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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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第18話 タウルン共和国サザビー行き(3)

エヴェリーン姉さん登場! プロローグ以来、7年経った想定。

この姉さんが好きですねえ。平四郎のハーレム要員じゃないけど、気風がいい。

「マジックミサイルらしき魔法弾1発命中。ドラゴンが使ったもよう。後部の魔力エンジンに被害!」


「船長、推進力完全に失われました。もう、ダメです!」


「終わったか……」


 ドラゴンの姿はもはや、肉眼ではっきりと確認できるところまで来ている。万事休すとはこのことだ。船長はあきらめて帽子を取った。この仕事について30年。15歳の時に見習いとして商船に乗ってから、散々、苦労してこの船の船長になったが、その華麗とは言えない平凡な人生でも、メイフィアには長年連れそった妻が待っている。子供も今年、15歳だ。自分の後をついで商船に乗ると言っていた息子。

 自分だけではない。この商船に乗っている8人の乗組員、20人の乗客。それぞれ、人生がある。大切な人がいる。それもここで終わるのだ。船長としての責務が果たせず、申し訳ないと船長は無言で頭を下げた。ドラゴンが大きな口を開けている。ドラゴンブレスだ。グリーンドラゴンなので、おそらく金属腐食ガスであろう。あれを喰らえば、船は溶かされ、爆発でいて全員死ぬ。

 

 その時だ!


 下の雲の中から、無数のミサイルが飛び出した。ドラゴンの防御シールドを打ち破り、それが他数、着弾する。ドゴーン、ドゴーンと爆発する音。ドラゴンは不意をつかれて、のたうちまわる。さらに今度は上の雲の中から、無数の金属の杭が放たれた。ドラゴンの体に次々と突き刺さり、緑色の血が吹き出した。


 トドメのように下の雲海からミサイルが飛び出し、ドラゴンの体を爆発で覆い隠した後、ドラゴンは力なく下へと落下していったのだった。


「せ、潜空艦、潜空艦だわ……」


 床に抱き合いながらヘタリ込み、それでもことの成り行きを実際に見ていたリメルダはそうつぶやいた。抱き合っていた平四郎も初めて見る光景に言葉が出ない。

雲の下から4隻の船、上空の雲からは5隻の船が姿を現した。大きさは70mほどで、この商船ロクシーと大差がない。それでも旗艦と思われる少しだけ大きい船が下の雲から10隻目として現れると、その船から大音響で呼びかけが行われた。


「こちらは、タウルン共和国ドラゴン討伐部隊である。ドラゴンは討伐した。メイフィアの船だな。被害状況を報告せよ。これより、2カ国協定第7条2項により、貴船を検分する」


 2カ国協定というのは、ドラゴンの驚異に対して各国がそれぞれ結んでいる相互防衛条約である。7条はドラゴンの攻撃を受けた船を発見した場合の救出の義務と被害の確認、そのための調査権を明記したものであった。


「た、助かった~」


 タウルンの国軍らしき潜空艦の艦隊に囲まれて、やっと安心した平四郎はやっと我に返った。返ったと同時に自分の胸に小さくなっている小動物のごとき女子を発見した。


「へ、平四郎……私……」


 顔を上げたリメルダの頬はピンク色で、ちょっとつり上がった険のある目がうるうるしていて、超絶可愛いのだ。いつもツンとすましているから、これは反則技だ。


 が、ここで平四郎は先ほどの行いを頭の中で巻き戻した。


(う、うあああああああっ! そんな、そんな! リメルダとキス、キスしちゃった!)


(どうしよう! 初めてはフィンちゃんとって、決めていたのに!)


(ああああああ、ファーストキスが、ファーストキスが……)


(女友達と……リメルダとやっちゃったよ~)


(フィンちゃんを、フィンちゃんを裏切ってしまった~)


 頭の中でいろんな平四郎が叫ぶ。ズドーンと落ち込む平四郎。リメルダは体を少しだけ離して、そんな平四郎を観察し、そして、今の自分の状況に気がついた。


(しまった~。つい、勢いで口づけを許してしまった? というより、私が積極的に奪った? 平四郎のこの落ち込みよう……ってことは、フィンに義理立てて……というより、この年で初めてだったの? そりゃ、私も初めてだったけど……。いや、私の初めてを奪っておいて、落ち込むなんて失礼だわ!)


 だんだん、いつものリメルダに戻ると同時に彼女の優しさが発揮される。


「い、今のは事故だからね! キ、キスなんかじゃないわ!」

「リ、リメルダ?」


「あんなの貴族の社会では、ほんの挨拶がわりよ。私なんてもう何回もしてますからね。か、勘違いしないでください」


「はあ……。挨拶がわり?」


 そう言われたが、あのシチュエーションが挨拶がわりとは思えなかったが、リメルダにそう言われて多少罪悪感が薄れていく。


「いい、今のはノーカウントですから。フィンにも言わないで。私も忘れますから。それより、潜空艦が近づいてくるわ!見に行きましょう」


 リメルダはそう言って立ち上がるとさりげなく、平四郎の手を取った。あのようなことを言ったけれど、貴族社会にあんな挨拶のキスはないし、男性と唇を重ねたのは今が初めてである。


(赤ちゃんの時に父親に可愛い可愛いのキスはされたかもしれないが)


 なんだか、平四郎と距離が近くなったような気がしたのだ。


(フィンさんごめんなさい。抜けがけは最低だと思うけど……)と罪悪感はリメルダにも芽生えたが、自分は2番目でいいのだから……と心に言い聞かせたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「アタシは、第7ドラゴン討伐潜空艦隊の提督、エヴェリーン員数外エキストラ少将。危ないところだったなあ……アタシたちが、演習帰りに通りかからなかったら、完全に死んでたな」


 そう言ってどう見ても20代だろという若い娘が、40代半ばのおっさん船長の肩をバンバン叩いている。


(おいおい、いくら助けたからって、あの年で少将とかだって、年上に対する敬意はないのか?)


 商船ロクシーの大広間に集められた客と乗員はみなそう思った。タウルン国軍の年齢構成はいったいどうなっているのだと疑問に思う。この提督のお付きの兵士はみんなおっさんなので、この娘が特別なのかもしれないが。


「どうやら、乗員乗客には怪我はないみたいだな…。おい、お前ら、みんな旅券は持っているだろうな? 今から検分するから係官に提示しろ」


 そうこの小娘(と言っても年齢は26、7歳くらい。平四郎よりは上っぽい)提督が顎で指示を出すと、係官らしき青年士官が旅券を確認する。こちらはひどく丁寧な態度で、


「旅券をお預かりします。はい、滞在日数は2週間。ビジネスですか。はい、お返しします」


 と名前と写真、滞在許可を得ている日数を確認する。平四郎とリメルダのところに来た。

 青年士官はリメルダの容姿を見てドキっとしたが、隣の冴えない男と見比べてちょっとだけ羨ましそうな表情を見せた。


「武器商人、ラウルとその妻、アゼル……さんと、滞在日数は1週間ですか。よい旅を……」


 そう言って旅券を返そうとしたら、様子を見ていた小娘提督エヴァリーンがツカツカと近づいてきた。顔を寄せて、平四郎とリメルダの顔をしげしげと見る。身長は170と平四郎より若干低いが、161センチのリメルダよりは高いので少し下を見る感じだ。


「ふふーん……なるほど、なるほど!」


 勝手にうんうんと頷いて、後ろに下がった。


 その間に検分が終わったようだ。口は悪い提督の部下は、優秀でテキパキ行動できる。


「この船は自力航行できないので、アタシの潜空艦が曳航する。サザビー港はちょうどアタシの艦隊が帰投途中だったから、ラッキーだね。条約じゃ、近隣の港までで、そこまでする義務はないけど、今日は気分がいいからね。引っ張ってやろうじゃないの」


 そう言ってまた、おっさん船長の肩をバンバン叩く。結構、スナップが聞いていていい音がする。(ありゃ、シャツを脱ぐと手形ついてレベルだぜ)


 船長は危機一髪のところを助けられ、しかも、目的地まで引っ張ってもらえるので、何も言えず、ただ、ニコニコ笑うしかなかった。


「あ、そうそう」


 引き返そうとしたエヴェリーンは、振り返ってこう告げた。


「そこの商人夫婦。キミ達はアタシの艦に来てもらうわ。理由は分かるでしょ?」


そう言って片目を閉じた。


明日は12時(11時?)と夜に投稿。

8時じゃみんな寝てますにゃ。(休日だから)

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