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Bloody tea Party  作者: rinon
4/4

#3 狂ったウサギ 〜Love of the mouse〜


「ーーーっ」


スッといつもとは違う卯月さんの瞳が、一枚の写真へと移る。

「ーこれは、ねづの写真。そうで間違いはないわね、六槻君」

呼び方が、変わっていた。半田君から、六槻君に。

いつのまに。

「く、紅先輩。これを私にください」

「無理だ。断る」

「これを、彼女の両親に見せるのは 私の義務です」

「違う、それは誰の義務でもない」

二人の攻防戦が続いている。

多分、引き分けになるだろう。

いいや、僕が引き分けにする。

「ふ、二人共っ

これから、コンビニに行こう!

そこで、その写真をコピーしよう!」

二人の動きが止まった。

「…うん、わかったわ」

「あ、あぁ」

二人共二つ返事で了承してくれた。ありがたい。

それから、コンビニに行き、写真をコピーして二人に渡した。

それが終わり、ふぅと1つため息をついた。

疲れた。別にこんなんじゃなかったのになぁ…。


次の日、卯月さんは野花さんを連れてこなかった。

聞いてみると

「ねづは、寝込んでるみたいでしばらく来ないみたい」

「そっか、しばらく来ないのか」

まぁ、寝込んでるもなにも、死んでるのだけども。

「六槻君、昨日のこの写真はどういうことなのでしょうね」

「さぁね、先輩も不思議がっていたよ」

卯月さんは、両手を顔に当てると不気味に笑い始めた。

「ふふ、ふふふふふ…。

皆、オカシイの。ねづは生きているのに、ただ眠っているだけなのに、居なかった扱いをするの…。

何故かしらね」

「さぁ、でもねづさんは確かに居たよ。それだけは、僕らが覚えていることだ」

「ええ、えぇ。そうね、そうなのよね」

でもね…、と何かを続けようとして彼女は黙った。

手のひらと頬には、涙の粒があった。

「やっ…り、…だ…」

「え?」

「やっぱり、ねづがいないとやだぁぁぁあぁぁあぁぁぁあ!!!!!!」

駄々をこねる子供のように、泣きじゃくる卯月さんに僕は何も出来なかった。

ただ、昔野花さんに言われたように、彼女を抱きしめるしかできなかった。


―ねぇムツキ。

―もし、ウヅキが泣いてしまったら、ボクの代わりに抱きしめてあげて。


―それが、ボクの親友への精一杯の愛情ダカラ。


夕焼けのオレンジが、僕らを包んでいるようだった。

皮肉だな。皮肉すぎるよ、この色は。


別に僕も卯月さんと一緒で狂ったわけではないけど、野花さんが本当に今いてくれたらと思う。

そうすれば、こんなことにはならなかったのに…。


ガララッと音がして、誰かが入ってきた。

「……。あ、すみませんでした。また、出直します」

そう言って、ドアを閉めようとした少年を止める。

赤茶色の髪をしている。どこかで見たことがある少年だ。

「あ、いや。気にしないでください」

「あ、は、はい。

では、ハンダムツキさん。お届けものです」

そう言って渡されたのは、一枚の便箋封筒だった。水色のフリルのような模様が可愛らしい。

「昨日、お店にあったので姉に聞いてお届けに参りました」

「…店?姉?」

「あっ、俺、紅茶也と言います」

元気な声で答えてくれた茶也君は、では。と一礼すると出て行った。

「…それはなぁに?」

未だに落ち着いていない卯月さんが、僕に質問してくる。

「さぁ、なんだろうね。

そろそろ落ち着いた?」

「えぇ、恥ずかしい姿を見せてしまったわね。忘れて欲しいわ」

「え、あ、うん」

忘れられはしないだろうけど、頑張ってみるか。


そんな感じでまた、今日を終わらせることにした。

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