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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
4巻 竜の災厄 編
195/201

第33話 決戦の時(5)

「デストリガー、アブソリュート・ゼロ、撃て!」


 マリーのコーデリアⅢ世が放った絶対零度の魔法弾は、Hクラスドラゴンを凍らせ粉々にした。他のドラゴンも残存艦隊が何とか討伐しつつある。エターナルドラゴンを除き、その取り巻きのドラゴンを駆逐する。全部倒せば、総攻撃でエターナルドラゴンを仕留めるのだ。


(間もなく、シトレムカルルの妖精族艦隊と小夜の霊族艦隊も戦いに加わる。状況はこちらに有利だわ……)


 マリーは戦列艦コーデリアⅢ世の艦橋で戦況を見守る。彼女の特殊能力サテライト・アイで味方の援軍の状況も把握できていた。平四郎のレーヴァテインの位置だけが把握できないでいたが、ドラゴンの攻撃を避けるためにリメルダの幻惑魔法を使用しているのだろう。時間的には到着する時間だ。だが、マリーには何だか嫌な予感があった。その予感はすぐに当たる。空間に突然、ドラゴンが召喚されてきたのだ。


「マリー様……。ドラゴンが……」


 その数。100頭。驚異となるH級、L級が20頭を含む強大な数だ。ヴィンセントは高笑いをする。希望をもった相手を絶望させる。これほどの快感はない。


「はははは……。マリー、君の艦隊はすでに20隻を程度、100頭のドラゴンとどう戦う? 絶望に打ちひしがれる君を直に見れらないのは残念だよ」


 マリーの艦隊はドラゴンに包囲されつつある。デストリガーを放った直後のマリーには、すぐさま、対抗手段が取れない。


 だが、突然、戦場にドラゴンの召喚とは違う空間の変化が現れた、輝くサークルが出現したかと思うと、美しく輝く船体を現したのは、シトレムカルル女王が率いるローエングリーン妖精艦隊であった。妖精の輪の魔法を駆使して、この戦場に現れたのだった。


「何とか、間に合ったようですね。マリー様を援護しつつ、散開。ここにドラゴンにあたりなさい。小夜さんもそろそろ来る頃です!」


 シトレムカルルが、そう言うと同時に今度は空間から多数の霊子弾頭弾が現れた。小夜のアウトレンジ攻撃だ。ドラゴンが突然現れる霊子弾頭弾の攻撃にパニック状態になる。


「マリー、大丈夫か?」


 懐かしく、そして頼もしい声がマリーの耳に届いた。平四郎だ! 平四郎のレーヴァテインも到着したのだ。リメルダのジュリエット。リリムのダ・カーポも一緒だ。軽空母ハニー・ビーからケットシー飛行中隊が発進し、ドラゴンたちに攻撃を加える。


 マリーは到着した主要艦の提督と連絡を取る。モニターに会いたい男の姿が映るとこれまで気丈に指揮をしてきたマリーもふと力が抜ける感覚になった。これが安心というものなのだろうかとマリーは思った。高鳴る胸を両手を重ねてグッと抑える。


「平四郎! よく来てくれました。どうやら、この地が最終決戦の地になりそうです」


「エターナルドラゴンを倒さないとこの世界は守れないんだよね」

「そう。まずは、エターナルドラゴンをコントロールしているヴィンセントを排除しなければなりません。その後、フィンさんを救出することになります」


 妖精族と霊族艦隊の救援で、ドラゴンとの戦いは激戦になっていた。だが、数に勝るドラゴンに勝つのは親玉であるエターナルドラゴンを葬らねばならないのだ。


(妖精族も霊族もよくやる。やはり、パンティオン・ジャッジというのは意味があるなあ。これまでこの世界を存続させてきたシステムのことだけはある。乱戦で面白くなってきたけど、敵の出方が予想できるのはつまらないなあ……)


 ヴィンセントはマリーや平四郎の次の行動が読めていた。というより、唯一の手であろう。この乱戦を突破して本陣に切り込む。そうこのマクベスに向かってくるに違いない。


「今世紀最後の決戦は一騎打ち? いいねえ。劇的だ。もちろん、勝者は僕だけどね」


 キラッっとマクベスの上空で何かが光った。


 上空には分厚いディープクラウドがある。その雲海から、10本の対艦魚雷が飛びだした。


 だが、戦列艦マクベスに命中する寸前で強力なシールドに阻まれた。


「おっと、君の存在を忘れていたわけじゃないんだ。こんなことで僕が死んだんじゃ、面白くないだろう。ディープクラウドに向かって爆雷撃ち上げ!」


 ドンドンドン……と爆雷が撃ち上げられてた。ディープクラウド内に光がいくつも起きる。


 エヴェリーンに率いられたタウルンの潜空艦艦隊である。それは暗殺者のように近づき、シールド無効化できる至近距離から攻撃してくる。


 通常の戦列艦なら、今の攻撃で仕留められただろうが、エターナルドラゴンから供給される巨大な量の魔力で作られたマクベスのシールドは撃ちぬけなかったようであった。


「爆雷だけでは、奴らは仕留められない。ディープクラウド内ではゴキブリ並みの生命力を発揮する」


 ヴィンセントもエヴェリーンと対決しただけに、潜空艦の怖さを熟知していた。この程度では追い払うことしかできないだろう。


「ディープクラウドに向けて、エターナルドラゴンのメギドを発動。威力は極少だ。それで十分だ。死ね、エヴェリーン! ディープクラウドの中で永遠にさまよえ!」


 エターナルドラゴンが大きな口を開けて、小さなファイアボールを放った。それはディープクラウドに吸い込まれると、4キロに渡るディープクラウドの黒い雲が一瞬だけ光り輝き、静かに元に戻っていった。


「エターナル……。ディープクラウド内にメギド発動。タウルン艦隊沈黙」


 シャルル大佐が呆然とそう報告する。あの攻撃ではいくらディープクラウドでも破壊力は弱まらない。エヴェリーンは生きてはいないだろう。シャルル大佐はオレンジ島の基地で彼女を背負った感触を思い出した。普段とは違う弱々しいエヴェリーン。あの世で恋人に会うのであろうか。


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