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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
51/201

第9話 VS第4魔法艦隊 エアズロック空中戦(3)

大激戦……でも、主人公の手の内。

アドミラルよりもリリムちゃんはかなり手ごわい感じに仕上げました。

 高速巡洋艦レーヴァテインと護衛の駆逐艦が一斉に岩から飛び出した。第4魔法艦隊分艦隊の左側面である。


「主砲、副砲……てーっつ!」


 フィンが提督の指揮棒を前方に指した。ナセルがボタンを押す。主砲から青い光球が発射され、それが渦を巻くように高速で軽巡洋艦アンダンテに直撃する。


「艦長! 敵です! 直撃が来ます!」

「ど、どこからだ?」


 第4魔法艦隊の分艦隊の指揮を任せられたバッジョ少佐は、敵の姿が発見できないことにイラついていたが、そのイラつきもすぐに解消された。レーヴァテインから放たれたエアカッターが前方の駆逐艦の魔法防御壁を破り、艦橋に直撃したのだ。

 

 エアカッターは船体を鋭く切り裂き、破壊するため、着弾したところの機能が破壊される。4発命中したところは、艦橋司令部と主砲、そして、艦を浮遊させる中枢部分であった。やがて、切り裂かれたところから、火災がおき、徐々に下降していく。


「こそこそと隠れて攻撃してきやがって!」


 バッジョ少佐はそう悪態をつく。敵は攻撃を受けないように分厚い浮遊石の後ろに隠れて攻撃してくる。駆逐艦は安い魔法魚雷をこちらの行動範囲いっぱいエリアを想定して放つので回避ができない。さらに敵の主力艦である高速巡洋艦は戦列艦クラスの45インチバスター砲を1門持っている。これが驚異であった。魔法弾レベル10まで撃てるからだ。


 しかも、炎属性の「ファイヤーエクスプロージョン」が来たかと思うと氷属性の「コールドバレット」が来るという攻撃で効果的なシールドが張れないのだ。


(あれがフィン公女のマルチ能力か……。厄介だ)


 公女が乗っているから魔力も豊富で強力な攻撃を連発することができることも不利である。だが、公女とて魔力が無限大にあるわけではない。これだけ連発すればいずれ底をつくはずだ。


「敵の攻撃は強力だが、所詮は巡洋艦。シールドは弱いはずだ。敵旗艦に集中攻撃を浴びせろ!」


 バッジョ少佐は残った艦艇にそう命令する。だが、撃った砲撃は虚しくもレーヴァテインのシールドの前にはじかれる。同時に第5魔法艦隊の反撃。2隻の駆逐艦が第5魔法艦隊の駆逐艦から放たれた空中魚雷を受けて大破する。アンダンテも最初の砲撃で2発が被弾した。幸い、致命傷ではなく、反撃の主砲を放つが浮遊石に隠れて命中しない。さらに駆逐艦1隻が至近距離から空中魚雷の直撃を受けて、コントロール不能で下へ落ちていく。


「馬鹿な……強すぎる」




「バッジョの奴、苦戦しすぎだ」


 タウンゼット大佐は苦虫を噛み潰した表情で戦況を見守った。当初の予定では交戦状態に入ったところで、数で圧倒し敵を上空に追い立てるはずであった。だが、先手を取られて思わぬ被害を受けている。浮遊石が多数あり、航行に気を使うためにお互いに大胆な艦隊運動ができないとタカをくくっていたが、第5魔法艦隊の方がたくみに艦を操り、岩を盾に攻撃を繰り返している。そのために被害が増している。


 これは平四郎がレーヴァテインに装備したセンサーとカレラ中尉の巧みな操縦によるものと、3隻の駆逐艦を操るフィンの手柄である。


「大佐、このままでは分艦隊が全滅するよ。敵の位置は分からないの?」


「浮遊石が多数でレーダーではとらえられません」


「目視して長距離攻撃を上空から行ったらどうなの?」


「敵の位置が分からないのです」


 タウンゼットはリリムの意見を無視した。所詮はお飾りの提督である。リリムには艦隊の象徴としていてくれれば十分だとタウンゼットは思っていた。それだけに、自分がこの状況を打破してやることが、大好きなアイドルへの贈り物だと思っている。だが、岩に隠れて攻撃を繰り返す第5魔法艦隊の動きに翻弄されて、分艦隊は壊滅しつつあるし、上空に待機する本艦隊はなす術がない。上空から浮遊石地帯に突入するにも、第5魔法艦隊が設置した機雷群が邪魔ですぐには動けないのだ。


「大佐。敵の位置が分かればいいの?」


 リリムがそうにっこり笑って尋ねるので、タウンゼットは(はい)と答えた。すると、リリムは浮遊石地帯に音感センサーを放つように命じた。そして、席を移動するとイヤホンを付けてセンサーが感じ取る音を聞く体制に入った。


「提督、一体なにを……」


「しーっ。静かに。上空の本艦隊は一切音を立てないように……」


 リリムがそう命ずる。下の空間で分艦隊と第5魔法艦隊が交戦する音しかしない。時折、爆発して落ちていく分艦隊の船が音と目で確認できる。


「見つけた! まずは、駆逐艦から。W19 E31。全艦隊、一斉砲撃よ」


「提督、そこには浮遊石しかありません。かなり大きめの……」


「その後ろに隠れているのよ。主砲で岩ごと破壊するのよ!」


「わ、分かりました。全艦隊、目標に向けて照準」


 上空の第4魔法艦隊は下方に向けて照準を合わす。旗艦を含めて3隻の戦列艦と2隻の巡洋艦、2隻の駆逐艦がある。


「撃て!」

 

 主砲による魔法弾とミサイルが一点に向かう。それは周りの浮遊石を吹き飛ばしつつ、目標の岩を破壊し、その後ろに隠れていた駆逐艦を一瞬で撃破する。


 凄まじい音と振動でレーヴァテイン全体が揺れる。


「2番艦、撃沈されましたでおじゃる。上空の本艦隊からの砲撃でおじゃる」


「馬鹿な……なんでこちらの場所がわかるの?」


 ミート少尉が衝撃に体を何とか支えて叫ぶ。レーダーでは絶対分からないはずだ。デタラメに撃ってたまたま当たっただけとは考えられない。一点集中の集中砲火であったからだ。


「ありゃ、こっちの位置を見つける手段があるにゃ」


 トラ吉がそう平四郎に言った。平四郎もそう直感した。どういう仕掛けか分からないが、敵がこちらの位置を正確に掴み、上から一方的に攻撃してくることができるのだ。平四郎は艦長として判断を迫られる。


「ナセル、敵の分艦隊は?」


「まだ、軽巡洋艦と駆逐艦が2隻頑張ってるぜ」


 次の手を打つにしても目の前の敵艦を仕留めなければダメだ。平四郎は左にいるフィンに顔を向けた。


「フィンちゃん、魔力は大丈夫?」

「まだ大丈夫です。でも、駆逐艦の移動はどうしたらいいのでしょう」


「とりあえず、岩の後ろに隠れたまま動かさないで。もしかしたら、動く音で判断しているかもしれないから。分艦隊はレーヴァテインでしとめよう」


 平四郎の作戦案にミート少尉は感心してうなずく。上空の攻撃は駆逐艦なら一撃で破壊されるおそれがあるが、レーヴェテインなら1、2回は耐えられるだろう。大きな浮遊石を盾にしているのだ。それに正面の主力艦は軽巡洋艦でこのレーヴァテインよりも火力の面では劣る。正面から戦っても充分勝てるであろう。


「艦長、それが正解。上空の敵はこちらの攻撃で位置を掴んでいると思う。レーヴァテインなら長距離攻撃は数度は耐えられる。パリムちゃん、シールドは十分?」


「十分でおじゃる、ミート少尉」

「艦長、フィン提督、守備体制は十分です」


「了解、ミート少尉。それじゃあ、よし、ナセル、軽巡にフレイムバレットレベル10で仕留めよう」

 そう平四郎は命令した。自分が改造してパワーアップした45センチバスター砲が敵の船に標準を合わせる。


「了解! これでシールドは終わりだ!」


 ナセルが攻撃ボタンを押す。新しく装備した45センチバスター砲が火を吹く。レーヴァテインは戦列艦より火力が劣る巡洋艦だが1門だけ戦列艦並みの主砲を装備しているのだ。放たれたフレイムバレットは軽巡洋艦アンダンテのシールドを破り、艦本体に直撃する。炎が燃え広がり、あっという間に2つに折れて爆発した。


 乗組員はかろうじて脱出ポッドで逃れたようだ。

 

 だが、こちらにも衝撃が伝わる。レーヴァテインが大きく揺れる。すぐ近くに待機していた護衛駆逐艦が浮遊石ごと爆発炎上したのだ。上空からの攻撃だ。


(やっぱり、敵はこちらの位置が分かるようだ)


「ナセル、全砲門開け、フィンちゃん、3番艦も岩から出て交戦。魔法魚雷を射出。一気に敵の駆逐艦を沈める」


「了解だよ~ん」

「わかりました。やってみます」


「フレイムバレットレベル10、撃て!」


 火力の違いは歴然である。巡洋艦の前では駆逐艦は歯が立たない。しかも、スピードを生かしてちょこまか動けば勝機もあるが、浮遊石と機雷に囲まれたせまい回廊での対峙だ。


パワーゲームに持ち込めば、レーヴァテインの勝ちは動かないだろう。



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