表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
36/201

幕間 メイフィアタイムス発(2)

「ゴリアテの悲劇…改めて調べてみるとこの世界の人間はよく生き残ったと思うわ」


 メイフィアタイムスの女性記者ラピスは、新聞社の戻ると過去のデータを検索してみる。メイフィアタイムスのデータベースは、なかなかのものでこれまでのドラゴンによる破壊から逃れた貴重な情報が蓄えられていた。これ以上のモノになると国の情報局しかないだろう。


ゴリアテの悲劇


2000年前に起きた人類滅亡の危機


エターナルドラゴンを中心とする巨大ドラゴンの群れに立ち向かったトリスタンの連合艦隊1万隻は、突如、ドラゴンたちが発したサウンドウエーブにより沈黙し、すべてが破壊された。ドラゴンを狩る方策を持たなくなった人類は、魔法族、機械族、妖精族、霊族を問わず殺戮された。地上は人の住めない大地に変わり、海は死の海へと変貌した。


「サウンドウェーブ……音波ブレス。今では(メンズキル)と呼ばれる厄介な攻撃」

 

 ラピスは資料のページをめくりながら、ため息をついた。この特殊攻撃のおかげで国軍の大半が機能しなくなったのだ。


 エターナルドラゴンやL級ドラゴンが発するこの特殊攻撃は、人類の中で男性のみに効果を発揮する。この音波を浴びた男は確率10分の1で死に至るのだ。ゴリアテの悲劇では、ドラゴンを駆逐しようと集結した人類の軍団は、このブレスを3度浴び、ほぼ男で編成された連合軍は混乱したまま、ドラゴンとの死闘に入り壊滅したのであった。


「その後、エターナルドラゴンに対するのは女性となったが、元来、女性は戦闘力で男性に劣り、魔力でも劣った。そこで考え出されたのが、魔力の優れた娘を全世界から選び、競わしてレベルを上げ、選ばれた娘がドラゴンに相対するパンティオン・ジャッジの仕組みが作られた。少数の人間で旗艦を操作する仕組み、主要艦以外は原則無人で提督が操るようになった」


 1500年前の女性のみで編成された艦隊は、不慣れなせいもあり全滅。人類はまた壊滅の危機にあったが、最後に残った戦列艦グーテンベルクの最後の攻撃がエターナルドラゴンを負傷させ、何とかこれを退けることができた。


 その500年後。今度はパンティオン・ジャッジで選ばれた妖精族の女王が見事にエターナルドラゴンを退けた。


 そして今から500年前。魔法族で初めて選ばれたマグダレーテ・ノインバステンが、異世界の男とパートナーになり、復活したエターナルドラゴンを倒して人類の危機を救った。


「それから500年がたち、また人類はドラゴンの脅威にさらされようとしている。今回、私たち人類は生き残れるか。公女たちの戦いにかかっているわ。となると、第5魔法艦隊の異世界から来た少年というのが気になるわね」


 ラピスは平四郎に関するデータファイルを見た。情報検索の魔法を使い、手のひらに国防省が保管しているデータを映したのだ。ちょうど、現代日本ならスマートフォンで検索している感じだ。無論、国防省のデータにアクセスしても普通は見ることはできないのだが、ラピスはある程度のレベルまでのセキュリティを突破して情報を得る方法を得ていた。


 バレるとやばいのではあるが、これも人類が滅びるかどうかに関わる問題なのだ。ジャーナリストの真実を伝える使命の前には多少は許されるだろうと考えていた。


東郷平八 21歳 男 出身 日本 魔力0


「魔力0 うそ? ありえないわ。魔力0であのヴィンセント伯爵を倒すなんて」


(これは匂うわね。秘密の匂い。何か秘密があるのかもしれないわね)


 そもそも魔力が0なんてありえない。魔力が低いタウルン人でさえ、計測すれば10~100はある。0というのは不思議な数値なのだ。


 魔力は一般的に20歳前後が最も高くなる。その後、年齢と共に下降していく。だから、年寄りの魔法使いなどというのは、この魔法国家メイフィアではありえない。国防軍は訓練してこの魔力を磨き、相応の兵力として活用しているが、それは時折現れる、ベビードラゴン(B級)スモールドラゴン(S級)の退治することが精一杯であり、今後現れるであろうミドルドラゴン(M級)、ラージドラゴン(L級)さらに最終復活するであろうヒュージドラゴン(H級)には、歯が立たないというのが通説であった。


 ただ、どれもが500年前からに言い伝えに過ぎず、そんな大きなドラゴンがいるなんて信じられないというのが大半の国民の思いであった。ここ2、30年では、Sランクドラゴンを仕留めた話がまるで風物詩のように語られるに過ぎなかった。


(この異世界の少年がどう関わっていくのか……。興味がわいてきたわ!)


 第2魔法艦隊提督リメルダが彼をスカウトしたという話を聞いたが、分かるような気がする。(この少年は何かをやってくれる)ラピスは何だかわくわくしてきた。あのエロ教授の言ったとおり、この艦隊は何かやってくれそうであった。


(なんだか、この男の子に興味をもっちゃった。これは体当たり取材確定ね!)


 ラピスは意を決し、編集長に特別出張願いを出した。差し出された書類の取材先に書かれた場所を見て編集長は驚く。


「ラピスくん!この船に乗るのかい? 下手したら大怪我するよ」

「大丈夫です。パンティオン・ジャッジでは死なないのでしょう?」

「そりゃそうだが、万が一もある。わざわざ、負ける船に乗らなくても」


「編集長、既成概念にとらわれていませんか?」

「既成概念?なんだそりゃ?」


「ふふふ。スクープを期待していてください。きっと、あっと驚く結果を出してご覧に入れますわ」


 そう言って、ラピスは栗色の髪を耳にかけた。許可証に編集長のサインをもらうと、メイフィアタイムズのビルを出た。許可証の取材場所には、


「王国所属艦番号3771第5魔法艦隊旗艦レーヴァテイン」とあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ