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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
44/201

第7話 VS第4魔法艦隊 準備編(6)

アドミラルよりも戦艦の改造描写を足してみました。毎日、少しずつですが読者が増えて嬉しいですね。

 クロービスを出航後、二時間程でパークレーンの港に入港した。そこには平四郎の注文を受けて手配したパーツを揃えてバルド商会のバルドが待っていた。


「平四郎、注文していたパーツは持ってきたが、45センチバスター砲を巡洋艦に装備するって正気か?」


「親方、僕は正気ですよ。無論、重量バランスを考慮しなくてはいけないし、それに合わせてエンジンの出力を上げる工夫もしなくてはいけない」


「うむ。まあ、お前のことだ。うまくやるだろう。それにしても随分くたびれた船を購入したじゃないか?」


 バルドは曳航されてきた駆逐艦を見てそう言った。このパークレーンを出港した時にはいなかった船なのでクロービスで調達した船がそれであるとすぐ分かった。


「見た目はボロいけど、エンジンは傷んじゃいないです。高速駆逐艦用のエアマグナムエンジン初期型です」


「おお。珍しいな。二十年前と古いが今でも通用するエンジンだ。武装はどうする?」


「予算がないので空中魚雷を主武器にします。改修費用は大丈夫だよね? ルキア」


「大丈夫というほどじゃないけど、集めたパーツは中古の掘り出し物をゲットしたからね。何とかなるけど、その代わり、ジャンク屋から変なもの押し付けられたよ」


 そう言ってルキアは車両を指差した。大量のミサイルが積まれている。100発はありそうだ。首都クロービスに行く前に注文していた部品と一緒にそれは運ばれてきた。


「あれは何?」

「ゴミだな」

「ゴミだにゃ」


 腕組みするバルドの前に小さな猫が同じポーズを取っている。


「何だ? ケット・シーじゃないか。珍しいな」

「親方、紹介するよ。トラ吉っていうんだ」


「お初にお目にかかります。平四郎の旦那の従者ですにゃ」


 そう言ってトラ吉は手を出してバルドと握手をする。トラ吉は誰とでも仲良くできるようだ。レーヴァテインの乗組員にもすぐ溶け込んだが、バルドにもすぐ受け入れられた。


「それにしても、変なものを押し付けられたにゃ」


 無理を言ってパーツをかき集めた代わりにただ同然で押し付けられた代物だ。タウルン製のミサイルであるが弾頭がなく、魔力供給装置で一応、ロケット型推進力で飛ぶものの方向がデタラメに飛ぶ欠陥品である。推進力として何か活用できないかと思ったが、一回限りの使い捨てなので廃品である。ジャンクショップも置き場に困ってバルドに売りつけたのであろう。


「推進力はどれくらい?」


 平四郎は積まれたミサイルの表面を撫でてそう尋ねた。表面の光沢を見る限り、かなり新しいものだ。新品同様で使えないとは残念である。


「それが意味なく出力があって、そのおかげでコントロールができないのだ」


「使えるな……」

「旦那、なんか思いついたにゃか?」


 平四郎の頭の中にアイデアが浮かんだのだ。これはうまく使えば戦力になる。


「ルキア、トラ吉、あれを使ってエアズロックに行ってくれないか?」

「平にい?」

「旦那?」


 平四郎はルキアとトラ吉の耳元でごにょごにょと作戦を伝える。ルキアの表情が驚いた顔になる。トラ吉は感心して頷いた。


「廃品をそんなことに使うなんて! 平にいはやっぱり天才だね」

「さすが、異世界のマイスターにゃ」


「費用面は大丈夫?」

「何人か職人が必要だけど、何とか経費内にできるよ。細かい仕事はそこの体が小さいケット・シーが役に立つだろうし。何しろ、原材料はタダ同然だったからね」


「うん。駆逐艦を一隻使っていいから。1番艦は今日中に整備する。明日にでも行ってくれるか?」


「O.K.だにゃ。旦那」

「準備はそんなにかからないよ。2日もあれば十分。来週早々に行くよ。それより、あれはプレゼント」 


 そう言ってルキアが指差したのは、大きなシールド型のパーツ二対である。


「間に合ったのか?」


 実は前回の航海で倒したドラゴンの死体を素材に、パーツを加工制作する工場に制作を頼んでいたのだ。ドラゴンの硬いウロコを使った(ドラゴンシールド)である。これは魔力の触媒となり、防御シールドを発生させるパーツである。通常シールドに付加効力を加え、防御力を50%アップさせる。有名なパーツであるが新品で買うと高い。今回は材料持ち込みで、パークレーンの町工場で作ったので格安で手に入ったのだ。町工場といっても技術は国軍御用達の一流メーカーと遜色ない。


「まず、今日から3日間で護衛駆逐艦の整備を行う。2隻は1日で出来るけど、

買ったばかりの3番艦は、3日はかかる。修理と武装の再装着が必要だ。レーヴァテインの方はかなり手を入れる。1週間はかかるな」 


 平四郎はそう見通しをつけた。前回のドラゴンとの戦いで主砲が2門ともダメになっていた。これのを外して、思い切って45センチバスター砲を1基搭載することにした。これにより、レベル10までの魔法弾が可能である。


 ただ、重量の関係もあるので主砲を1基にしてあとは副砲2門に変更するしかないだろう。それでも、エアマグナムエンジンの強化が必要で、中古の過給装置を取り付けた。これは空気を圧縮し、燃料である水素水をより細かく霧状にし、魔力エネルギーと共に燃焼させることで出力を上げるのだ。ターボエンジンの発想である。これに高性能なエアフィルタに交換した。これもパーツショップで探せば、新品でも安く手入る。軍から買うより六割安い。

 

 次々と指示を出し、自ら不眠不休で作業する平四郎の姿を見てメイフィアタイムスの従軍記者ラピスは考えを改めさせられた。旗艦レーヴァテインがみるみるうちに強化され、見事な改造ぶりであったのだ。  


 ラピスは取材する中で平四郎のマイスターとしての腕を認めた。異世界から来たというのは伊達ではない。


(だけど、所詮、艦隊戦は火力勝負。いくらエアズロックに立てこもってゲリラ戦もどきを仕掛けようとも数で押されたら勝てないわ)

 

 見事と思いつつも、ラピスは第5魔法艦隊が勝てるとはどうしても思えなかった。機密に当たる部分は流石に戦闘前には公開できないので、伏せてはいたが毎日の報告記事では、第5魔法艦隊の不利であるスタンスは崩さない内容で書いていた。


 その頃、人気アイドルのリリムが第2都市アーセナルでコンサートをしていたので、その関連記事でラピスの報告記事は小さくしか取り上げられず、しかも注目もしてもらえなかったのだが。


 最初の3日間で護衛駆逐艦は中古とは思えない仕上がりで完成した。ピカピカに磨き上げられているのは平四郎の趣味だ。2隻は元々、壊れていなくそんなに手をいれる必要はなかったのだが、雷撃を得意とするリリム艦隊に備えて、雷撃耐性コーティングとシールドを強化していた。武装は25センチバスター砲に加えて、魔法魚雷を積み込んだ。あと、目くらましのスモーク弾を多数積み込んでいる。


 クロービスで買った駆逐艦は、時間が思った以上にかかった。エンジンは問題なかったのだが、内部に腐食していた部分を見つけ、それを補修するのに時間がかかったのだ。あと、魔力のバッテリーが性能どおりに動いていなく、それを取り替えることになってしまった。それでも代替え品を格安で手に入れて対応したルキアの手腕のおかげで予定した3日で何とか終えることができた。



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