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お父さんは遊園地に行くぞ(2)



 ―――という訳で数日後。


 幸いにも本日は天候に恵まれ、冬とは思えない程の穏やかな陽射しの中、礼二達は長蛇の列に並んでいた。


 それもそのはず、今日はアトラクション公開初日。少しでも早く体験しようと各地から人々が開園前にも関わらず押し寄せて来ているのだ。


 かなり早目に到着したはずなのだが、昨日はどうやらこのアトラクションを待つ徹夜組まで居たらしく、すでに凄い人数が開園を待ちわびていた。


 前後の人間に押し潰されないように光を後ろから(かば)う格好で礼二は並び…ついでに光の前に並ぶ見慣れた人物に向けて礼二はスッと目を細める。


「…何でお前が居るんだろうな。」


 見慣れた人物こと葉月はその呟きに気付いたのか振り返り、へらへらと片手を振ってみせた。


「やだなぁ…呼び出したのは礼二だろう?」


 そう…実はこのアトラクション、3人1組のグループ挑戦型アトラクション。しかも年齢制限があり、15歳未満の子供は親の同伴が必要なのである。翔君はこういうアトラクション系が苦手らしく、結果一人補充する羽目になったのだ。


 大の大人に挟まれ視界の悪い光は、列に並ぶ事に飽きたのも手伝い物凄く苛々している。元々礼二も人混みが苦手で昔から避けていたこともあり、光にとってこんな長い待ち時間は人生初経験である。


「ほら、光君。もう少しですよ。」


 開園時間になり、ようやくゆっくりとだが列が前に進み始める。だが、この列はこれで終わりではない。そのまま目的のアトラクション広場に向かい、再び長時間待つ事になるのだ。


(こういう時は時間を潰せる何かがいるな…)


 雑誌やゲーム機等持参すれば良かったと、周りでゲーム中の青年達を横目に礼二は溜息を吐いた。












 一時間が経過した頃、列は暗い部屋に進んだ。どうやらアトラクションのルールや武器の使い方等を事前にレクチャーしながら時間を潰す目的の部屋のようだ。不機嫌ながらもじっと我慢していた光も目に見えてやる気を取り戻し、部屋のモニターに映る説明映像や展示武器に興味津々といった呈である。


 ふと、礼二は展示武器の二丁拳銃に目をやる。そう言えば昔はこういった武器を沢山コレクションしていたな、と懐かしさに思わず口許を(ゆる)めた。


 トカレフ、リボルバー、ピースメーカーにバレッタ等々…あれがどんな感触で、撃った後にどんな臭いがしていたのかなんてもう思い出せない。意外と忘れていくものなのだと礼二は苦笑した。


「そう言えば昔、礼二にいきなり一般住宅街で発砲されたなぁ…。」

「はぁ…!?」


 突如人の感傷をぶち壊すように、葉月が至極愉しげに口を開いた。


「…しかも無理矢理刃物を突き付けて俺を捩じ伏せてさ…。」

「……れ…礼二…?」


 頬に片手を添えながら語る葉月と、爆弾発言を前に不審そうに礼二を振り返り見上げる光。

【※『お父さんは家庭訪問に備えるぞ』参照】


「…ちが…発砲と言ってもアレはただのオモチャの拳銃で…。」

「そうだよ~光君。礼二は玩具(おもちゃ)で俺を苛める悪いお父さんなんだよー?」

「………最低だな。」

「ちょ…」


 否定すれば、更に間髪入れずに礼二を陥れにくる葉月。次いで言い訳をしようと口を開くも“次は何を言って弄ってやろうか”とわくわくとした葉月の表情に気付き、面倒臭いと礼二は頭を抱えた。昔から葉月に口で勝てた試しがないのだ。


「…それじゃ礼二って銃の扱いは上手いのか?」


 ふと光が疑問を口にした。思わず礼二と葉月はお互いに目を合わせる。そのまま礼二は目配せし、暗に黙っていろと葉月を諭す。


「いえ…銃が好きでコレクションしていただけなので…。」

「何だよ…あんま使えねぇな。」


 はは、と後頭部に手を置き空笑いする礼二に対し『一瞬でも期待して損した』と呟きながら溜息を吐く光。


 葉月も光と同じく溜息を吐く。礼二ならそう言うと思っていたが、流石に父親としての評価が下がるのも気が引ける。


「まぁまぁ…今回は光君にお任せって事で。それに…」


 “これ以上余計な発言をするな”とばかりに睨んでくる礼二にチラッと視線を遣り、更に葉月は口を開いた。


「…きっと意外なとこで役に立つんじゃないかな。…ねぇ、拳銃マニアのお父さん?」




 


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