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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
24/201

第5話 公女様はアルバイト中(4)

「へ、平四郎くん……ま、まちゃたです?」

(かんだよね?今、かんだよね?)

 かあ~っと赤くなるフィン。平四郎もなんて答えていいか分からなくて固まってしまう。


(おいおい、二人共えらい純情だにゃ。相手の娘も今時いないタイプじゃが……おろ?)

 指輪に化けてるトラ吉が、フィンの顔を見たようだ。


(旦那の彼女、第5公女じゃないですかにゃ!? どうやって、ゲットしたにゃか?)

 トラ吉の奴、興奮して声が高い。


「君はしばらく黙ってろよ」

 平四郎は思わず、トラ吉に向かって話したら、フィンが自分に言われたと思って、

「ご、ごめんなさいです。平四郎くん」

 そっと下を向いてぽつんと話した。


「いや、今のはフィンちゃんに言ったんじゃないんだよ。ホント!」

 キョトンとしているフィン。


「それより、今日はここでお買い物するんだよね」

「う、うん……」

「で、何買うの?」

 

 平四郎はフィンの可愛い姿に今日は何か可愛い小物とか、服とかを買うのだと完全に思っていた。


(も、もしかしたら、水着を買うから選んでって……シチュエーションだったりして!)

 

 平四郎の勝手な妄想が続く。


「平四郎くん、これはどうです?」


 白地に鮮やかな花柄のワンピース。華奢なフィンでも出てるところがあって、引き締まったウエストと細い足がバッチシ。次はフォルターネック。オレンジ色のリボンが可愛い。大胆な黒を基調としたタンキニ、そして赤いビキニ…そして、な、なんと! この国にもあったのか! スク水!!


(魔法王国メイフィアありがとう)


「どうしたのです? 平四郎くん」

「はれ?」

「何だかボーッとしていたみたいです……」

「ああ、ごめん、フィンちゃん」

 

 平四郎は魔法王国といっても相手の考えが分かる魔法がなくてよかったと心底思った。


「で、フィンちゃん。何を買うの?」

「空中武装艦です」

「は?」

「空中武装艦です。戦列艦は無理だけど、駆逐艦1隻くらいは何とか……」

 

 平四郎は驚いた。可愛い女の子が勇気を出して、「お買い物に付き合ってください」と言って買うのが、戦列艦? 駆逐艦?


「うそ?」


 本当であった。フィンは市場の奥に行くととあるビルの建物に入っていく。店の看板は「中古空中武装艦ショップ オリバー」などと書かれている。


「ごめんくださいです」


 フィンの後について平四郎も店に入る。中は車のディーラーのイメージだ。ショールームに小型の武装艦が展示してある。空中武装艦のパーツも一応置いてあるが、バルド商会ほどではない。この店は中古の武装艦をメインにしているところなのだろう。胸に店長と書かれたバッジをつけた初老の男がうやうやしく近づいてくる。


「これは公女殿下、今日は何をお求めになりますでしょうか。ブルードラゴンの幼生を討伐したと聞きました。賞金が入ったのでしょう」


「はいです」

「S級だと5000ダカットくらいですか」

「はい。それで買える船はあります?」


 白髪が目立つ初老でメガネをかけた店の店長は、分厚いカタログをめくる。それには、レーヴァテインと同じような空中に浮かぶ戦艦の写真があった。


「5000ダカットでは、やはり性能や状態を考えると駆逐艦クラスでしょうな。戦列艦だとかなり古い年式になってしまいます」


「戦術の幅が広がるものはないでしょうか?」


「う~ん。潜空艦は面白いですが、値段がはります。中古でも1万ダカットからですね。それに公女殿下、メンテナンスや乗組員の給料や生活費を考えたら、賞金すべてを使うわけにはいけませんでしょう」


「そうですね」

(マジで……軍艦買うのか)


 平四郎もカタログをそっと見る。レーヴァテインよりも大きい戦列艦は値段が二桁も違う。5000ダカットだと買えるのは中古の駆逐艦クラスだ。フィンの予算は3000~4000ダカットのようで、それだと数えるくらいしか選べない。


「どうですか、この魔法弾連射ができるミサイル駆逐艦。年式はちょっと古いですが状態はいいですし、オプションで魔法爆雷連射機能をお付けします。それで値段は4500ダカット」


「も、もう少し安くはしていただけませんです?」


 公女が値切るという姿は少々違和感があったが、どうやら、公女提督は自分の艦隊を自分で買って編成するらしい。まあ、フィンが値切らなければ平四郎が値切ったであろう。実際に状態を見ないと分からないが、相場よりも高いのではないかと思ったのはバルド商会で3ヶ月修行をした成果である。


「それにしても、魔法艦隊は提督が自ら船を買って揃えるなんて……」


 カタログを見て迷っているフィンを見ながら、平四郎はそんなことをつぶやいた。それを聞いていた指輪に化けたトラ吉が平四郎に教える。


(旦那は知らないにゃか? 公女様の艦隊は旗艦こそは国から支給されるにゃが、原則、自分が操る船は自分で買うんですにゃ。メンテナンスも乗組員の確保もにゃ。一応、支度金やら、毎月の手当は出るらしいにゃが、結構な額が公女方の持ち出しだにゃ)


(それは聞いていたけど。船も自分で揃えろなんてひどいなあ。公女ってこの国の代表だろ。国からの援助はないのか)


(パンティオン・ジャッジのために選ばれた公女様は魔力の他にいろいろな力を試されるにゃ。経済力も力の一つにゃ)


(金も力か)

(そうにゃ。ぶっちゃけ、最強かもにゃ)

(確かにそういう面もあるけど。それを言っちゃおしまいでしょ)

(大人の事情だにゃ)

(はあ……。嫌な事情だ。トラ吉、パンティオン・ジャッジって、ドラゴンと戦う艦隊を選抜する予選みたいなもんでしょ。それに出場するために艦隊を率いるのが公女様で、それは選ばれるってこと?)


(ああそうだにゃ。500年前もそうだったにゃ。今回は誰が選ばれているのか詳しくは知らないにゃ。オイラが知っているのは、一人は現王家の娘で正真正銘の王女様にゃ。あとは大貴族の娘と大財閥の娘、アイドルやってる娘って聞いたけどにゃ。この公女様は、大貴族のお姫様でも、大財閥のお嬢さんでもアイドルでもなさそうだにゃ)


 トラ吉に言われなくても、フィンには気さくな感じがある。でも、どことなく気品があるのはやはり公女に選ばれた何かがあるのだろう。


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