プロローグ
「ようこそ死後の世界へ」
そう言って笑顔で俺に喋りかけてくるのは、豊かな胸を持った……天使? だろうか。
髪は白く、目の色は海を連想させる綺麗な青。まぁ、そんなのはどうでもよくて、重要なのはあの胸だ。俺の見立てによるとEはある……
というか、死後の世界とはなんだろうか、俺が死ぬ?
まさか。確か、俺は平和な引きこもり生活を送っていたはずだが……
「あなたは死んでしまいました……お悔やみ申し上げます」
そう天使はいかにも残念そうな顔で俺に告げる。
「そ、それはどういうことですか? 俺が死んだ? なんかの冗談ですか?」
「いいえ。これは夢でなく紛れもない現実です……まだ、理解が追いついていないようですね。とりあえず、この『死んだ人へのスタータービデオ』を見てください。
なんだよスタータービデオって! というかまてよ? どういうことだ本当に死んだのか……ならば死因は……
「えっと、死因ってなんですか?」
「あ、はい。死因ですね。少しお待ちください」
天使はそう言うと、手に持っていた辞書のようなものはパラパラとめくり出す。
「あの、死因は……」
「――も、もう少しお待ちください…… あれ、おかしいですね……」
しばらくすると、後ろにあった白い椅子らしき物に腰をかけこめかみを抑えた。
そして、
「あぁ……やっちゃったかな……」
そう言うとパタンと手元の辞書のようなものを閉じ、豊かな胸からスマホのようなものを取り出した。
俺の目は胸から離れない。
「あの、もしもし。 アリアです。t68594番の死因ってどうなっていますか―― え!? 存在しない?! でも……あ、はい。分かりました。失礼します」
天使はため息をつき、豊かな胸を俺に向ける。
「お名前を伺っても?」
天使はスマホを閉じるとそう訪ねてきた。
「神崎隼人神崎隼人です」
それを聞くと天使はゆっくりと目をつぶり、決心したように口を開く。
「神崎隼人さん。本当に悪いんだけど、異世界に行ってくれる?」
「は、はいいい!?」
ど、どういうことだ? いきなりこいつは何を言い出す!? 異世界? 冗談じゃない。俺は今までに異世界モノのアニメや小説を幾度もなく読んできたが……
あんなのは都合が良すぎる。無双して敵を一掃? 美少女と出会いハーレム冒険?
舐めてやがる。
ま、まぁ、ちょっとばかし期待でもしてはみるが……
「ちょ、ちょっと待ってください!? いきなりなんですか? 生き返るとかは……?」
「できないのよ……だから、ごめんね! 私も出世がかかってるの。」
ふざえるな、こんなTHE一般人の俺がいきなり異世界に行ったって、雑魚に一蹴されるのが目に見えてる……
気づくと足元に魔方陣らしきものがあり、俺は咄嗟に頼み込む。
「せ、せめて、能力かなにかを!」
「うーん……頑張ってねー」
天使はそういうと満面の笑みで俺を送り出した。
「お、お前、覚えてろよ!!!」
そして俺は……気を失った。