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GIRLS FLEET ~竜を狩る公女(プリンセス)戦記~   作者: 九重七六八
1巻 パンティオン・ジャッジ メイフィア王国編 1
17/201

第4話 幕間 完璧なマリー

ちょっと別話。第1魔法艦隊、おそらく主人公たちに立ちはだかる最強のライバル。

「女王陛下、フィン・アクエリアス第5公女殿下は、マルビナ浮遊島付近に処女航海後、首都クロービスに夜には帰投予定です。明日には第4公女殿下、明後日には第3公女殿下が到着の予定です」


「いよいよ……ですね。外務大臣」


 魔法王国メイフィアを統べる女王マリアンヌ・ノインバステンは、傍に控える外務大臣ジオ・ハムラビに確認する。目の前には地図が広げられ、第1大陸とその周辺。メイフィア所属のパトロール艦隊の位置と、対ドラゴン用の打撃艦隊の位置が示されている。そして、今回の主役の公女が率いる5個の魔法艦隊の位置も示されている。探索魔法レーダーにより、おおよその位置がわかるのだ。


「ジャッジメントの日まで2年を切りました。我々トリスタンの存亡がかかっています。どの公女様が我が国の代表になりますでしょうか」


 ジオは老練な閣僚であった。若い頃から外交官として他国とつながり、各国に強力な人脈を作っていた。最近は妖精国ローエングリーン大使を勤めていたが、女王マリアンヌに請われて外務大臣となっていた。


「ふふふ……。それはわたくしに決まっています。ジオ大臣に女王陛下」


 部屋のドアを開けてツカツカと近づくながら、金髪のロングヘアをなびかせた美しい娘が口を開いた。ピンクのルージュが艶かしく光っている。


「マリー。パンティオン・ジャッジは真剣勝負の艦隊戦。油断しているといくらあなたでも、足元を救われるわよ。楽に勝てるとは思ってはダメ」

 

 マリアンヌ女王がマリーと呼ぶのは自分の一人娘である。マリー・ノインバステン。現王家の唯一の後継者であり、第一公女として第一魔法艦隊を率いている。マリーは自身満々な口調を改めようとはせず、勝つことが自分の責務であると強い信念をもっていた。


「5人いる公女と言っても、わたくし以外は王家とは何のつながりもないのです。前回のジャッジメントで世界を守った英雄の子孫であるノインバステン家の血を引くものとして、この国の代表は私が務めます」


「マリー。第5公女フィン・アクエリアスには、異世界から召喚した青年がマイスターとして従っていると聞いています。あなたは私たちの祖先がかつて異世界より召喚した人間と結ばれて、今日に至っていることを忘れていませんか?」


 マリアンヌ女王は、娘であるマリーの実力をよく知っているだけに、自信に満ちた娘の言動には理解があったが、それでも何が起こるか分からないのが代表を決めるパンティオン・ジャッジであり、その後の対ドラゴンとの戦いなのである。我が娘が代表になり、見事に世界を救うことを女王として望むが、母としては何事もなく結婚し、幸せになってもらいたいと思ってしまう。


「お母様。わたくしの旗艦、コーデリアⅢ世は史上最大、最強の戦列艦です。そして、わたくしの第1魔法艦隊は他に戦列艦4隻、巡洋艦8隻、駆逐護衛艦15隻の艦隊。他の公女の艦隊とは、戦力が圧倒的に違います。この第5魔法艦隊は旗艦でさえ、高速巡洋艦。あとは駆逐艦2隻です。これで勝てるはずありませんわ。異世界のマイスターがいようとも、優劣がひっくり返るとも思えません」


(わたくしのライバルになるのは、せいぜい、第2艦隊のリメルダぐらいよ。それでも、わたくしの方の戦力が上だわ。問題は他の国家の艦隊ですわ。なんとしてでも、勝ち残り、この世界を救うのです。それが死んだコーデリア姉さまの願い)


 マリーは七年前にドラゴンの襲撃で亡くなった姉のことを思った。公式には空中艦の整備不良による事故で片付けられていたが、実際はドラゴンによって殺されたのだ。その時、姉が残してくれた設計図で作られたのがマリーの旗艦コーデリア三世なのだ。姉は母の後をついで第33代女王の座につくはずで、その時の名前がコーデリア三世となったからだ。長い歴史でノインバステン家ではコーデリアという名の女王が2人出ていたからであるが。


「マリー。空中武装艦同士の戦いは、船の性能や数だけで決まるわけではありません。戦術や戦略も重要ですが、我がメイフィアの場合、魔力の大きさも重要なファクターです」

「その魔力でも、わたくしは第一公女として他を凌ぎます。私の魔力は12万。5位のフィンは4万5千と聞いています。わたくしの敵はタウルン、ローエングリン、カロンといった他の国の代表です。なんとしてでもそれらを撃破し、対ドラゴンの指揮をとるトリスタン連合艦隊の指揮官にならないといけないと思っています」


 パンティオン・ジャッジの覇者はトリスタン連合艦隊を率いる。その艦隊の主力となる国家の領土がその連合艦隊の本拠地となる。すなわち、マリーが勝ってその地位につけば、メイフィア王国が艦隊の本拠地となる。そうなれば、ドラゴンの災厄に対して比較的安全な地となる。それでもドラゴンの災厄での被害は免れないが、連合艦隊の本拠地となる国は他国よりも被害は少なくなることが予想された。


 最新の被害予想から判断するに、メイフィアが覇者となれば、被害は10%抑えられる。それで命が助かる人は200万人に昇る。


(わたくしは200万人の民の命を預かっているのです。絶対負けるわけにはいかないのです。姉さまの意思を継ぎ、竜の災厄から人々を守る)


 マリー・ノインバステン王女、19歳。透き通るような美しい金髪に真っ白な肌、抜群のプロポーション。国民から愛され、その魔力の高さから魔法王国メイフィアの至宝とまで言われている第1公女である。第一公女として第一魔法艦隊を与えられたマリーは、王家の財力と国軍との強いパイプを生かして、優秀な人材を確保し、また、装備も十分に整えていた。その戦力はメイフィア国軍の最強の艦隊である第1打撃艦隊を凌駕していた。


 マリーはそんな艦隊を率いる提督で階級は大将なのである。


「お母様。そろそろ時間です。わたくしは艦隊司令部へ向かいます」


 マリーはそう言うと、長い手足が優雅に映えるドレスを翻しながら、軽やかに部屋を出て行った。



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