第10話 リメルダ艦隊の危機(2)
おはようございます。
今日も朝投稿。知り合いのヒーロー作家さん(誰でしょ?有名なあの作品w)に朝の8時ぐらいの投稿も人が集まりますよというアドバイスもらいました。夜投稿派でしたが、朝も投稿してみた。なるほど!
「左舷に2番艦、3番艦を緊急移動、包囲網を突破されるな! シールド全開」
「ダメです!ファイアブレス来ます!」
第12パトロール艦隊司令ウルバヌス中将は、火の玉の三連発を受けて爆発炎上する僚艦を見た。衝撃が旗艦アクロスを大きく揺るがす。破壊されたパトロール艦が位置していたところを大きな翼をはためかせた巨大な生物が突破していく。全長109mのパトロール艦とほぼ同じ大きさ。赤いウロコに覆われたレッドドラゴン……レベルはM級であった。
この付近をパトロール中に発見した時はS級であり、大きさも3割方小さかった。対ドラゴン殲滅マニュアル通り、艦隊で半包囲し、都市から離れた山脈地帯に追い込んだところまではよかった。対レッドドラゴン用の氷結系魔法ブリザードレベル5による一斉攻撃で仕留めるはずだった。
だが、各艦から放たれた魔法攻撃が命中する前にドラゴンの体が突如光り始め、光が四散した時にはM級のドラゴンへ変貌していた。
(よりによって、クラスチェンジの場面を目にすることになるとは……)
ウルバヌス中将はレアなケースに遭遇する機会を得ると同時に、人生最大のピンチを迎えたことを自覚した。自分だけでなく、第12パトロール艦隊全部にいえることだが。
ドラゴンは成長していくにつれて、S級、M級、L級と体が大きくなっていくとされた。これは士官学校で教わる基礎的な知識だ。
だが、長い戦歴を誇るウルバヌス中将でさえ、Sクラスしか対戦したことはなく、250年前の記録でしかそれ以上の大きさのドラゴンについての知識はなかった。ましてや、クラスチェンジする瞬間を目撃するとは……。
ドラゴンのM級への成長は第12パトロール艦隊にとっては、悪夢でしかなかった。S級ならば容易に打撃を与えられる魔法弾が簡単にはじかれるのだ。ドラゴンはただの空飛ぶ恐竜ではない。相当の知性を備え、魔法を使ってくる。常に魔法障壁を身にまとい、レベルの低い魔法攻撃は弾き飛ばす。口からはく炎のブレスはファイヤーボールレベル10以上の破壊力で、パトロール艦隊の魔法障壁は紙のように消し飛ばし、直撃された船は爆発して地上へ落ちていくのだ。
「司令、完全に突破されました!」
「いかん!バーニングカム市に向かう気だ! 全艦反転せよ。追撃する」
ドラゴンはなぜか、人の住む街を襲う。上空から絨毯爆撃のように攻撃し、破壊するのだ。なぜ、そんなことをするのかは不明で、この世界の人間を滅ぼす災厄でしかなかった。
S級であれば、中型の台風並みの被害であるが、M級では大型台風の来襲に匹敵するのだ。
「すぐさま、応援要請を! 近くのパトロール艦隊、打撃艦隊に連絡せよ! 緊急事態だ。バーニングカム市にも連絡。住民に避難勧告を……うっ!」
キラッっと光った途端に、ドカーン、ドカーンと遠くで2つの爆発音がした。
「に、2番艦、3番艦、撃沈しました! 奴が反転してきました」
「クククク……。ドラゴンには知恵があると言うが、知性はせいぜい動物レベルだな。まずは目の前の獲物を狙うということか。住民の非難する時間は稼げるが……」
ウルバヌス中将は少しだけ笑みを浮かべたが、また厳しい表情に戻った。7隻のパトロール艦も既に3隻が撃沈され、今も必死の砲撃で反撃するにも関わらず、1隻が尻尾で艦体を真っ二つに折られて落ちていくのだ。コイツに勝つには打撃艦隊の戦列艦クラスによる集中砲撃とデストリガーによる殲滅しかない。このパトロール艦の火力では倒せない。
(戦列艦や打撃艦隊を他数製造してドラゴンに備えたいところだが、ハードはそろってもそれを扱う人間、魔力の高い人間が不足している。このパトロール艦隊ですら、魔力の高い人間を揃えるのに苦労しているのだ。近く復活するレジェンド級が復活したら、この世界どうなってしまうのだ……人は滅びる運命なのか……)
爆発炎上して落ちていく味方艦、直撃はまぬがれたがドラゴンの放つ火炎弾に主砲を破壊されて、反撃する術が失われた自艦を見て、ウルバヌス中将は死を覚悟した。
ドラゴンが大きな口を開けた。大きな輝く球状のものがどんどん大きくなっていく。とどめを差すつもりだ。
(もはや、これまでか!)
中将がそう思った時、ドラゴンの体がうねり、体勢を崩した。凄まじい咆哮をあげる。
「だ、第2魔法艦隊です! 第2公女リメルダ様です、助かった!」
通信兵のその言葉は、艦橋全員の想いを代弁していた。
「第1擊、ドラゴンバスター10発命中。不意をついたので魔法障壁を80%無効化に成功。ターゲットは混乱中です」
副官の報告を聞くとリメルダはすぐ次の命令を下す。ドラゴン相手の戦いは一刻も猶予がない。リメルダはドラゴンとの戦いは初めて出会ったが、これまで幾度となくシュミレーションを重ね、魔法艦隊の指揮官として恥ずかしくない能力をもっていた。
「反撃が来るわよ! 各艦、防御体制。戦列艦は氷系アイスブランドレベル10で攻撃する。十分魔力を注入して一斉に攻撃する。攻撃態勢までどれだけかかります?」
「おおよそ、3分」
「3分間、巡洋艦と駆逐艦はドラゴンバスターを各自最大レベルで射撃して」
リメルダは的確な指示を告げる。第2魔法艦隊は戦列艦4隻を配備し、巡洋艦6隻、護衛駆逐艦10隻を従える大艦隊である。それがドラゴンに向けて一斉に攻撃する態勢に入る。不意をつかれたレッドドラゴンは、しばらくのたうち回っていたが、新たな敵に反撃体制に入る。火炎弾を2、3発はいてきたが、第2魔法艦隊の魔法障壁に跳ね返されると、急速に接近し、するどい爪や牙、尻尾で船を破壊しようとする。各艦はそれをかわし、距離をとってドラゴンバスターの魔法の洗礼を与える。
魔法弾ドラゴンバスターは、無属性の攻撃魔法で光り輝く聖なる無数の剣でドラゴンの体を突き刺してダメージを与える。発射直後は光ビームのように進み、着弾直前に光が拡散し、無数の光の剣が突き刺さるのだ。対ドラゴン用に開発された術式だが、ダメージは小~中程度で、これで倒すには時間がかかった。
(ドラゴンの魔法障壁を破りやすい利点はあるが)
「アイスブランド、レベル10まであと5秒!」
「戦列艦の主砲発射後、巡洋艦、駆逐艦は各自攻撃するのよ!」
リメルダの命令と共に戦列艦、巡洋艦が氷系攻撃魔法のアイスブランドの発射準備がされる。戦列艦が撃つのはレベル10であるので、Mクラスドラゴンの魔法障壁を破り、確実にダメージを与えられるだろう。その後、時間差をつけて撃てば巡洋艦クラスのレベル7でも魔法障壁を破れる。さらに駆逐艦から魔法魚雷の波状攻撃を仕掛ければさすがのドラゴンも死ぬだろう。
リメルダはフィンの特殊能力「マルチ」のように全ての属性魔法を使うことはできなかったが、「トリプル」という能力をもっていた。得意魔法属性が3つあるのだ。「氷結系」「火炎系」そして「毒系」と言われる特殊な系統な魔法だ。
ターゲットのドラゴンはレッドドラゴンという種類で低温に弱い。選択するなら「氷結系」であろう。アイスブランドは氷結系の中でもポピュラーで使える術式であった。
「発射準備完了! 姫様、いつでも撃てます!」
艦長のナアムがそうリメルダに告げる。それを待っていたかのようにリメルダはドラゴンを指差し、立ち上がった。
「てーっ!」




