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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
74/201

第12話 高速巡洋艦レーヴァテインの秘密(5)

明日は休日なのでお昼の12時に公開します。

夜は・・・大阪で作家さんと飲むので未定・・・w 

予約しとけばいいか!

「でも、正確には現在は撃てませ~ん!」

 

 ガクッ……。その場にいた者はコケた。この小さなお姉さん、持ち上げるだけ持ち上げて最後に落とすことが好きなようだ。


「アンナさん、冗談は……」

「平四郎さん。わたしは(現在は)と言いましたよ」


「現在?」


「平四郎さん。あなたはマイスター級の腕があるそうですね。そのマイスターの目でレーヴァテインをどう見た?」


 平四郎は考えた。高速巡洋艦レーヴァテインの良いところはたくさんあるが、一番はカスタマイズをしやすい設計である。今後、どんどんオプションやパーツ交換で成長していく可能性があることであった。


「レーヴァテインは成長していく船よ。パーツ交換やカスタマイズで戦列艦を凌駕する性能の船になる。いずれ、デストリガーも撃てるように改造できるわ」


「改造……」

「まあ、カスタマイズするにはパーツやパーツ素材が必要だけどね」


 アンナは事も無げに言った。指で空中を払うとメイフィア王国の地図を表示する。マッパーという魔法だ。初期魔法で大抵のメイフィア人は使える。現代日本なら、スマホで地図アプリを起動した程度のことであろう。その地図を見ると一箇所に光る点が現れる。


「ここに古代の遺跡が発見されたそうよ。古代といっても500年前らしいけど。空中武装艦や基地が眠ってるとのことよ」


 平四郎はその位置を見て思い出した。フィンの母親が言っていたマグナカルタの遺跡の話と同じだ。


「聞いた話によると、周りはファイアリザードの巣、第一段階はこれを討伐しなくてはいけない。そして、遺跡の入口はには古代のガーディアンが数体設置してあるという噂。中に入るのは命懸け」


「500年前の人は意地悪です」


 フィンが珍しく口を挟む。しかも噛まずに。


「でも、入れたらお宝よ。パーツは取り放題。そして、汎用性が高いレーヴァテインはそれらのパーツを使うことができるわ」


「どんなパーツがあるです?」


 平四郎はアンナに尋ねた。このお姉さんは500年前の空中武装艦のことを知っているようだ。眠っているパーツについてもある程度見当がついているのであろう。


「いろいろあるけど、まずはエンジン。今のエアマグナムエンジンもよくできたエンジンだけど、500年前にはそれを超えるシャインデスプロエンジンなるものがあるそうよ。馬力は2倍以上。燃費も30%はいいとのことよ。どんな構造か想像もつかないけれどね」


「それいいねえ」


 平四郎のメカオタクスイッチが入った。そのエンジンを持ち帰ってレーヴァテインに取り付けてみたい。


「あと、これは文献からだけであるかどうかは分からないけど、魔法ステルスとミラーを発動できるシールドパーツがあるって話」


「ステルスとミラー?」


 リメルダが呟いた。平四郎はリメルダの整った顔をに質問をぶつける。


「リメルダ、知ってるの?」


「ステルスもミラーも失われた魔法よ。ステルスは魔法レーダーに映らない魔法。ミラーは視覚からも消える魔法よ。空中武装艦を文字通り消すことができる」


「そんなことできたら、隠密行動ができるじゃん」


「もし、それができたら第3魔法艦隊に勝つ方法が見つかるんじゃない? 例えデストリガーが撃てなくても」


 そうアンナが片目を閉じた。このお姉さん、よいことを教えてくれる。だが、設計者なら最初から無敵の艦を作ってもいはずだ。この天才ならそれができたはずだ。


「私は解せません。あなたが天才であることはレーヴァテインの設計を見ればわかります。それならなぜ、最初から最強の船にしなかったのです?」


「第2魔法艦隊のリメルダ公女に第5魔法艦隊の旗艦のことで怒られるなんて思いもしませんでしたね。まさか、リメルダ様は平四郎に……」


「ば、バカ言わないで」


 リメルダはそっと平四郎とちょっと膨れたフィンを見る。リメルダは平四郎のことが好きで本人にも(お嫁にしてください)とも宣言しているし、友達となった今の状況でも、恋していることは誰の目にも明らかだが、他人から言われると否定してしまうリメルダであった。


「平四郎とフィンは友達です。友達のために私は怒っているのです」


(はいはい……。友達こいびととライバルね)


 アンナはリメルダの強がりを微笑ましく思っている。見た目は中学生だがしっかり年を取っているものの余裕だろう。


「最強にしなかった理由……。そりゃあ、決まってるじゃない。面白いからよ」



(だあああああああっ!どついたろか、この見た目JCの26歳)

 

 ギャクが滑った微妙な空気を慌ててアンナは打ち消す。


「嘘よ、嘘。あなたたち、パンティオン・ジャッジの行われる意味はわかっているのよね」


 それはもうすぐ復活するという世界を滅ぼすドラゴンを倒すために、艦隊同士が切磋琢磨をし、ドラゴンに対抗する力を付ける。正確には艦隊を率いる勇者を育てると言っていい。才能で選ばれた公女が戦いを繰り返し、レベルを上げることでドラゴンと戦う力を付けるために行うのがパンティオン・ジャッジなのだ。


「だから、あえて完成した船にしなかったの。勝って成長していくことでこの世界を救うの。パーツ集めはその第一関門。無論、今回だけではデストリガーを使うような改造はできないけれど。とりあえず、第3魔法艦隊にはなんとかなるんじゃない?」


「そんな……ひどい!そんなのフェアじゃないわ! 他の公女はみんな使えるのよ。ただでさえ、火力不足の第5魔法艦隊がそんなハンディキャップがあるなんて!」


 リメルダはまるで自分のことのようにアンナに食ってかかる。平四郎はそんな彼女を見ていい女の子だなと思った。第3魔法艦隊にリベンジする理由以上にこの第5魔法艦隊のことを考えているようだ。フィンは黙っている。何か考えているようだ。


「そういうハンディを乗り越えても勝つ力がなければ、世界は救えないと思わない?魔力、才能、作戦、資金力、そして運、すべてがなければ、あんなレジェンドドラゴンなんかと戦えるわけがない」


 そう言われると、実際にM級のドラゴンと戦ったリメルダは黙った。アンナの言うことはもっともだ。奴らとの戦いはそんな甘いものではない。人の努力や才能、優れた装備、人材等など超えた何かがなければ、太刀打ちできないのだ。


「リメルダさん、フィンちゃん。これだけ、聞ければ十分だよ。元々、第3魔法艦隊戦にデストリガーは計算のうちに入ってなかったし、決勝戦で使えればそれで十分。それより、アンナさん」


「なに?」

「古代の遺跡の話、ほかの人には喋ってないよね?」


「私たち設計士には、厳密な守秘義務があるわ。このことは一切話していない。フィン公女のお父さんはその遺跡の発掘担当らしいけれど、お父さんにも話していないわ」


「アンナさん、このことは内密に。じゃあ、その遺跡に行ってきます」

「了解」


「お願いします。フィンちゃん、リメルダ、行きましょう」


 帰り際にアンナは、微笑みながら、こう一行を送り出した。


「もし、第1魔法艦隊に勝つことができたら、その時には、わたしに相談しなよ。設計士としてマイスターに力を貸すよ。他種族との戦いにはそれなりの戦力補強が必要だろうから」


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