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『コンビニ無双』─コンビニの重課金者になって無双する─  作者: 時雲仁
第一章 色々あってコンビニを始めます
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21話 提案と依頼

 買い物を終えた正巳は、電話も済ませる事にした。

 スマフォを取り出すと"履歴"から掛ける。


 ……二度目のコールで出た。


「おはようございます、正巳様。何なりとお申し付けくださいませ」


 出たのは昨日と違う人だった。


「……おはようございます。昨日の方は?」


 昨日のテンション高めで、『担当させていただきます』と言っていた事を思い出しながら、そう聞いた。昨日の話では、俺の担当はあの男の人だったと思ったのだが……


 不思議に思って、そのまま質問した。すると、『申し訳ございません、こちら側の不手際です』と謝って来た。


「私共は、基本的に三人で24時間担当させて頂いております。メインの二名――昨日出た者と私――と、バックアップの一名です」


 ……少し考えれば当然な事だった。

 一人で毎日24時間担当するなど物理的に不可能なのだ。


「ああ、そうだよな……済まなかった」


「いえ、直接お会いした際に、ご挨拶させて頂きたく思っておりますが……本日はご依頼などでしょうか?」


 その声色から、女性と言う事は分かる。

 それに、何となく機能の男の人よりもベテランの様な気がする。


「そうそう、近いうちに結構高額な支払いが必要になりそうなのと、昨日車買ったからその費用を支払いたいんだ。それで――」


「それで、ご連絡頂いたという事ですね」


 落ち着いた様子で対応してくれる事に安心しながら、答えを待った。

 数秒して、戻って来た女性が言った。


「……通常のクレジットカードでご利用の部分に関しては、即時ご使用になれます。上限としては毎月百八十万円となります。ブラックサービス――カードサービスの方は、カード情報を全銀行に登録し、その上で生体情報を紐づけする必要がありまして――……」


 話を聞いた所、今使えるのは通常のカードで支払える範囲の様だ。


 しかし、一週間後の打合せのタイミングで必要な登録とやらを全て済ませ、それが済んでしまえば直ぐに支払いが可能らしかった。


「分かった。それじゃあ、今泊まってるホテルの分だけ支払いを頼めるか?」

「承知しました。他には何かございますか?」


 一応、手持ちに十万円以上持ってはいるが、これはパソコンを用意する資金に回す……?


「そうだな……少し聞きたいんだが――」


 一度言葉を切ると、昨日黒スーツの男が言っていた言葉を思い出しながら聞いた。


「差押え物件の競売に参加するのに必要な"ID"って、スマフォで取れるか?」


 この後、IDを発行して競売に参加する予定の正巳だったが、ふと、パソコンをわざわざ買わなくともスマフォで済むんじゃないかと思ったのだ。


 正巳の質問を聞いたコンシェルジュが『少々お待ち下さい、お調べいたします』と言うと、電話を保留にして下がった。


「お待たせしました」


 保留になってから二分程で、戻って来た。


「結果から申しますと、参加に必要な"ID"はパソコンでないと発行できない様です。これはセキュリティ上の問題の様です……参加されるのですか?」


 確かに、スマフォはパソコンに比べてセキュリティの穴が多いと言われている。若干がっかりした正巳だったが、『欲しいモノが競売に?』と聞いて来たコンシェルジュの声を聴いて、何の気なしに聞いていた。


「そうなんだが……なあ、信用しても良いか?」


 少し声のトーンを切り替えた正巳が言うと、『それが全てですので』と答えたのに頷いて、話し始めた。


「実は、今回競り落としたいのは家なんだ。この家はある少女の持ち物だったんだがな……――」


 その後、事の経緯を話し終えた正巳は、数秒の沈黙の中に居た。

 全て話し終えたのだが、電話先の女性の反応が無いのだ。


 その後、30秒ほど待ってから話しかけた。


「あの、聞こえてますか?」

「は、はい……申し訳ありません。その、ぐすっ……ここは埃っぽくて」


 どうやら、音がこちらに届かない消音(サイレント)にしていたみたいだ。女性からの返答があった直後から、鼻を啜る音が聞こえていた。


「そ、そうですか」

「はぃ……ぐずっ」


 その後、女性が落ち着くまでの間数分待っていた。


 ――3分後。


「申し訳ありませんでした! その、少し埃っぽくて……」


 飽くまでも、埃っぽいで済ませるつもりらしい。特別弄るのも可哀そうだと思ったので、そのまま話を続けようとしたが、女性から提案があった。


「正巳様、ご提案があります」


 落ち着いたトーンで言った言葉には、強い意志の様なモノを感じた。


「何でしょう」


 女性は一呼吸置くと説明を始めたが、その内容は正巳にとってこの上ない提案だった。


「私共に、今回の競売の件をお任せ頂きたいのです。勿論下調べした上で入札は致しますが、落札に掛かる費用は幾らになるか分かりません。しかし、債務と執行費用を除いた余剰分は、債務者――つまりヒトミ様に支払われます。余剰分は、後でヒトミ様から受け取っても宜しいでしょうし、そのままにするのも構いません。もしよろしければ、入札から落札迄を任せて頂けないでしょうか」


 願っても無い話だった為、即答した。


「分かった。幾らでも――それこそ一億でも二億でも、必要なだけ使ってくれ」


 元よりそのつもりだったのだ。

 幾らかかろうが、構わない。


 それに、どうやら債権金額以上の分はヒトミに戻って来るらしい。

 余剰分は不動産屋の手に渡るモノだと思っていたが、嬉しい誤算だった。


「ありがとうございます。信頼には必ず答えます」

「ああ、頼んだ」


 その後、ヒトミの家に来ていた男達の名前と特徴を聞かれたので、思い出せる限りの事を話した。不思議に思って、『何故、来ていた男達の事を知りたいんだ?』と聞いた。


 すると、『私共の仕事は常に"完璧"ですので』と言った後、その理由を少し教えてくれた。


「実は、過去同じような状況で家を奪われ、全てを失ったという情報があります。それと、対象である土地はどうやら、特殊な状況下にある土地の様ですので――詳しい調査を行い、最善な"結果"を提供いたします」


 何となく、『それは、ヒトミの実家の周囲が閑散としてたことに関係あるのか?』と聞きたくなった。しかし、今聞いても帰って来るのは"仮定の話"だろう。


 頼んだ以上、全てを任せて待つ事にした。


「それでは、三日後の"結果"を楽しみにしていて下さいませ」


 そう言った女性に『楽しみにしてるよ』と答えると、電話を切った。


 電話を切った後、車のシートにもたれ掛かった正巳は呟いた。


「……どうしよう、やる事無くなった」


 存外コンシェルジュが優秀過ぎて、これから三日間かけて行う筈だった事が全て済んでしまった。何かやる事が他にある筈だ――と考え始めた正巳だったが、ふと(これが仕事漬けで生活してた弊害か……)と思い至った。


 別に、やる仕事が無いのであれば休日――リフレッシュすれば良いのだ。休むという発想が最初に出なかった事に苦笑した正巳は、休日を堪能する事に決めた。


「さて、そうと決まったら、早速帰って聞かないとな」


 車を動かし始めた正巳は、ヒトミが行きたいと言いそうな場所を思い浮かべながら、宿への道を戻り始めた。薄っすらとした空には、すっかり日が行き渡り、青空が広がっていた。


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