表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

プロローグ 

一週間は連投。

その後は週一話~二話投稿予定。


読んで下されば嬉しいです。


 西暦2XXX年。



 あらゆる技術が発展し、ほんの少しだけ便利になった未来。

 それまで世界各地で戦争が起きながらも、多くの人々は戦争の無い平和な世を過ごしていた中、突如異世界から異形の存在が現れた。


【アポトシス】と呼称されたそれ等は、異世界から(ゲート)を開いて現れ、人類に甚大な被害を齎した。

 アポトシスの持つ驚異的な再生能力と能力の前には、人類がそれまで持っていた兵器等は役に立たず、人類は瞬く間にその数を減らしていった。


 それから数十年後、とある国の学者達が奇跡的にアポトシスに対抗しうる存在を生み出す事に成功する。

 ”オルフェ”と呼ばれた彼等は、人の姿でありながら人ならざる身体能力を持ち、アポトシスと対等以上に渡り合った。




 そして人類の敵、アポトシス出現から百数十年後。

 人類はそれまでの生活圏の多くを取り戻し、人々は今まで通りの日常を過ごす様になっていた。

 それまでと変化したものといえば、アポトシスの襲来用に各地の地下に複数の”シェルター”と呼ばれる避難所が設けられた事と、襲来時にサイレンが鳴って事前に知らせられる様になった事である。

 だが、だからといってアポトシスが完全にいなくなった訳では無い。

 アポトシスは時折現れては、人類に被害を(もたら)していた。

 日本においても、それは同じだった。



 これは、人類の為に異界から襲来する存在、アポトシスと戦う者達――”オルフェ”の物語である。







 《2XXX年 日本 首都近郊》



 ウ――――――――――――――――――!!



 晴天の空には似合わない、嫌悪感と危機感を掻き立てられる様なサイレンが鳴り響く中、高いビル群が立ち並ぶ大都市から少し離れた都市の大通りを、常人ならざる速度で駆け抜けていく四つのシルエット。


「――ったく。またかよっ!」


 そんなシルエットの一つから発せられる少々イラついた声。

 呟いたまだ十代後半と思しき黒髪の少年の手には漫画やゲームに出てきそうな、全身が黒色で発光した緑の線が入った片刃の剣が握られている。


「……仕方ないです。……文句は言ってられません」


 そんな若い男の声に応えたのは静かな少女の声だ。

 まるで幻想物語(ファンタジー)に出てきそうな癖のある青髪を後ろに束ねた物静かな雰囲気を纏わせた十代前半に見える少女である。

 その手には、一丁の武骨な拳銃が握られていた。


「でも流石に間隔が狭すぎだろ。前回の襲撃からまだ数日しか経ってねぇじゃねぇか」


 と、少し不貞腐れたような先程の男の声より少し低い声。

 此方は赤褐色の髪をスポーツ少年の様に短くした背の高い青年だ。

 彼は両手に剣の様な、斧の様な、不可思議な武器を握っている。


「――ほら三人共、愚痴を言ってないで急ぎましょう。他に三班向かってるそうだから、急いで合流しないといけないわ」


 そんな三人を叱咤する様な、華やかな少女の声。

 綺麗な金髪を腰まで伸ばした可憐な少女が、剣を片手に一番先頭を走っていた。



 この若き少年少女達こそ、異界からの襲撃者アポトシスより人類を守る守護者――”オルフェ”である。





 だが駆け抜けていく大通りには車やバスがドアが開けっ放しの儘放置され、人の気配はない。

 そんな、どこか非現実的な街の中を、戸惑う事無く駆け抜けていく。


『――出現場所、近いです! 小型が複数いますので、チームDはそれを討伐し、その後近くに負傷者がいないかの確認をお願いします!』


「「「「――了解!」」」」


 耳に装着している無線機から聞こえてくる緊張感の孕んだ女性の声に駆ける四人はそう返答し、更にその速度を上げた。






 四人が駆け付けたそこは、既に建物が崩れて瓦礫となり、所々から煙や炎が立ち上っていた。


「――最後の一匹!!」


 黒い影の様な存在を手に持った剣で切り裂き、黒髪の少年――クロガネは呟いた。

 既にこの惨状を(もたら)した存在は今し方クロガネが殺したので最後であり、ただ瓦礫の山が広がっているだけだ。

 だが、彼等は緊張を解かず、慎重に行動していた。


「――クロ、そっちはどう?」


「あぁ、エリナか。……討伐は終わったが、生存者はまだ見つかってない。捜索要請者のリストはもう届いてるのか?」


 クロガネは近くに落ちている人の何倍もの大きさの瓦礫を易々と退かしながら、声を掛けてきた少女の方を振り返って逆に質問する。

 エリナと呼ばれた少女は、日本人とは思えない少しウェーブ掛かった綺麗な金髪を揺らしながら首を横に振って否定した。


「いえ、予兆型の出現の感知が遅れてしまったから、その分非難も遅れたから避難所はまだ慌しいそうよ」


「そっか。……アポトシスは今ので最後か?」


 クロガネの疑問に、エリナは今度は首を縦に振り、肯定の意を示す。


「えぇ。……中心地に出現したのは小型が二十体程度と中型のアポトシス複数、大型のアポトシス一体だけだったそうだから、直ぐに他の班が討伐したそうよ。……でも、都市部に現れればこれ程の被害になるのよね」


 そう言って、エリナは人形の様に整った顔を曇らせた。

 そこに――


『二人共……聞こえるか!?』


 突如割って入る様に無線機から聞こえてくる青年の声。

 クロガネとエリナは声の慌てた様子に顔を見合わせる。


「どうした、シユウ?」


 クロガネが無線機越しに、落ち着かせる様な声音で尋ねる。


『どうしたじゃねぇ! ――生存者だ! 人数は六! 急いで来てくれ!』


 しかしシユウと呼ばれた無線機越しのその声は、クロガネの意図に気付かず、慌てた様子で叫んできた。

 無線機から聞こえてきた言葉の内容に、今度こそクロガネとエリナは声を見合わせ、合流する為に駆け出した。





「――おーい! こっちだ!!」


 クロガネとエリナがシユウと呼ばれた声の言う通り瓦礫の中を進むと、赤褐色の髪を短くした男が瓦礫の上で手を振っていた。

 クロガネは手を振り返すと、エリナと共に急いで褐色髪の男――シユウの元に駆け付けると、その近くには老若男女様々な人物が倒れていた。

 意識のある者、無い者いるらしく、苦痛に呻く声も聞こえてくる。

 その近くには、彼等のもう一人のチームメイトである青髪の少女、”アクル”の姿もあった。

 彼女は周囲を警戒する様に、彼女の()()である――その容姿に似合わない――拳銃を手に、周囲を見回していた。


「アクル」


 クロガネが呼びかけると、アクルは普段通り『無感情』を張り付けた顔を向け、小さく頷き、


「……此方には負傷者四名。シユウの方に二人です。……こっちで倒れている女性は、朧気ですがまだ意識があるようです」


 と、意識があるという女性の方を(あご)でしゃくる。

 クロガネが其方を見ると、確かに一人、十代後半の女性が(うつぶ)せで倒れていた。

 肩が動いており、時折呻く声が聞こえてくるので、どうやらアクルが言った通り朧気ながら意識があるらしかった。

 クロガネは小さく息を吐くと、女性の元に近付いて、女性の身体に負担を掛けない様に仰向けに転がして――


「――っ」


 思わず息を止めた。

 そんなクロガネを訝しむ様に、アクルが見る。

 だが、クロガネはそんな視線を気にする様子も無く、ただ仰向けにした女性を見下ろしていた。

 女性はまだ若かった。

 恐らく年齢はクロガネと同じ十代後半。少し色の抜けた焦茶色のストレートの髪を肩まで伸ばしていた。

 その顔はどこか幼さを感じる童顔で、”綺麗”というよりは”愛らしい”という表現が似合うだろう。

 そんな女性を見るクロガネの眼は、驚きに見開かれていた。

 そして、呆然といった様子で小さく開かれた口から、言葉が漏れ出す。


「…………なんで……お前が――――詩織(シオリ)


「……レン……ちゃん? ……あは……生きて……た……ん……」


 もう意識も朦朧とし、気絶する寸前だったのだろう。

 焦点の合っていない眼を細め、クロガネを嬉しそうに見て笑うと、そこで意識を失ってしまった。

 クロガネは、意識を失った詩織と呼んだ女性をジッと見つめる。



 クロガネが仰向けにした女性。

 彼女はクロガネにとって、幼い頃親しくしていた唯一の友人――幼馴染みだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ