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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
2巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 2
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第12話 高速巡洋艦レーヴァテインの秘密(3)

「東郷平四郎艦長、今度の作戦はどうするのですか?」


 会議室を出るとすぐメイフィアタイムスに記者ラピスが平四郎に絡んできた。彼女は前回の第4魔法艦隊との戦いの迫真のレポートが好評で、正式に第5魔法艦隊付きの記者になっていた。レーヴァテインに乗船できるのは彼女だけで、そう言った意味ではスクープを取れる絶好のポジションにいた。

 本当はこのような質問は、第5魔法艦隊提督のフィンに聞くべきだろうが、フィンが寡黙で話しベタキャラであることを彼女は知っているので、必ず平四郎に取材するのだ。


「ノーコメントよ、艦長」


 そう後ろから出てきたミート少尉が牽制する。


(ノーコメントと言ったって、作戦なんか決まっていないだろうが!)


 心の中で平四郎は思ったが、女性に優しい平四郎としてはラピスを無視できない。そこで、正直に作戦がないことを伝えることにした。


「戦力差がありすぎて、作戦なんて思いつかないよ。ラピスさん、なんかいい案ない?」


 見事な切り返しである。こう言われてもただの新聞記者に過ぎないラピスは、答えようがないはずだ。だが、ラピスはこう答えた。


「そういえば、ハウザー教授が言っていましたよ。レーヴァテインを設計したハメル氏が鍵だって」


「設計した? レーヴァテインを?」


 平四郎は聞き返した。


「オリバー・ハメル。メイフィアでは有名な空中艦の設計士よ。独特の設計思想で面白い空中艦を他数製造しているわ。まあ、変人で有名で正当な評価をされていないけど」


 そうリメルダが補足した。


(なるほど……空中艦の設計士には会ってみたい)


 メカオタクの平四郎にとっては、空中艦の設計士と話すことで、まだ、自分が考えつかないようなアイデアが浮かんでくるのではないかという未知への好奇心がフツフツと湧いてくるのであった。


「僕は以前から、おかしいなとは思っていたんだ」

「へえ~っ。 何がおかしいのだ?」


 ナセルが興味深そうに平四郎の言葉に食いついた。リメルダはにこにこと平四郎の方を見ているだけだったし、フィンは相変わらず不機嫌そう(相変わらず平四郎の隣にリメルダがいるからだが)だし、ミート少尉は(また始まったか……)という態度だ。平四郎のメカオタク話に付き合ってくれるのは、同じ趣味のルキアかやはり男子のナセルであろう。


「ああ。考えても見てくれ。パンティオン・ジャッジに出場する艦隊の旗艦が、ただの巡洋艦のわけがないのだろう。そもそも、世界を救うヒロインを決定するのがこのパンティオン・ジャッジの目的なら、フィンちゃんだってその資格があるはずだ。そのヒロインが座乗する旗艦にドラゴンを倒す性能が備えられていてもおかしくはないだろう?」


「そう言われればそうだな。初めは単に第5魔法艦隊だから……と思ったが、旗艦は与えられるのだから、平等なはずだ。いくらなんでも、ドラゴンに歯が立たないような艦を与えられるわけがないよな」


「となると、レーヴァテインには僕らが知らない秘密があるはず」


(そんなものあるのか?)


 ナセルはそう思ったが、平四郎が目を輝かせてそう言うと、そんな気がしてくるから不思議だ。


「ハメル氏でしたら、クロービスの郊外に住んでいるわ。よろしければ、私が案内してあげてもいいわ」


 そうリメルダが平四郎を誘う。首都クロービスまでは定期便で3時間の距離である。今日中に行けないことはない。


「へ、平四郎くんが行くなら、わたしも行きます! わたしもその設計士に会ってみたいです……」


 そうフィンがリメルダを見て言う。リメルダは「あげてもいいわ……」と恩着せがましいセリフをはいた割には、さりげなく平四郎の隣、いつものポジションにいる。フィンは何だか面白くない。


「あら、第5魔法艦隊提督は艦隊の補修やら、次の戦いの準備で忙しいのではなくて?」

 リメルダは意地悪そうな目をフィンに向けた。暗に(来なくていいわよ……根暗娘さん)と語っていた。リメルダは意地の悪い女の子ではないが、フィンに対しては自然とそういう態度を取ってしまう。大人しいフィンは、こういう場合、いつまなら自分を封じ込めてしまうのだが、平四郎絡みだと諦めない。


「い、忙しくありません。それはミートに代行してもらいます」

 そう言った。第5魔法艦隊提督の言葉はイコール絶対命令である。急に名指しされたミート少尉は驚いた。副官だから仕事は手伝うが以前より確実に艦隊は大きくなっている。全て丸投げされてはたまらない。


「え? フィン、何、言ってるの? 全部わたしに押し付ける気?」


 ミート少尉は慌ててそう言ったが、フィンの目を見て(こりゃ、だめだ!)と思った。もう平四郎以外見てない。親友の自分がどんなに忙しくなるか、全然考えていないのだ。


(平四郎をライバルと二人っきりにはさせられないわよね。仕方がないか……)


「それに中古ショップで新しい艦を購入する必要があるです……。だから……」


 小さくなるフィンの声。しかし、息を吸って思いきって言葉を続ける。


「私も平四郎くんと一緒に行きます! これは第5魔法艦隊提督としての命令です」


 リメルダは何だかおかしくなった。どうやらフィンも平四郎に首ったけのようだ。平四郎もフィンが好きと言っているから、完全に相思相愛である。入り込む余地はこれっぽっちもないのだが、それでもリメルダは平四郎のことを諦めきれないと思った。初めは軽い気持ちで、側室でよいなどと言ったが、側室になるのもかなり難しそうだ。


 リメルダは平四郎の腕にキュッとしがみついた。こうやって積極的にアプローチしてもフィンには勝てないのだという思いが、この勝気な少女を臆病にしていた。そんな二人の様子を全く考慮しない平四郎。頭の中はレーヴァテインを設計したという人間に会って、空中武装艦について語り合いたいという思いだけであった。


 結局、平四郎は自分が立てた綿密な補修計画をルキアとミート少尉に託し、首都クロービスにフィンとリメルダに従者のトラ吉、ナアムと共に行くことになった。


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