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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
4巻 竜の災厄 編
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第35話 ラストバトル VSエターナルドラゴン(2)

ついに決着……。

 平四郎はレーヴァテインへ戻った。艦橋には心配そうに待っていった乗組員の面々がいる。艦長のミート少佐。操舵手のカレラ少佐。通信担当のプリムちゃん。防御担当のパリムちゃん。主計官のルキアに女官長のアマンダさんとその使い魔べパルとゼパル。平四郎は作戦会議で出たことを全て話した。話した上で、全員に1時間後にレーヴァテインからの退去を命じた。


「な、納得できません。平四郎」

「そうですううううう……」

「私たちも残るでおじゃる」

「……」

「嫌だわん」

「残るにゃん」

「ダメだ。これはこの世界を救う勇者としての命令だ。従ってもらう」


「ですが、私はこの船の艦長です。艦長は船と運命を共にするのが……」

「古いな。ミート少佐」

「古いって」


「君はナセルが死んだと思っているだろう。奴は死んでないよ。絶対、生きて君のところに帰ってくる。僕はナセルと約束したんだ。無事に生き残ったら一緒に綺麗なお姉さんのいる店に行こうって。自慢じゃないけど、ナセルはそういう約束を破ったことはないんだ」


「あ、あの男! 私という妻がいるのに!」

「調子でてきたじゃないか、ミート少佐」


「しかし、平四郎とフィンだけで残るなんて……」

「エターナルドラゴンが目覚めた一瞬で勝負が決まる。その時にやるのがデストリガーの発射。これに必要なのは2人で十分さ」


「……」


「急所に当たればそれで世界は救われる。外れれば世界は滅ぶ。君たちがいようがいまいが、この2つのルートしかないんだよ」


「……分かりました。そこまで言うのなら平四郎に従います」


「うん。駆逐艦で後方へ脱出してくれ。エターナルドラゴンが目覚める前に安全エリアまで後退するんだ」


「平四郎……。フィンのことよろしくお願いします。あの子、おチョコチョイで天然だけど、私にとっては大切な親友。幸せにしないと許さないから」


「了解」


 平四郎はそう言って右手を差し出した。別れの握手ではない。再会を誓う握手である。


「お兄ちゃん……。お兄ちゃんの指示通り、TOPに例のパーツを付けといたから。絶対に帰って来るのよ」


 ルキアが名残惜しそうに平四郎を見る。実は平四郎は思うところがあって、ルキアにレーヴァテインの最後の改造を指示していたのだ。


「ルキア……。ありがとう」

「帰らなかったら許さないんだから……」


 ルキアはプイと顔を向けるとそのまま振り向くことなくレーヴァテインを後にした。ルキアなりの愛情表現であろうか。


 1時間後。平四郎とフィンを除いて全乗組員が退去した。平四郎は彼らが去るのを見届けるとフィンの部屋に足を運んだ。


 扉を開けるとベッドにフィンが上半身を起こして平四郎の方を向いた。


「全員、退去しましたです?」

「ああ……」


 最後の戦いでは、レーヴァテインの乗組員は全員退去させようと平四郎とフィンは相談していたのだ。


「二人きりになりました……」

「ああ、フィンちゃん」


「平四郎くん。ここへ来るです」


 そうフィンは自分のとなりをポンポン叩いた。ここに座れという合図だ。平四郎はぎこちなくそこに座る。


「マリー様とリメルダさんとわたしでエターナルドラゴンを倒すということですが、どうしてマリー様とリメルダさんが平四郎くんとコネクトができるのかは詮索しません」


(-_-)という表情をするフィン。平四郎はいたたまれない。フィンが誘拐されていた時にマリーとリメルダと関係をもってしまったからだ。でも、それは結果的にこのトリスタンを救うために必要なことであった。なぜなら、花嫁が3人いることで強烈なデストリガーの3連攻撃ができるのだ。500年前は1発だったことを思えば、今回はそのおかげでエターナルを追い払うどころか、倒すことができるかもしれない。なんて、言い訳するのが虚しくなる平四郎であった。


「全て許します」

「え?」


「でも、条件があります」

「じ、じょうけん?」

「はいです」


 そういうとフィンは急にモジモジし始めた。でも、思い切って平四郎に体を寄せた。


「わたしにもキュッとするです。キュッと……」

「フィンちゃん……」


 あまりの可愛さに思わずギュッと抱きしめる。フィンの温かい感触を体いっぱいに感じる。


 しばらくして平四郎は体を離そうとしたが、逆にフィンの方がギュッと抱きついてきた。


「離さないで……」

「フィンちゃん」

「まだ時間はあるです」

「……」

「平四郎くん……。わたしも抱いてください」

「フィンちゃん……いいの?」

「うん。わたしは平四郎くんのお嫁さんだよ。いいに決まってるです」

「フィンちゃん、フィンちゃん!」


 もう言葉はいらなかった。


 1時間後。二人はレーヴァテインの艦橋に向かった。エターナルドラゴンが目覚める時間が近づいている。


「マリー様。エターナルドラゴンの心拍数が上がっております。間もなく、休眠状態から目覚めるでしょう」


「シャルロッテ中尉。あなたも降りてよかったのですよ」

「マリー様。わたしはマリー様の忠実な部下です。それにマリー様お一人ではさすがにこの船は動かせないでしょう」


 シャルロッテ中尉はそう言って屈託のない笑顔を見せた。勝てば生き残れる。それはこコーデリアⅢ世に乗っていようが乗っていまいが結果は同じだ。例え、船を降りたとしても負ければ死ぬまでの時間が少し長くなるだけだろう。それなら、この聡明な王女のそばで殉じようと思ったのだ。戦列艦ジュリエットに乗るリメルダも乗組員を退去させ、親友のナアムと2人だけで最後の攻撃を行う準備をしていた。


「いよいよね……」


 マリーは翼を広げ、球体を少しずつ解除するエターナルドラゴンを見つめた。完全に開き、額の攻撃ポイントが現れた時に一挙に決めるのだ。


「5……」

「4……」

「3……」

「マリー、リメルダ、フィンちゃん……。いくよ」


 平四郎の体が金色の光に包まれ、同じ状態のマリー、リメルダ、フィンと光のリボンが伸びてそれぞれ絡まり、つながった。


「2……」

「1……」


「さあ、激アツの時間だ!」


 エターナルドラゴンの翼が開いた。古来よりウィークポイントだと伝えられる額も顕になる。


「デストリガー、撃てーっ!」

「バーニングストライクです」

「ハートブレイカー!」

「アブソリュート・ゼロ!」


 3つのデストリガーのエネルギーが合わさり、トルネードのように巨大なものに変化した。そしてそれは確実にエターナルドラゴンの額を打ち抜いた。


ギャアアアアアアアアアッツ……。


 周りの空気が凍りつくような断末魔の叫び声が響く。その咆哮に周りのドラゴンが麻痺を起こして次々と墜落していく。


「倒したの?」


 マリーはエターナルドラゴンが息絶え、墜落していく姿を想像した。エターナルドラゴンは翼を広げて激しい痙攣を起こしている。だが、次の行動はマリーの予想を覆した。巨大な前足をめちゃくちゃに振り回したのだ。


「きゃあああああっ!」


 その風圧でマリーの乗る戦列艦コーデリアⅢ世もリメルダの乗る戦列艦ジュリエットも弾き飛ばされてしまう。そしてエターナルドラゴンは大きく口を開けた。炎の巨大な玉が出現する。


「メギド」である。


 それは凄まじい勢いで口から飛び出し、第1浮遊大陸に着弾する。大爆発と小爆発が繰り返され、激しい振動と吹き出す炎。そして、次々とメギドが発射される。それは浮遊大陸や旧大陸の地上に降り注ぐ。


「そんな……。あの攻撃が効かなかったなんて!」


 マリーはようやく飛ばされたコーデリアⅢ世の態勢を立て直した。だが、狂ったように大暴れするエターナルドラゴンを大人しくすることもできない。リメルダもこの絶望的な光景をようやく立て直した自分の船で見ている。


「姫様、このまま私たちは滅びるのでしょうか?」


 親友のケットシー、ナアムがそうリメルダに尋ねた。その言葉には生気がない。婚約者のトラ吉が戦死したという報を聞いていたので、このまま、エターナルドラゴンに滅ぼされるなら都合がよいとまで思っていたのだ。


「いえ。私には平四郎がいるわ」


 リメルダはそう力強く言った。先程の風圧にも耐え、レーヴァテインが暴れるエターナルドラゴンの前に立ちふさがるように飛んでいる。その先端には銀色の剣が一本突き出ていた。平四郎がルキアに命じて装備させたものである。突撃用の武装である。銃剣のように突き出たそれは、近接戦闘で空中武装艦を仕留める珍しいものであった。


 今、それは太陽の光を受けて輝き、まるで燃えている炎の剣のようになっている。


「やっぱり、予想したとおりだ」


 平四郎はそうきっぱりと言った。その目はエターナルドラゴンの胸の部分を見ている。そこには先程までなかった透明の玉が半分浮き出ていた。


「額はあの心臓をさらけだすためのボタン。本当の弱点はあそこだ」


 なぜ、そんなことが分かったのか平四郎にもよく分からない。過去にこの世界に連れてこられて、ドラゴン退治した数多くの勇者たちの魂が平四郎に話しかけたのかもしれない。


「フィンちゃん、行こう」

「はいです。わたしはどこまでもついていきます」


 平四郎はフィンの顔を見て頷いた。


 レーヴァテインはその名の通り、炎の大剣となってエターナルドラゴンの心臓を串刺しにした。幾本もの光の帯がそこから発生し、やがて消えていった。



トリスタンは救われたのだ。



次回はハッピーエンドのエピローグ。

長い間の応援ありがとうございました。

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