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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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第13話 正しい空中武装艦の買い方(2)

 巧みな交渉人のスキルが発動しました


「おやっさん、この船、いくら?」

「3万3千ダカットです」

「高いにゃ~」

「……」


「最新鋭艦と同等の船です。最新鋭の駆逐艦ならいくらするとお思いですが、第2公女殿下?」


 店長はもっとも空中武装艦のことを知っているリメルダに聞いた。フィンは全くしらないであろうし、平四郎に聞いたらとんでもない額を言われてそのまま押し切られると本能で思ったからだが。リメルダはそう言った意味では、店長の理想どうりの答えを口にした。


「そりゃ、10万はくだらないわよ。最新鋭艦ならね」


「そうでしょ、そうでしょ……」


「ふーん。3千ダカットだな」


 平四郎がそう聞こえるような声で独り言を言った。時間が止まったように店長は感じた。


「ご、ご冗談を……」


 あとから考えれば、無視するのが一番よい方法であった。一言返したばっかりに平四郎の交渉の土台に乗ってしまったのだ。


「だって、店長、スクラップ場から買い取ったんでしょ。スクラップならタダ同然でしょ」


「いや、もちろん、安くは買えましたがスクラップから船としての登録をするのに莫大なお金がかかってるのですよ。何しろ、最新鋭艦ですからね」


「その最新鋭艦もエンジンに原因不明なトラブルを抱えているんじゃ、売るに売れないでしょ。どう? 現状引渡しで3千なら安いと思うけどねえ」


「いや、いくら何でも3千じゃ……」

「じゃあ、こうしよう。さっきの古い巡洋艦も引き取ろうじゃないか。あれを300で買うから3千3百でどうだろ?」


「な、何をおっしゃるんですか! あの巡洋艦が300だなんて」


「それくらいでしょ。あれはドラゴンハンターには売れない。軍はあんな古いの買わないだろうし、他の魔法艦隊はみんなブルジョアでしょ? 買うとしたらこの第5魔法艦隊しかない」


「あの最新鋭艦も修理が必要で、その修理費用が予想できないとなると買い手がつかないよ。それを買おうというんだよ。これはチャンスでしょ?」


 畳み掛ける平四郎。店長も一瞬(それでもいいか!)と思ったが、そのリスク承知で仕入れた商品だ。そんな少ない利益では勝負したかいがない。


「勘弁してくださいよ~。こっちも商売なんですから……」


「でも、在庫抱えるとそこから商売が傾くというにゃ」


 トラ吉がそう加勢をする。(在庫)という単語が店長には重くのしかかった。確かに、「いつまでもこの展示エリアにつないでおくわけにはいかない。そんなスペースがあればどんどん船を入れ替えて売った方がいいに決まっている。売れない船をいつまでも置いておいてもそれは0ではなくマイナスであることは、長年商売をしていた店長はよくわかっていた。


(ここで何とか利益を確保してここは手堅くいくか……。いやいや、やはり、最初の目標通りに大きな利幅を……)


「うーん。どうしようかな。船の他にもミサイルや魚雷などの消耗品も調達しようと思ったけど、ここで仕入れるのは止めるか……」


「え……それはちょっと……」


 店長を揺さぶる平四郎。現在の状況は買う方が圧倒的に有利だ。ドラゴンハンターよりは報奨金でまとまったお金を持っているし、第5魔法艦隊というネームバリューもあるのだ。それに武器は高い。消耗品だけでも1000ダカット分は売れるだろう。それがフイになるのはちょっともったないない。


 店長が何やら思案しているので、平四郎は店内に目をやった。展示エリアの隅でゴソゴソと作業している人物が気になった。


「あれは誰です?」


 この中古空中武装艦ディーラー「オリバー」は大きな店であり従業員は何人もいるのだが、その人物は他の従業員とは違って子供だ。見た目、中学生ぐらい。ルキアといい勝負だったのだ。見た目中学生というのは、最近、衝撃を受けたこともあって気になるのだ。


「ああ、あれは私の息子です。おい、お客様がお呼びだ。こっちへ来い」


 そう店長が呼ぶと。走ってきたのは猫っ毛の栗色の髪を無造作に後ろでしばった男の子であった。年は14、15ってところだろう。背は低く、フィンやリメルダよりも小柄で、丸いメガネをかけた少年である。目がパッチリしており、少々まつ毛が長い女顔で、美少年の類だ。


「クリオです。お見知りおきを……」


 そう言った声は、まだ声変わりをしていない高い声であった。平四郎に差し出された手は、機械油で汚れていたんものの、小さくスベスベしていた。思わず、平四郎の心は一瞬ドキリとした。


(おいおい、美少年にドキっとしてどうする!)



平四郎……買い物の「鬼」

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