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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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第14話 先代の眠れるパーツをゲットせよ!(3)

 ナセルは向かってくる3mもあるガーディアン(金属でできた魔法生物、アイアンゴーレム)に向かって2、3発ハンドガンをぶっぱなした。雷撃属性の魔法弾だが、無情にもそれははじかれてしまう。床には撃ち尽くしたアサルトライフルが転がっている。すぐ柱に身を隠して移動する。



 ガーディアンは動きが遅いのだが、耐久力が尋常ではなかった。最初のミート少尉と力を合わせ、ハンドガンから雷撃属性を付与した魔法弾攻撃をした。電撃はアイアンゴーレムの機械仕掛けのからくりを壊し、動きを止める効果が期待できた。

 思惑通り、一体は煙を出して転倒し行動動不能にしたが、そこまでであった。もう一体は雷撃属性の攻撃を防ぐ盾を装備していたのだ。


 その残り一体に追いつめられ、ミート少尉が右肩をガーディアンに掴まれ、床に叩きつけられたのだ。ナセルが飛び出してミート少尉を何とか通路脇の隙間に隠した。それで自分が囮になってガーディアンを引きつけ、まいてからミート少尉の元にたどりついた。


 彼女は、壁に寄りかかって座り、息を荒げている。右肩をガーディアンに掴まれて床に叩きつけられたことで、右腕と肋骨が折れているようであった。ナセルが上着を破り、包帯替わりに応急処置をしたが、早く治療したほうがよいと思った。だが、そうするためには、ガーディアンをどうにかするしかない。


「はあ、はあ……ナセル、あんなものが遺跡にいるなんて…」


 激痛に耐えながらミート少尉は、ナセルに話しかけた。話していないと気を失いそうだ。


「あまり、しゃべるなよ。ミート。折れた肋骨が肺に刺さると大変だ」

「大丈夫よ、肋骨はヒビが入っただけよ。それより、アイツ、どうするの?」


「倒すには魔力が底をついている。無理だな」


 先程は二人の魔力を合わせて、ハンドガンから強力な魔法を発射したが、それによりミート少尉の銃は使用不能になった。今はナセルの銃でわずかばかりの魔力をのせて撃つだけだから、威力はハンドガンの粋を出ない。


「あそこよ、あそこ」


 ミート少尉が少しだけ顔を出して、目で扉の前にある設備を示した。ナセルも顔を出してそれを確認する。


「あれが扉を解除する装置だと思う。逃げ回っている時に目に入ったけど、赤いボタンがあったから、たぶんそう」


「じゃあ、あそこになんとかたどり着いて、あれを押せばいいってわけだな」


「扉が開けば、コネクト状態の平四郎が入ってくる」


「平四郎だったら、あんなガーディアン一撃だよな」


「はあ、はあ、間違いないわね。フィンの前でいいところを見せることができる」


「じゃあ、今は俺がいいところを見せる時間だな」


「ダ、ダメよ。あそこまでたどり着けないわ。アイツは扉を守るようプログラムされていると思う。動き方が扉を中心にパターン化しているから」


「そうだな。だが、ここにいても、そのうち見つかってしまう。そうなれば、2人とも殺されるな。賭けに出るしかない。奴は俺たちを探して徘徊しているから、ちょっと気を引いてあそこへ滑り込む」


「はあ……はあ……。ダメだよ……」


 激痛でミート少尉は気を失いそうだ。ナセルの両腕を力いっぱい掴むことで意識を保っている。


「ここは俺に頼れよ」

「逃げて……。あのダクトに潜り込めば大丈夫」


「君を置いて逃げることはない。必ず、開けてみせるさ。なあ、ミート」


「はあ……はあ……な……なに?」


「もし、扉を開けたらさ……。いや、こういう状況で言うのは卑怯だなよな。やめておく」


「い、言って。言いなさい。はあ……聞かずにあなたが死んだら、寝覚めが悪い」


「怪我しているのに相変わらず、口は悪いな」


「早く言ってよ、激痛で気を失いそう……」

「だからさ、扉が開いたら……君の心の扉を開けてくれないか?」


「は、はあ?」

「つまり、俺と付き合ってくれないかな? なんてやっぱり、卑怯だよな」


「はあ……はあ……。ひ……ひ、卑怯じゃない……」


 ポツリとミート少尉が言った。怪我で意識が朦朧として心奥底に秘めたものが浮き上がってきたのだろう。


「はあ……はあ……。あなたは女の子には誰にでも優しくて、軽い男だけど……。そう言われて、なぜか私はうれしい……。返事はO.K.。だから、死なないで。彼女がここで助けを待っているのだから」


「や、やった! 勇気百倍だ」



 ナセルは右手に持ったハンドガンの弾数を見た。魔力をのせて撃てるのは7発である。


「ま、待って」


 ミートちゃんは、ナセルのズボンを引っ張った。ナセルが腰を下ろすとその顔を引き寄せた。軽くキスをする。


「私の残った魔力を移したよ。全弾を一つに集中させれば、雷撃のレベル1ぐらいは撃てる」


 そう言って、ミート少尉は気を失った。ナセルはハンドガンをじっくり見る。装弾数は魔力によって変わる。7発が24発マックス状態を超えた。この場合、全てを1発にこめるバースト射撃ができるのだ。


 ミート少尉が言ったとおり、それは雷撃のローレベル、サンダスレベル1程度であったが、アイアンゴーレムの弱点である雷属性なら、当たり所がよければなんらかのダメージは与えられるだろう。問題は雷撃を防ぐ楯をどうかわすかだ。

 

 ナセルは思い切って飛び出した。前方の開閉ボタンまで30mの距離だ。だが、運悪いことに左の通路からガーディアンが侵入してきた。ナセルたちを見失って、元の位置に戻ってきたのだ。


「ち、ちくしょうめ!」


 ナセルは走りながら銃を構えた。レベルが低いだけにできるだけ近づいて撃たないと意味がないのだ。


(できればゼロ距離射撃)


 ガーディアンは腕を振り上げる。その距離、5m。だが、そこでナセルに運命の一撃が襲う。足がもつれたのだ! バランスを崩したナセルは手前3mでコケた。コケるだけでなく、ヘッドスライディング状態でガーディアンの足元に滑っていった。


「わああああっ~」


 止まったところは、ガーディアンの股の下。


 だが、このことは思いがけない幸運をもたらした。攻撃対象がこのような突拍子もない行動に出るとはまったく予想していなかったガーディアンは、振りあげた手をそのままにして、攻撃対象を見失った。キョロキョロと左右を見渡している。


「カッコ悪いけど、ミートが見てなかったことがラッキー! ついでにガーディアンのケツにぶち込んでやる!」


 ナセルは銃を構える。ゼロ距離から放たれた雷撃弾は、尻から脳天に突き抜けた。プスプスっと音を出して、その場に膝をついたガーディアンは動きを止めた。


「やったか? いや、動きを止めただけか」


 崩れ落ちてないということは、完全に破壊できてないということだ。おそらく、メインの伝達経路は破壊できたが、サブの経路で体のコントロールをするための一時的なフリーズ状態なのだろう。せめて、雷撃レベル2以上なら、破壊できたかもしれない。


 だが、時間稼ぎができたことは間違いない。すぐに置き上がったナセルは、赤いボタンを右拳で叩く。


バン……


起動しない。


「おい、動かない、動かないぞ! この場面でこれはないぞ。これじゃお笑いだ!」


 ナセルはもう一度ボタンを叩く。


 反応しない。


「はあああああ! マジかよ!」


 後ろでガーディアンが立ち上がる音がする。起動したのだ。ナセルを殺すために動き始める。


(まずい、まずい。このままじゃ、俺はミンチにされぞ)


 ナセルは考えた。後ろのガーディアンが近づき、攻撃態勢に入っている。渾身の一撃パンチをくらったら、ナセルの体は粉々に砕けてしまうだろう。


「こ、コノヤローめ。 開けったら開きやがれ!」


 ナセルはもう一度拳を振り上げ、渾身の一撃をボタンに加えた。


 ……キュイン、キュインとパトランプが鳴った。扉が開き始めた。


 ガーディアンは両腕を振り上げてナセルを叩き潰す体制に入った。しかし、光がガーディアンを貫く。そのとたん、ガーディアンは動きを瞬時に止めて、その場に停止したのだった。平四郎の撃った魔法弾が問答無用でガーディアンを行動不能にしたのだ。


「や、やった! ミートやったぞ」


 ナセルは思わずガッツポーズをした。平四郎たちが駆けつけてくる。外のファイアリザードの大群は全て平四郎によって倒され、死体が山積みになっていた。砲艦による攻撃が必要なかったようだ。これなら、危険を冒して中に入る必要もなかったのではと思ったが、ナセルは結果的に入ってよかったと思った。


 なぜって?


 そりゃ、ナセルに彼女が出来たからだ。ちょっと口うるさいけれど。


 遺跡に入った平四郎は、そこが500年前の基地であり、空中武装艦が配置されているのを見た。残念ながらそこにあった2隻の空中武装艦は壊れて動かせるようなものではなかったが、アンナが言ったとおり、失われた魔法が使えるパーツがたくさん使われていたのだった。


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