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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
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第7話 VS第4魔法艦隊 準備編(2)

「エアズロックは空中艦にとっては危険地帯よ。そんなところに踏み込んだら、私たちの方が危ない」 

 

 ミート少尉が言うのももっともだ。エアズロックに浮遊する岩は大小で10万個以上と言われる。大きいものは戦列艦をはるかにしのぐ大きさだ。しかも、風が強く浮遊石同士が風に煽られ、激しくぶつかることもある。船がそんな岩にぶつかったらひとたまりもないだろう。戦うどころではない。


「鳥瞰的に操れる駆逐艦はともかく、レーヴァテインは操縦にかかっていると思う。カレラさん。レーヴァテインをぶつからないように操れます?」


「迫ってくる岩が分かれば避けることは可能だ。だが、上下左右を監視しなかればいけない。レーダーじゃ動きを掴むのが遅くなる」


「う~ん。ルキア」

「何、平にい」


「物体センサーは中古でいくらぐらいだ?」

「探せば安いのあると思う1パーツで5ダカットってとこね」


「それを上下左右に装備しよう」

「カレラさん、センサーでアラームが鳴れば回避できます?」


「難しいが、自信はある」


「よし。決まり。、ミート少尉、戦場はそこにしよう」


「変態猫はともかく、平四郎まで……」


「第4魔法艦隊は戦列艦3隻いるんだろ。戦列艦の主砲をまともにくらったら、レーヴァテインのシールドは一撃で吹っ飛ぶよ。浮遊石を盾にしよう」


「それはそうだけど……」

「レーヴァテインは先日の戦いで壊れた主砲2基を取り替える。45センチバスター砲を装着しようと思っているんだ」


 これにはミート少尉もナセルも驚いた。


「45センチって戦列艦並じゃない?」

「やるねえ。さすがは異世界のマイスターだ」


「もちろん、重量オーバーするから2基は付けられない。2基の主砲を諦めて1基にするんだ」


 これまで装備していた35センチバスター砲改はレベル7までの魔法弾しか撃てなかった。MAXであるレベル10が撃てないと戦列艦の強力なシールドを破ってダメージは与えられない。となると、レベル10が撃てる45センチバスター砲は必須パーツである。


「リリムの得意魔法は雷撃系だから、雷撃系統魔法に効果があるシールドパーツを付けるよ。雷の楯、ライトニングスピア、ボルトコーティングと改造方法はいろいろあるけど、問題はコストよねえ……」


 ルキアがそろばんを弾く。そうなのだ。第5魔法艦隊は戦力不足に加えて資金不足でもあるのだ。


「リリムは雷撃が得意と言っても、周りの戦列艦は他の系統の魔法弾を撃ってくるのは間違いない。リリムの旗艦に合わせても意味ないと思う」


 ミート少尉がそう進言したが、レーヴァテインの改造については、平四郎が以前から考えていたので、それについてはマイスターとして全面的に任せてもらうことにした。


 とりあえず、作戦会議での一番の目標は決まった。戦場は「エアズロック」にすることをだ。話し合いが終わるとミート少尉はフィンと他の乗組員と相談していたことを発表した。


「平四郎、伝えることがあります。本当はフィンから言うべきだろうけど、いないから私が代理で伝えます」


「な、なに?」

「あなたをレーヴァテインの艦長に任命します。席はフィンの隣。権限はレーヴァテインの行動全てです」


「えええ!」

「これは前回の航海を踏まえて、みんなで決めたこと。あの圧倒的な魔力はあなたが発したもの。普段が魔力0というのが分からないけど、やはり、異世界から来た勇者というのは侮れないという結論」


「そうだにゃ。旦那にはコネクトがあるからなにゃ。艦長職をやった方がいいにゃ」


 トラ吉が小声で言う。まだ、コネクトという能力についてはよく分からないこともあるので、みんなには伝えていない。それが発動する条件もわからないからだ。そもそも、はっきりしないフィンでは矢継ぎ早に指示ができなく実質的にレーヴァテインの指揮はミート少尉が取っていたから、それを平四郎が行えば彼女の負担が軽減される。


「フィンは第5魔法艦隊全体の指揮を取り、私がその補佐。平四郎がマイスター&艦長としてレーヴァテインの運用に責任をもってくれれば助かる」

 心底からそう言っているミート少尉。彼女の心労を思えば平四郎も拒否はできない。最近は財務担当をルキアに、メンテナンス関係を平四郎に仕事を割り振ったとはいえ、そのほかの細々とした仕事は全てこの人にかかっているのだ。

 この第5魔法艦隊を一人で支えているのはこの人なのだ。

(仕方がないか……)

 

 マイスターは艦の整備を行うだけで、航行中はやることが限られている。艦長となれば、戦術面での指示をしなくてはならないが、自分が改造を受け持っている分、迅速に命令できる利点もある。何より、フィンの隣の席というのが平四郎の心をとらえた。


「分かった。引き受けるよ」


「よろしく」

「よろしくですううう……」

「よろしくでおじゃる」


「よっ! 新艦長」

「……」

「やるだにゃ」


 レーヴァテインの全乗組員が手を差し出す。親指と小指で丸くつながる。


「フィンのため、この世界の人たちのために頑張るぞ」

「おう!」


 まるでバレーボールの試合前にチームメートで鼓舞するシーンみたいだ。作戦会議終了である。設定した戦場を報告しにミート少尉は王城へと向かった。ついでにまだ寝込んでいるフィンを連れてくる。全くご苦労なことだ。


 レーヴァテインは今日の夕刻にもパークレーンに向かって移動する予定だ。開戦まで2週間しかない。ここから平四郎の力が発揮されるといっていい。この短期間に第5魔法艦隊4隻の整備と改造を終えなかればならないのだ。


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