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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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幕間 トラ吉……またの名は

 平四郎、フィン、リメルダが屋敷の中で話し込んでいる最中、トラ吉とナアムは庭にいた。鳥の鳴き声がするのどかな景色を見ている二匹の猫。猫といっても二足歩行のケットシー(猫型の妖精族)である。

 ただ、二匹の話は穏やかではなかった。これまで平四郎やリメルダに遠慮して話してなかったから、堰を切ったように言い争いに発展している。


「ねえ、黙っていないで! ジェラルド」


「前も行ったけど、オイラはその名を剥奪されたにゃ。今は平四郎の旦那の従者、トラ吉にゃ。ナアム主席補佐官」


「だから、政敵のオージュロ公爵は失脚しました。シトレムカルム様が女王になられたのです。ジェラルド伯爵たるあなたも恩赦で復帰できますわ」


「ダメだ。戻る気もないし、戻りたくもないにゃ。所詮、あそこはオイラのいる場所じゃないにゃ」


「だけど、魔法族の戦いに参加するのも理解できないわ」


「それを言うなら、君もなんで第2魔法艦隊の艦長なんかしているのだにゃ。女王を補佐する首相を支える補佐官だったにゃ」


「それはペットの身分に落とされて、どこぞに売り飛ばされたあなたの行方を探している途中でリメルダに会って友達になったから。この人はこの世界に何か重要な役割を果たしてくれる人だと思ったから、協力しているのよ」


「ふっ!」


 トラ吉はタバコを取り出してそれに火を点け加えた。片足を手頃な岩に乗せて決めポーズをしている。タバコは妖精族で流行っている甘味タバコだ。吸うと甘い香りがして、さらにビタミン補給ができるという健康食品なのだ。


「それはオイラも同じにゃ。東郷平四郎……。旦那は世界を救う御仁だにゃ。オイラはそれを支える運命なのだにゃ。だから、ナアム。幼馴染でかつては婚約者だったかもしれないが、俺のことは忘れてくれにゃ」


「はあ? 相変わらず、カッコつけてるけど、ダサいわね。あなたが追放される前にヤケだと言って、キャバクラで豪遊したツケ、わたしに回したこと忘れたの? なんで、わたしがあなたのスカートめくりしたオプション料を払わなくちゃいけないの!」

 

 いつも穏やかなナアムが切れた。国で起こした婚約者トラきちの不祥事。婚約者としては使い方が許せない。


「いや、それは払おうと思ったら、すぐ捕らえられてしまったからにゃ」


「だから、国に戻って働いてお金返せって言ってます! ああ、でも、どうでもいいわ」


「ど、どうでもいいのかにゃ」

 

 ナアムはつい思い出して怒りに任せてキレたものの、やっぱり、こんな婚約者だめおとこでもここまで探して来たのだ。何とかよりを戻す方がよいと判断したのだ。それにトラ吉には、盗賊団に襲われていた時に助けられた恩がある。豪遊のツケもそれでチャラかもしれない。


「分かりました。あなたは平四郎、わたしはリメルダ様。お互いに見込んだ人類の救世主に運命を委ねましょう。リメルダ様は平四郎にぞっこんですから」


「ああ、あのツンデレちゃん、やっぱり、旦那に首ったけにゃ。でも、旦那はフィン第5公女に首ったけにゃ。その思いは通じないにゃ」


「男と女の関係はどうなるか分からないわ。特にこの世界の存続に深く関わっている人たちですから……。ねえ、ジュラルド」


「その名は剥奪されたって言ったにゃ。今はトラ吉にゃ」


「分かったわ、トラ吉。助けてくれたお礼を言っておくわ。ありがとう……」


 ナアムはブルーピクシーが落ちた時に、トラ吉が土下座までして救出を願ったことをレーヴァテインの乗組員から聞いていたのだ。


「ふん。一応、幼馴染だからにゃ」


 トラ吉はそう言って、携帯灰皿を取り出して、甘味タバコを消した。屋敷のドアから主人たちが出てくるのが見えたからだ。


「なあ、ナアム」

「なんです?」


「その救出の件でチャラというのはどうだにゃ?」

「チャラって? 豪遊したツケ?」


 ナアムは優しい眼差しを向けたが、態度は正反対であった。両手(といっても猫の手だが)でトラ吉のこめかみを挟むとグリグリしだした。


「それとこれとは別だわよ! あんたのツケでこっちはボーナス吹き飛んだのだから! いや、そんなことより、何ですか? スカートピラピラオプション、お尻でグリグリオプション、挙げ句の果てにはパフパフむっちりオプション? いかがわしい遊びをなさって! 婚約者を傷つけた慰謝料こみです!」


「そ、そんなこと言っても、婚約は解消したんじゃ~にゃいのか?」


「解消していません! お母様は激怒していましたけど、お父様が(男には男にしか分からない事情がある。女は黙っておれ!)なんて言って、あなたを探してこいなどと言うんですから。解消していません。今後はわたしはリメルダ姫様と行動しますから、あなたの行動も監視できます」


 ケットシーは、猫の姿をした妖精族である。靴を履いて二本足走行をする。妖精力(魔力)の高さと頭の良さで妖精族の国だけでなく、トリスタン全体で広く活躍していた。ナアムとトラ吉もそういった意味で主人公たちを支えるキーパーソン(キーアニマル?)となるだろう。



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