどうにかなるほど弱くはない。


 ファスに『心配ない』と言うと、心配そうなヒトミに言った。


「不動産屋と襲って来た男達だがな、和解するか裁判に掛けるかって話になってるみたいなんだ。それで、どうするかなんだが……」


 予想していたのは、ヒトミによる『裁判です!』という半ば短絡的な発言だった。それでも良いと考えていた正巳だったが、実際にヒトミが言った言葉は少し違った。


「私は、罪を償って貰うのが良いと思います。でも、どうせ直ぐに出てきたり、あの男みたいに実際に罪を償う事もしないで外を歩き回ったりするんですよね?」


 正直少し感心した。


 恐らく『あの男』というのは、ヒトミの家に侵入して家の中でモノを漁っていた"浩平"の事だろう。執行猶予が付いて罪を犯したにも拘らず、自由にしていたという事が、ヒトミにどう影響を与えたかは分からなかったが、少し現実的なモノの見方になったらしい。


「それじゃあ、"和解"するのか?」


 正巳としては、元凶である不動産屋の男――黒渕が裁かれれば、他の"道具"でしかなかった者などはどうでもよい。それこそ、形だけ"処分された"となって終わるよりは、受けた被害を金銭での補填として受けた方が都合が良いし、納得が出来る。


 正巳の"和解"という言葉に反応していたヒトミだったが、少しして言った。


「心からの和解は出来ませんが、その条件が聞きたいです」


 ……随分と(したた)かになって来た。


 ヒトミの言葉を受け、視線を向けて来たファスに頷いた。正巳の反応を見たファスは『それでは、和解の条件ですが、まず――』と話し始めた。


 ファスの話す様子を見ていた正巳は、その予め準備したような違和感のない流れを見て(ひょっとして、ファスはこうなる事を予め予測していたのか?)と思ったが、何にしても頼もしい仲間が出来た事を頼もしく思った。


「――……という事で、和解条件は"示談金1,000万円"と"今後の不干渉"、それと向こうの申し入れた"不干渉"を受け入れる事で、車両の修理費などの諸経費は請求してくれて良いという事でした」


 ファスの言葉を聞いて疑問に思った。


「その"不干渉"というのは、向こうから?」

「はい。どうやら向こうにも"助言"をする者が居るようです」


 ……ファスの言っている意味が良く分からないが、何にせよ車両の修理費用が浮くのはありがたい。今回は、"修理"というよりも"改造"という方が近いだろうが、この際だから掛かった金額全て請求してしまおう。


 それこそ、後で車屋の店主に連絡してハイグレードに改造して貰っても良いかも知れない。何せ、掛かった費用は全て、和解先に請求してしまえば良いのだから。


 少しばかり悪だくみしていた正巳だったが、不意に手を引かれた。


「正巳さん、"1,000万円"ですって! 分け前は半分で良いですか?!」

「おい、分かった、分かったから腕を振るのは止めてくれ」


 正巳の腕を掴み、ブンブンと振っているヒトミを落ち着かせながら、一先ずヒトミも和解する事に同意したという事を知って安心していた。


「――と言う事で、和解の方向で頼みたいんだが……向こうは、そんなに気前よくお金を出すような者達なのか?」


 何となく、金払いが悪くそのくせ、執拗に取り立てて来るような者達を想像していた。しかし、想像に反してやけに金払いが良い気がする。


 不思議に思っていた正巳に、ファスが言った。


「ええ、今回は"そうせざるを得ない"と思います。それに、恐らく掛かった費用は利子付きで不動産屋から回収するでしょうし……」


「そ、そうか……」


 聞かない方が良かった気がしたが、何にせよ自分で蒔いた種だ、不動産屋にはきっちりと利子付きで刈り取って貰おうじゃないか。


 その後、『やったー! 臨時収入、り・ん・じ・収入です~』とはしゃぎ回るヒトミに落ち着くように言いながら、昼ごはんにする事にした。


 テンションの高いヒトミの横では、一生懸命ジャンプしようとして失敗するにゃん太の姿があった。今はまだ早いが、今後成長するにゃん太に合わせて、家にキャットウォーク(ネコ用の高い場所にある道)を作るのも良いかも知れないな、と思った。


読んで頂き有難うございます。ブクマ、評価等頂けると、今後執筆して行く上で大変励ましとなります。もし宜しければページ最後の評価欄(最新話の下)からポチッとお願いします。

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