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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
48/201

第8話 リメルダさんのアプローチ(4)

「姫様、姫様」


 ケットシーのナアムがリメルダの服の裾を引っ張る。それで我に返ったリメルダ。ナアムの顔と平四郎の姿を交互に見て、顔がだんだん赤くなっていく。

「べ、別に助けてもらわなくても私の魔力で防げました」


 平四郎に聞こえるようにリメルダは独り言を言う。倒れている暴漢たちを見渡して、改めて平四郎が普通の人間ではないことを実感する。ドキドキする感触を抑えるようにリメルダは両手で胸を抑えた。


「そうなの?」


 戦闘が終わり、コネクト状態が解けた平四郎はいつもの表情に戻った。先ほどの無敵ぶりとは打って変わった普通の表情だ。リメルダも第2公女で魔力は人並み以上である。集中すれば魔力を使ってかわせたかシールドで防ぐこともできただろう。だが、あの瞬間には無理だ。リメルダは平四郎に命を救われたと強く思った。


(キュン……)


 リメルダの心の中で何かが鳴った。


 ぷく~っ

 

 フィンは頬をふくらませた。状況が状況だから、仕方がないとはいえ、自分の平四郎が他の女の子を守るのは面白くないのだ。そんな自分は醜いと思うのだが、それでも何だか膨れてしまうフィンであった。


「ゴ、ゴホン。とにかく、お礼を言います。あ、あ、ありがと……」


 リメルダは何だか照れてしまう自分が不思議であったが、こんな気持ちは初めてであった。自分がどんどん、この異世界の男に惹かれているのだと感じた。


「へ、へいちろ……平四郎くん、行くなら行きますです」


 フィンにそう言われて平四郎は当初の目的である品物を買いに行くイベントに戻った。何だかモジモジしだしたリメルダと何だか機嫌の悪いフィンを連れ立って、町のパーツショップをはしごするのであった。


 その日のうちにリメルダは第2艦隊を率いて出港していった。最初から平四郎に会いに来て、どう見てもデートであったのだが、本人は貴重な情報を得たと称して終始ご機嫌であったという。


「さて、ここからがお楽しみタイムだ」

 

 平四郎は本日手に入れたパーツを眺めて、港に繋留されているレーヴァテインを見る。これから始めるカスタマイズにウキウキしてくる。


 まずは駆逐艦の整備。買った船を修理して使えるようにする。

 次に旗艦レーヴァテインの改造。主砲の取り替えにドラゴンシールドの装着と調整。そして、リメルダからもらったコーティングの施工。これには大変な手間がかかるが、平四郎はある方法で作業をしようと考えていた。


 不眠不休のメンテナンス作業が始まった。

 この平四郎の鬼気迫る姿に作業を手伝った職人たちは、(これが異世界から来た人間の力)(マイスターとなるとすごいわ~)と感心せざるを得なかった。


 10日間で整備を終えた平四郎はドックの床に大の字で寝ていた。これだけ集中して作業したのは久しぶりである。後は物資を積んでエアズロックに向かうだけである。1日前には到着して第4魔法艦隊を迎え撃つことができるであろう。後はミート少尉に任せておけば十分だ。

 

 目を閉じて熟睡しようとすると不意に温かいタオルが顔に当てられ、優しく顔を包む手の感触を感じた。後頭部にやわらかい感触を受ける。ゆっくり目を開けるとフィンの顔が見えた。


「んっ……」


 目が合って顔が真っ赤になるフィン。平四郎もフィンの顔が近くにあって驚いた。


「フィンちゃん……」


「ら、らめえ」


 いつもの如く噛んだフィン。慌てて言い直す。


「ダメです。平四郎くんは疲れているのだから寝なきゃ」


 どうやら床で寝ている平四郎に膝枕をしてくれたようだ、いつの間にか毛布も体にかけられている。


「フィンちゃん」


 いい匂いがする。平四郎はあの城のバルコニーで約束したことを思い出した。パンティオン・ジャッジに勝ったらフィンと結婚する約束なのだ。


「しばらく、こうしています。体を休めてください。本当はベッドで休んでもらいたいけど……」


「ここでいいよ。もう疲れて一歩も動けないから……。それにとっても癒されるから……」


 フィンの優しい手つきで髪や顔を撫でられて、平四郎は気持ちよくなってしまった。まぶたが閉じられ、天国にいる気分である。


「平四郎くん……寝顔もかわいい。大好きです。平四郎くん」


 フィンは平四郎を膝枕で寝かせた。ミート少尉が呼びに来たのでわずか1時間足らずであったが、彼女も幸せな気分であった。


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