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折織識の百物語  作者: K@lc.
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零話~男はどこからともなく語り掛ける~

本当は耳袋でもよかったと思うんです。でも百物語の方がタイトル的にかっこいいと思うんです。

期待値0でここから僕の事を知っていただけたら幸いです。

それで僕の書く怪異譚に興味を持っていただけたら、応援してください。それだけが僕の励みです。

 君たちは怪異を信じるだろうか?

 日常を生きるなかに潜んでいる、通常では知ることのない非日常。

 トイレの花子さん、こっくりさん、尺八様にきさらぎ駅。ここらへんなら皆も一度は耳にしたことが、あるいは読んだことがあるんじゃなかろうか。これらは人の姿で語られたり、場所そのものが怪異として書き込まれる事がほとんどだ。

 これらの特性として、人の認識によって怪異の特異性が変わることが挙げられる。

 現在ではインターネットの普及によって、より多くの人にあらゆる情報が知られるようになって、インターネット上にそういった存在が生まれるなんてことも起きてきている。

 これは人の認識に依存している彼らの特性が大いに発揮されたことが大きく関係していて、今では一つの怪異を取り上げてみても数多くの逸話や、それらに対応した特異性が生まれ、それぞれの影響が強い場合は特異性を複合した状態であったり、それぞれの特異性を持った同一の怪異が別個体として複数同時に現れる事がある。


 トイレの花子さんなんかがいい例かも知れない。

 江戸から昭和初期にかけて厠神ーー現在でいうトイレの神様ーーの信仰が一部の地域で盛んだった。その民間信仰はトイレに美しい花や赤、白といった着物を着せた人形を供えて厠神を祀っていたというもので、その信仰の話が長い年月を重ねていくうちに、「着物を着たおかっぱの少女」の姿であるとされたり、信心深い人々が親しみを込めて「花子」という名前で神様を呼び始めたのが現在のトイレの花子さんとされる説もあれば、東北のある県に住んでいた「長谷川花子」という少女に起きた不幸な事件が元だとされる話もある。

 その少女は親から酷い虐待を受けていた。毎日のように暴力を振るわれ、食事がもらえない事も多い日々を過ごしていたようで、彼女の身体は学級の誰よりも細く、醜い姿をしていた。ある日の夜、母からの虐待に耐えかねた少女は家から逃げ出し、夜の学校へ駆け込んだ。少女は息を潜め朝が来るのを待ったが、彼女の母は学校まで追いかけてきていたのだ。母は学校中を探し回り、ついに少女を見つけ出した。隠れている少女を見つけた母親はその場で少女に暴力を振るった。家で受けるよりも苛烈な暴力を受けた少女は、逃げることも叶わずその場で命を落としてしまった。この事件はその日のうちに騒動となり周辺地域をざわつかせた。その事件以降、学校では夜になると少女が隠れていたとされる学校の三階、奥から3番目のトイレに彼女が姿を現すようになり、彼女と遭遇してしまったら生きたまま『あちら側』へ連れていかれてしまう、という説もある。


 僕の知る対照的な逸話を引き合いに出してみたが、どうだろうか?

 前者は地域信仰として花子さんは神として人々に祀られ良いものとしての扱われている。しかし後者は生前の彼女を襲った不幸な事件から生まれた、まさに怪異と呼ぶに相応しい特異性を持って存在している。片方は民間の信仰であることから、恐らく一部の地域でしか見られないのかも知れないが、もう片方は学校やこの事件に似た噂が流れてさえいればどこの学校にも存在出来てしまう。これが怪異の特異性だ。

 しかし、こういった話が多く認知されていたとしてもどれが正確なもので原典の怪異がどれなのかは誰も知ることはない。


 僕はそういった怪異に関する話について日々調査をしている。地道にインターネットに書き込まれたものを精査したり、怪異に類する本を読んでみたり、あるいは出先にいる人を捕まえて直接聞き込みをすることもあれば、話の舞台となっている場所へ赴いて実際に出会えるかを試すこともある。研究者としてそういったものを調査して生計を立てている訳ではない。あくまで個人的な理由でどうしでも怪異の事を調べなくてはいけないのだ。この個人的理由での活動も、もういつから始めていたか覚えていない。気が付けば多くの資料が手元に存在し、実地調査の記録も多く取ってきた。

 ここまで来ると転身して怪異専門の研究家になって夏の特番に出演してコメンテーターとして解説を挟んだり、本の出版をして世の中のオカルト好き、サブカルチャー好きの読者からに注目を集めた方が稼ぎにも僕の成果の実感にもなるんじゃなかろうか、なんて思うくらいだ。

 好き勝手に語ってしまって申し訳ない。つまり僕が何を言いたいかというと、僕が実際に出会った怪異の話、そこに居合わせた彼らの話をこれからしてきたい、ということだ。

 ものを人に伝えるのは苦手だし、解りやすく伝えるのに時間がかかったり伝わりにくい部分があるかも知れないが、僕の経験した怪異譚は僕だけが知っていていいものじゃないと思っていたから、これを機に少しずつ語っていきたい。現在も進行形で調査を続けている部分もあるから、補足などもあればできればしていきたいと考えている。

 今回はあくまでイントロダクション。これからの僕の紹介のようなものだ。


 ……そう言って今の今まで自己紹介をしていなかった訳だが。

 僕の活動の詳細と今後の活動は先に伝えた通りだから、名前を名乗っておこう。

 僕の名前は折織識。変な名前だとか敷物だとか言われるが、周りから変わっていると言われてきたからもう慣れてしまったし、なぜ彼は一人っ子なのにそんな商標を知っていたのかは謎だったけれど、とにかく、僕の名前は折織識だ。

 残念ながら自己を紹介できる部分がこれしかないのはご了承願いたい。その理由も怪異調査に関係しているからいずれ話す時が来るんだろう。

 もう僕についてもイントロダクションについても語ることはない。


 次からの僕の経験譚、怪異譚を楽しみにしていて欲しい。

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