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『コンビニ無双』─コンビニの重課金者になって無双する─  作者: 時雲仁
第一章 色々あってコンビニを始めます
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10話 何のお店ですか?

 窓の向こうに、のどかな風景が流れている。


 山こそ少し離れないと無いのだが、その他の条件――木々、田畑、時折見える家――は全てある。ここ等一帯も"区画整理"の対象だった為、無駄に道は整っている。


 恐らく『地盤工事』、『道の整備』、『住宅の建設』の順で進める筈の"都市開発"に於いて、道の整備までが進んでいたのだろう。


 正巳の家から少し離れた場所なのだが、もし自分の家の周囲がこんな状態で放置されていたら、きっと我慢できずに引っ越していただろう。


 (いっその事、中途半端に整備されていない方が、踏ん切りがついてよかったのかも知れない)と考え始めた処で、ヒトミが思い出したかのようにして聞いて来た。


「それで、"ジンギスカン"って何のお店なんですか?」


 にゃん太を膝の上に乗せて片手でお腹をモフモフしている。にゃん太の家は、タクシーの運転手に『そんなの乗せられんわ』と言われた為、置いて行く事にした。


「ほら、『ジン、ジン、ジンギスカーン?!』ってイントロのCMで有名な店だよ」


 『知らないか?』と言う正巳に対して、ヒトミは全く知らないと言った風に首を振る。


「チェーン店だから知っていると思ったんだが。まあ、使わなければそんなモノか」

「有名なチェーン店……サイゼとかですか?」


 何故か、目を輝かせてこちらを向いて来る。しかし、残念ながらサイゼに向かっている訳では無い。それに、先程店の名前は口に出していたのだが……


「さっき朝ごはん食べたばっかりだろ」

「それじゃあ、ワンハンドアイス!」


 『それじゃあ』って……何となく、妹にねだられてるみたいだ。


 因みにワンハンドアイスとは、100種類のアイスが並ぶ"100種のアイス屋(ワンハンドレッド)"であり、決して"片手(ワンハンド)"では無い。


「アイスも食べないぞ? ……寒いしな」

「えーっと、じゃあたこ焼き屋の"かりべえ"!」


 ……確かに、こう寒くなって来るとたこ焼きなんかも、より美味しく――


「って、何で飲食店なんだよ!」

「え? だって、『有名チェーン店』って……?」


 不思議そうな顔をしてこちらを見て来る。


 そんなヒトミに対して、若干(本当に、悪い子じゃないんだけどな~)と思いつつも、もう少し話に付き合う事にした。


「いやいや、そもそも出発する時に"ジンギスカン"って言っただろ?」

「え? それじゃあ、お肉食べに行くんですか? ……あれ?」


 恐らく、俺が言った『飲食店じゃない』という言葉と相まって、混乱しているのだろう。


「ジンギスカンには行くが、肉を食べに行く訳じゃない。と言うか、そもそも"ジンギスカン"は店の名前であってだな――」


 言いながら、運転手に伝え忘れていた事を思い出した。


「あっ、次の交差点――信号の付いていない交差点で左折して下さい。そうすれば小道に入るので、裏口から駐車場に入れるはずです」


 髪を短く整えたタクシーの運転手が、『あいヨ』と言いながら手際よく車線変更をする。田舎のクセに片側三車線道路なのだ。これは、無駄に土地が有るのと都市開発をしようとした名残なのだが、今となっては無駄に広い道路でしかない。


 直ぐに指示した交差点へと迫り、その角を左折した。


 まあ、"交差点"とは言っても、無駄に綺麗に区画整理されているだけで、特に家や建物が有る訳では無いのだが……恐らく、ここいら一帯には色々なお店を誘致する予定だったのだろう。所々に、整地された区画の名残がある。


 左折すると、直ぐにその"商品達"が見えて来た。


「これは……"車"ですか?」

「そうだな、"車"だ」


 辺りは草や木々しかない様な場所なのだ。そこに、電飾の付いた赤い柵に囲われ、中に様々な種類の並ぶ車両類が現れれば……こんなに目立つ物は無い。


 恐らく新車も取り扱っているのだろうが、並んで居る車両のユニークさと、柵や電飾の具合から全てがレトロに見えて来る。


 ……恐らくは、店主がそう言った趣味なのだろう。


「はいヨ!」


 裏手にある入り口から、駐車場に入った。

 ここには一度だけ来たことが有る為、何となく懐かしく感じる。


「幾らですか?」

「あイー? ……帰りは乗ってかんのか?」


 そう言えば、伝え忘れていた。


「ええ、ここで車を買おうかなって思っているので」

「アイーーま。そうか、そんじゃ……えっとな……」


 何やら手元を動かし始めた様子を不思議に思って、メーターを見たのだが……回っていなかった。どうやら、メーターを回すのを忘れていたらしい。恐らくお父さんは個人タクシーだろうから、ここで少なく貰って困るのは自分(お父さん)だろう。


「大体30分くらい走って来てもらったので……これで足りますか?」


 そう言って、財布から一万円を出した。


「あいさ、ちょっと待ってけ。おつりが分からんめ」

「おつりは良いですよ。往復頼まなくてすみません」


 そう言うと、一瞬嬉しそうにしたが直ぐに頭を振って言う。


「なんに。そんな事で! 直ぐにおつりを数えるめ!」


「……それじゃあ、次お願いする時に少しサービスしてくれれば良いです。今は小銭が増えると大変なので――ほら、ヒトミも降りて!」


「は、はい!」


 お金を払いつつも逃げるように下車した。すると、ようやく諦めたのか『おつり払うけ!』と言っていたお父さんが、ため息を付いて言った。


「あんちゃんは頑固や」

「お互い様ですね」


 そう答えると、上着の内ポケットから小さなケースを取り出した。


「次は覚悟しろ?……ほら」


 そう言って差し出して来た物を受け取る。


 咄嗟に、カバンを脇に挟んで両手で受け取ってしまったが、その様子を見ていたお父さんが『営業マンみだいだ』と言っていた。


「富田さん……こちらこそ、よろしくお願いしますね」

「今じゃ年中暇ださ、何時でも呼んでくれれば行く」


 そう言って、笑顔で手を上げたのに対して『ええ、分かりました』と答えると、そのまま富田タクシーは走って行ってしまった。


「何だか変わった人でしたね。悪い人でもないみたいでしたけど……」


 そう言って来たヒトミに『お前も十分変わってるけどな』と言いつつ、確かに変わってるけど、何処か嫌いになれない人だったな。と思った。


 富田さんのタクシーが角を折れて見えなくなったので、貰った名刺を財布に入れると、早速目的の人物を探す為に移動する事にした。


インフルエンザに罹っていた為、前連載作品共通で久しぶりの投稿となります。ただ、頭痛が少し残っている為、今回は少し短めですが書ける所まで書いてみました。皆様も健康には十分お気を付けください。

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