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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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第18話 タウルン共和国サザビー行き(1)

ここから、あのオープニングのあの人が出てきますよ~。

ヒロインじゃないけど、好きなんですよね。

 平四郎とリメルダは、ラピスの働きもあってマグナ・カルタから機械族の国タウルンの首都ササビーに向かっていた。なぜ、別の種族の国に向かっているかというと、クロービスに向かう船への検問が厳しいとの情報を得て、第3国経由で向かった方がよいとの判断である。ラピスに偽造の旅券を都合してもらった二人は、武器商人の夫婦として商船ロクシーに乗り組んでいた。


「あんちゃん、武器商人だって?」


 ロクシーの船長のおっさんが、平四郎に話しかけてくる。この商船は仕入れにいく商人を乗せて、メイフィアの各都市や他種族の国家の商業都市へと運ぶことを主業務としていたが、自前でも売れそうな商品を仕入れて、転売することもしていた。船長は40過ぎの人のいい親父で、こうやって話しかけては、売れ線の品の情報を集めているのだ。


 おっさんの話す言葉は(タウルン語)であるが、このトリスタンの全言語が理解できるというチート能力のおかげで平四郎は難なく理解できる。公爵令嬢で高等教育を受けているリメルダも不自由はない。


「そうですね~」


 平四郎が適当に答えると、船長はさらに、


「こう世の中が物騒になってくると、やはり武器かな? 武器が儲かるよな?」


 なんて同意を求めてくる。どうやら、平四郎を裕福な商人と思っているのだろう。平四郎の格好はそれほど裕福には見えない。当然、目立たないようにということで、ごく一般人が着る服と大差ない。だが、若くてしかも綺麗な嫁さんを連れているということで、商船の乗組員や他の商人から影で、大店の若旦那と噂されていたのだ。


「見たか? あの若い商人のヨメ?」

「ああ、見た見た。あのべっぴんさんだろ?」


「いいなあ。金がある奴はあんな美人を嫁にできる」

「美人だけじゃない。服は庶民でもありゃ、元は貴族のお姫様だろ。黙っていても気品が漂ってくる」


 そうリメルダを見た男たちは、みんなその美しさと気品に魂を抜かれてしまうのだった。目立ちたくないのに目立ってしまうこの状況。だが、仮にリメルダにボロを着せても、この気品は隠せないだろう。なにせ、本物の貴族令嬢なのだから。


「平四郎、この船のみなさん、みんな親切だわ。庶民は礼儀がないってお父様が言っていたけれど、そうでもないわね」


 そう言ってリメルダはコロコロ笑う。


(いや、それは違う、全部、お前のせいだろ!)


 と平四郎は思わざるをえない。何しろ、リメルダはドアの前では立って、開くまで動かないし、椅子に座るときも椅子を引こうとはしない。にっこり微笑んでいるのだ。そして、タイミングを計ったようにちょっと険のある目つきで近くの動いてくれそうな男に目配せするのだ。これでほとんどの男がドアを開けるし、椅子も引く。それを見ながら、さも当然のように、


「ごめんあそばせ!」


 なんて言うのだが、その言い方があまりにはまっていて、男たちはポーとなるのだ。リメルダには、普通の男をナイトにする能力があるのだろう。


 ただ、これは目立ちすぎるので平四郎は極力、リメルダを部屋の外に出さないようにしていた。それはそれで、


「あんな美人な嫁さんだ。他人に見せたくないのは分かる」とか、

「昼間っから、×××か~。まあ、分からんでもないわ。俺なら一日中頑張るわ~」

 

 などと噂されるのだが。


「これから行く機械族の国ってどういう国だ?」


 平四郎はごく普通の質問をした。このトリスタンの住人でない人間の当然の質問だ。


「あら、その質問、もっと早く聞きたかったですわ。第5魔法艦隊の旗艦艦長様」


 イヤミのようなセリフだが、悪意はない。第5魔法艦隊のピンチをよく理解している賢い女の子ではあるが、リメルダは平四郎との逃避行が楽しくて仕方ないのだ。自然と笑顔になる。


「機械族だからといって、体が機械で動く……なんてことはないわ。私たちと変わらない人間よ。但し、メイフィアの住人のように魔力はもってない。これは魔力に匹敵する妖力を持つ妖精族や霊力を持つ霊族とは、根本的に違うわ。一説には彼らは平四郎のように異世界から来た者たちとその子孫って言われているわ」


 そう機械族と呼ばれる人間たちは、他の種族のような特別な力を持たないのだ。よって、その分、機械仕掛けで動かす技術が発達した。メイフィアでは、魔力で動く携帯電話を機械族の国タウルンでは、電気を蓄電したバッテリーで動かすのだ。

話を聞いただけで、平四郎は(自分がいた世界とまったく同じではないか!)と思った。


「サザビーについたら、すぐクロービス行きの船に乗りたいけれど、有名な武器市場を見に行かない? サザビーで年に1回開かれる武器見本市が開催されていうのよ。手頃な武器が補充できるかもしれないわ」


 リメルダの提案は、魅力的なものである。なにしろ、現在、第5魔法艦隊はヴィンセントの陰謀で準備が滞っているが、半年後には第1魔法艦隊との決勝戦が待っているのだ。


 状況を打開するためにリメルダの父に会いにいく途中ではあるが、次の戦いのために役立つアイテム(兵器)が手に入るならそれに越したことはない。


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