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第十三話 初めての実戦

毎週土曜投稿が限界です。

申し訳ないです。

というか、恐らくジャンル的にアクションの方が近いのではないかと思い始めた今日この頃。

 昼食を食べ終えた午後、クロガネはエリナに昨日訓練で使用した白い部屋に連れてこられた。


「――遅れてすいません。四条博士」


「……あれ、四条博士?」


「やぁ、クロガネ君。調子は良さそうだな」


 そこにいたのは、エリナの担当官である四条博士だった。

 だが、彼女以外に姿は見えない。


「……あの、同じ班の奴との顔合わせって言ってましたけど」


「何言ってるのクロガネ君。後ろにいるじゃない」


 クロガネが首を傾げて質問をするが、エリナがそう言って四条博士の後ろを指差す。


「……」


「――おわっ!?」


 四条博士に隠れる様にして、背の低い顔髪の少女がそこに立っていた。

 まったく存在感を感じなかった為、視界に映った少女に思わず驚く。

 少女の顔は無表情で、眼は眠そうに細められていた。

 年齢はわかり辛いが、恐らく十代前半だろう。


「なんでこんな子供が――」


 クロガネがそう呟いた。

 次の瞬間――


 バン!!


「――うぉっ!?」


 音に反応する様に、オルフェとしての身体能力を遺憾なく発揮してクロガネが跳び退る。

 大きな破裂音と共に、クロガネが先程までいた場所を()()が通過した。

 そして、クロガネの髪の毛がハラリと舞う。


「……外しましたか」


 鈴の音の様な愛らしい、しかし確かな怒りを籠めた声音。

 クロガネが驚きの表情でその声の主を見る。

 クロガネに向けて()()を放ったのは、青髪の少女だった。

 突き出した右手の先に、黒い武骨なリボルバーが握られており、銃口は確かに寸分違わずクロガネに向けられていた。


「……言葉に気を付ける事です。次に私の身長の事を弄ったら……殺します」


 そう言い放つ少女の顔には、僅かな差異もない――いや、僅かに眉が顰められているので、恐らくは怒っているのだ――のだが、彼女から発せられる怒気に、


「……了解した」


 クロガネは両手を上げ、降参する。

 そこに漸く、事態を見守って――関わらない様にして――いた四条博士が少女に声を掛けた。


「……アクル君。一応研究所内で無許可に葬装を使うのはやめてくれないか?」


「……了承。……次からは気を付けます。博士(ドクター)


 ”アクル”と呼ばれた少女は、四条博士に対して素直に頭を下げた。

 その言葉は、何処か機械的だ。

 四条博士は「ふぅ」と溜息を吐くと、


「あー……彼女の名前はアクル。君とエリナ君と班を組んでもらう事になる。一応、エリナ君がリーダーだが、君達の中では一番先輩だから、分からない事があれば彼女に聞い……てもダメか。君は不愛想だからなぁ」


 アクルは

 四条博士を一瞥し、


「……アクルです。オルフェになってから十年程になります。宜しくお願いします」


 礼儀正しく、そしてやはり機械的に頭を下げた。

 戸惑う様に頭を下げるクロガネに対し、エリナは親し気に声を掛けた。


「……二週間ぶり位ね、アクル。任務はどうだったのかしら?」


「お久し振りですエリナ。……任務は無事遂行しました」


 アクルもまた、エリナに親し気に返答する。

 どうやら、アクルはクロガネが目覚める前から任務に出ていた様だ。


「……任務?」


「――あぁ。任務というのは、『捕獲したアポトシスをここから少し離れた研究所に護送する』というモノよ。アクルの能力が一番妥当なの」


 クロガネの質問に、エリナが答えた。

 成程、アポトシスには謎が多い。

 それを研究し、アポトシスの謎を解明する事は重要な事だろう。

 オルフェが護衛につくのも理解できる。

 だが、それでも疑問が残る。

 エリナは『能力的にアクルが適切だった』と言った。

 アポトシスの護送に相応しい能力とは何なのだろうか。


「護送に相応しい能力ってなんなんだ?」


 クロガネの疑問に、今度は当人であるアクルが口を開いた。


「同じ班になるならば、私の能力を知っておいた方が良いでしょう。……私の能力は【洗脳】。アポトシスを含め、生物を洗脳し、支配下に置く能力です。洗脳した者は、私のあらゆる指示に従います」


 アクルが、自身の持つ能力について説明をし始める。

 アクルの持つ【洗脳】という能力は、相手を支配下に入れ、自身の思う通りに動かす力だ。

 直接攻撃は出来ず、オルフェ達の持つ能力の中でも特殊な部類に入る。

 弱点として、大型に分類されるアポトシス等は洗脳する事が出来ないのに加え、洗脳しても身体能力は限界を超える事は出来ない。


「……そして【洗脳】を使うキーとなるのが、『”葬装(これ)で打ち抜く事』です」


 アクルは、手に持ったリボルバーを顔の位置まで掲げる。


「葬装銘は【女王(コール・ミー)宣告(・エンプレス)】。私はこれで撃った相手を支配下に置く事が出来ます。そして葬装としての能力は、小型・中型までのアポトシスを弾丸に変換する【銃弾変換(バレットコンバート)】です」


 何となくだが、クロガネも想像出来た。

 研究用に護送するアポトシスを能力を使って従属させたのだろう。

 彼女の能力は確かに護送には適している能力の様だ。

 代わりに直接的な戦闘能力は低そうだが……。

 そしてその時――


 ウ――――――――――――――――――――!!


 聞き慣れたサイレンが館内に響き渡り、思わずクロガネは天井を見上げる。


「これは――」


『――アポトシス出現! アポトシス出現! オルフェの皆さんは担当オペレーターの指示に従い、出現場所に向かって下さい!』


 まだ若そうな女性の、緊迫した声がスピーカーから聞こえてくる。


「……出現したみたいだな。……さぁ、急いでオルフェの居住区に戻りたまえ」


 四条博士がスピーカーから視線を戻し、三人を早口で促す。

 その声には、やはり緊張感を孕んでいた。


「わかりました。……失礼します」


 エリナが素早いながらも丁寧に頭を下げて速足で歩きだす。

 アクルは無言でエリナに続き、クロガネも四条博士に頭を下げてエリナの後を追った。





 クロガネ達は走ってオルフェ達の居住区である”墓場”に戻ってくると、既に多くのオルフェ達が仕度を終えていた。

 ミカヅチがクロガネ達の姿を見つけ、大声で呼ぶ。


「おう、来たか! ……武器持っているのはアクルだけみてぇだな! とっとと準備して来い!」


「「――はい!」」


 いつも懐に入れて携行出来る大きさの葬装であるアクルと違い、クロガネは剣である。

 聞けば、エリナの武器もまた剣であるらしく、そういった葬装を持つ多くの者が、自室に置いている状態だった。

 クロガネとエリナは其々の部屋から葬装を持ってくると、オルフェの数は減っていた。


「今回は同時に三ヵ所での出現だ。お前達はまだ顔合わせしたばかりだが、んなこたぁ言ってられねぇ。……エリナ! リーダーとして、ちゃんと指示しろ!」


「えぇ」


「――クロガネ! お前は初めての実戦だ! 覚悟は出来てるか?」


「…………はい!」


 ミカヅチに問われ、クロガネは少し躊躇いながらもはっきりと頷く。

 クロガネの返答に満足そうに頷き、


「よっしゃ! ――エリナ! オペレーターの指示に従って出現ポイントに行け! ヘッドセットの装着を忘れんなよ!」


「分かりました。……ミカヅチさんはどうするんです?」


「悪いが、今回は別行動だ。……絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」


「えぇ。……さ、二人共行くわよ」


 クロガネは「おう」と返事をし、アクルは小さく頷いて、エリナの後をついていった。



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